話題性のあるクーポンで直営店に顧客を誘導

アディダス ジャパン(株)

全国64カ所の直営店やWebサイト、SNSなどを活用してさまざまなプロモーションを展開しているアディダス ジャパン(株)。同社では、スマートフォンアプリやFacebookチェックインクーポンなど話題性のあるツールを活用して、オフラインとオンラインをつないでいる。

スマートフォンアプリやFacebook チェックインクーポンを活用

 10代から30代を中心に幅広い年齢層の人々に支持されているスポーツブランド、アディダス。その日本法人として、日本における製品の生産から輸出入、販売までを手掛けているのがアディダス ジャパン(株)だ。64カ所の直営店、およびアディダス商品取扱店により国内全域をカバー。顧客との直接的な接点である各直営店で独自のキャンペーンを実施したり、契約アスリートの活動を通してアディダスのメッセージを発信したりしている。このほか、Webサイト上で会員を募り、フットボールやランニング、バスケットボール、テニスなど13のカテゴリー別にNewsletterを配信。また最近では、TwitterやFacebookを活用したソーシャルメディア・マーケティングも手掛けている。同社では、2010年末以降、スマートフォンアプリやFacebookチェックインクーポンなど話題性のあるツールを活用して、オフラインとオンラインをつなぐクーポンキャンペーンを積極的に展開している。

ゲーム性で参加意欲を刺激したタイムリミテッドクーポン

 2010年のクリスマス商戦に向けて展開された「タイムリミテッドクーポン」は、アディダス ジャパンとして初めてスマートフォンアプリを活用して行ったキャンペーン企画。アプリをダウンロードすると、“アディダス時限クーポンモバイルメール”が配信され、カウントダウンがスタートする。特典の大きさは、アディダス直営店に到着するまでの“速さ”によるというゲーム性の高い内容だった。加えて、購入金額が1万円以上の場合はノベルティがプレゼントされるほか、抽選で契約アスリートのメッセージカードがもらえるという3段階のオファーが用意された。
 キャンペーンの告知は、数十万人に及ぶNewsletter会員、全員に向けて大々的に行った。大勢のアディダスファンを対象としたことに加えて、アプリを開くとカウントダウンが見られるというゲーム性により参加意欲を効果的に刺激した結果、大きな反響が得られ、売り上げ増にも貢献したという。この成功をひとつのベンチマークとして、同社では2011年1月以降も同様のキャンペーンを実施している。

Facebook チェックインクーポンで新しい取り組みをアピール

 2011年6月にFacebookチェックインクーポンがリリースされたことは記憶に新しい。これは、Facebook上でチェックインした人にクーポンを提供するサービス。GPS機能付きの携帯電話からFacebookにアクセスしてスポットのアイコンを選び、チェックインすると、近隣のスポットが一覧表示される。その中からクーポンのあるスポットを選ぶと、クーポン内容、スポットの詳細、そしてチェックインボタンが表示されるので、これをクリックしてクーポンを入手する仕組みだ。同社ではFacebookチェックインクーポンのリリースと同時に、これを活用したキャンペーンを実施した。参加したのは、スポーツパフォーマンスセンター渋谷とオリジナルス コンセプトショップ原宿の2店舗。店舗で入手したクーポンを提示した人には、購入の有無にかかわらず先着でオリジナルT シャツをプレゼントした。Facebookチェックインクーポンのリリースイベントが開催された渋谷109のすぐ近くにあるスポーツパフォーマンスセンター渋谷では、100枚用意したTシャツが数時間でなくなった。オリジナルス コンセプトショップ原宿では、リリースイベントが行われた週末にはすべて消化したという。
 同社ではFacebookチェックインクーポンをいち早く活用したことにより、新しい取り組みにチャレンジしていく姿勢をアピールすることができたことを高く評価している。同キャンペーンを実施した当時は、ページの「いいね!」の数も1万人ほどで、かつ準備期間が短かったこともあって2店舗のみでの実施となったが、最近ではファンが10万人を超えたことに加えて、Facebookユーザーの年齢層が、それまでの30〜40代から10〜20代にも拡大しているため、今後は全店参加によるFacebookチェックインクーポンキャンペーンを展開していきたいとしている。

気温に合わせて割引クーポンを配信「気温割」

 東日本大震災の影響で、例年以上に節電への取り組みが求められた2011年夏。政府の施策であるクールビズを同社でも推進しようと企画されたのが「気温割」だ。これは、東京都千代田区に設置した温度計が35度以上を示すと、同社が「通勤にスポーツを!」を合言葉に提案するスポーツクールビズスタイル「CLIMACOOL BIZ」対象商品の店頭セール割引率が35%になり、さらに気温の上昇に応じてアップするという企画。7月9日から8月31日まで、全国の直営店22店舗で実施された。
 キャンペーンへの参加方法は、専用サイトのQRコードからモバイルサイトにアクセスして気温をチェック。35度以上になると気温割クーポンが配信される仕組みだ。Newsletter会員であることが参加の条件だが、非会員でもその場で会員登録をして参加することができるようにした。同キャンペーンではTwitter、Facebook、mixi、ブログを活用して、キャンペーン内容やリアルタイムの気温を発信。猛暑の予想に反して、気温割の発動は少なかったが、Twitterでは多くのツイートがなされ、大いに盛り上がったという。

オンラインショップとの連携で精緻なコンバージョンの計測を実現

 オンラインからオフラインへ誘導するキャンペーンを実施した場合、課題となるのがコンバージョン・レートの計測である。今後は、今回紹介した3つのキャンペーン企画をインテグレートし、2011年10月にオープンしたオンラインショップと連携させることで、より精緻な効果測定が実現できると期待している。
 クーポンを活用したキャンペーンは、言い換えれば割引販売である。同社では、単なる値引きで終わらせないために、割引以外のおトク感や何らかのコミュニケーションをプラスして効果的なキャンペーンを展開していきたいとしている。

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2011年10月にオープンしたアディダス ジャパンのオンラインショップ(上)/気温の変化をリアルタイムで知らせた「気温割」の専用サイト


月刊『アイ・エム・プレス』2012年1月号の記事