積極的なファン拡大施策でFacebook ページをクチコミの起点に

ケンコーコム(株)

健康関連商品のECサイト「ケンコーコム」を運営するケンコーコム(株)では、2011月3月からFacebookページの運用を開始。本格的なソーシャルコマース時代の到来に備え、積極的なファン拡大施策により1万8,000人を超える「いいね!」を獲得し、これをクチコミの起点として活用している。

クチコミ機能への期待からソーシャルメディアを積極活用

 2000年5月から、健康食品、医薬品、健康機器な ど健康関連商品を中心に16万点以上の商品を取り揃えるECサイト「ケンコーコム」を運営しているケンコーコム(株)は、2011年3月に、Facebookページの運用を開始した。同社が開発した「ショッピング」というFacebookアプリでは、「健康食品」「フード」「水・飲料」「化粧品」「癒し」といった「ケンコーコム」と同様の(医薬品を除く)カテゴリー別に取扱商品を紹介し、「サイトで購入する」というボタンをクリックするとリンクされている「ケンコーコム」の商品ページが立ち上がるというかたちで、情報発信を具体的な商品購入につなげるルートを確立している。
 同社がソーシャルメディアを積極的に活用する理由は、そのクチコミ機能への期待だ。特に実名をベースとするFacebookでは、“友達”が「いいね!」ボタンをクリックしたという事実が、ユーザーのウォールに発信される。それを受け取った人には「あの○○さんが□□という商品を気に入っている」という情報がもたらされることになり、特にそのユーザーと親しかったり、当該分野についてそのユーザーに対する評価が高かったりすれば、購買意欲を喚起する効果はかなり大きなものとなるであろう。
 同社ではこのような認識からFacebookページでの商品紹介を行っているのだが、当面、このルートで直接的に販売量を拡大することについては、さほど大きな期待は持っていない。それは、例えばゲームを主要コンテンツとするMobage(モバゲー)やGREEのように課金が当たり前のものとして受け入れられているSNSと異なり、Facebookでは現状、ユーザーにそこで「お金を使う」という意識がほとんどないと考えているからだ。
 しかし、将来的にはFacebook上で「お金を使う」ことが普遍化する可能性は低くない。また、お客さまにケンコーコムの本当の意味でのファンになってもらう、つまりケンコーコムに対する信頼を持ってもらい、いざという時にケンコーコムで買おうと思ってもらえる関係性を築くという意味でこれを活用するメリットは大きいと考え、まずは母数を拡大するという観点で自社Facebookページのファン獲得に取り組んでいる。

2カ月弱で「いいね!」数を100人程度から1万人以上に拡大

 同社ではFacebookページのファン(「いいね!」数)が100人程度だった2011年10月中旬、まずは「年内に1万人の“いいね!”を獲得する」という目標を設定。その実現のための施策を開始した。
 具体的には、大手メーカーや小売事業者などと比較すれば「ケンコーコム」の知名度はまだまだ低いという認識から、まずはFacebook広告を活用して多くのユーザーに「ケンコーコム」のFacebookページの存在をアピール。これによって1,500人前後の「いいね!」を獲得。しかしその後の自然発生的な波及効果が期待通りではなかったため、その喚起を目的にプレゼント企画などFacebookページ内でのプロモーション施策を展開し、「いいね!」を約3,000人にまで伸ばした。以後も、広告を出稿してはプロモーション施策を展開するという手法を繰り返して「いいね!」数を約8,000人にまで拡大したところで限界に突き当たった。そこで、外部の共通ポイントサービス運営会社が提供するポイントプレゼント・キャンペーンを利用。同社Facebookページの「いいね!」をクリックした人にポイントを進呈するというダイレクトな訴求で、2日間で約2,000人の「いいね!」を獲得し、2011年12月17日、ついに目標としていた「いいね!」1万人を突破した。
 これらの取り組みには、当然のことながら一定のコストが掛かっているが、一般的に「いいね!」獲得単価が150円と言われている中で、それよりはかなり低いコストで目標を達成できたとのこと。特にポイントプレゼントなどを契機に「いいね!」をクリックした人は、比較的、離脱率も高いとのことであるが、中には長期的なファンになってくれる人もおり、ロイヤルティの高いファンの比率は徐々に高まっていると同社は見ている。
 同社ではその後も、「いいね!」をクリックした人に提供される「ケンコーコム」の5%割引チケットにスクラッチカード風のデザインを採用するなど、ファン獲得のためのさまざまな取り組みを継続。2012年2月末時点の「いいね!」数は1万8,000人を超える状況となっている。

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Facebookページの筆頭には、“つい削りたくなる”スクラッチカードを模したクーポンを掲示。「いいね!」ボタンを押すと割引率とクーポンコードが現れる仕組みだ

試行錯誤しながら知見を蓄積

 同社ではFacebookページをクチコミの起点とするべく、発信する情報の内容について、さまざまな工夫を凝らしている。
 まず、ウォールへの投稿については、同社のキーコンセプトとも言える“健康”をテーマに10のコーナーを設定した。その後、絞り込みを行い、現在では5つのコーナーを中心とした出稿を行っている。例えば当初設定した「酒」関連のコーナーなどは、多くのコメントが付くなど人気があったものの、“健康”と逆行する要素もあったために、あえて投稿数を減らした。
 投稿には写真や動画などをなるべく多くし、クチコミの“ネタ”になる機会を増やすことを意識している。また、投稿回数については1日1〜2回としている。投稿回数がそれ以上になると、ファンの離脱率が高まる、投稿への「いいね!」の数が減るなどの悪影響の方が大きいと見ているからだ。
 今後については、「ケンコーコム」とFacebookページの連動性を高め、売り上げにつなげることを目指し、「ケンコーコム」の全取扱商品に「いいね!」ボタンを設置することも検討している。ただし、取扱商品が16万点以上に及んでおり設定自体が難しいことに加え、設定の変更がSEO上マイナスの影響を及ぼし、かえって集客を減少させてしまう可能性も完全には否定できないことから、十分な検証を行った上で慎重な対応を行っていきたいとしている。

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ウォールにはおすすめ商品の情報などを投稿


月刊『アイ・エム・プレス』2012年4月号の記事