「Yahoo!ショッピング」連動のアンテナショップを百貨店内に出店

Yahoo! JAPAN

日本最大級のインターネット・ショッピングモール「Yahoo!ショッピング」を展開するYahoo! JAPANでは2010年3月、クロス業態商品展開企画の一環として西武池袋本店にアンテナショップを開設。“消費におけるネットとリアルの新しい融合”のトライアルとして多くの成果を獲得した。

西武池袋本店でクロス業態商品展開企画のアンテナショップを出店

 Yahoo! JAPANが展開する「Yahoo!ショッピング」では2010年3月、西武池袋本店に「お取り寄せグルメ選手権」のアンテナショップを開設した。
 「Yahoo!ショッピング」は、言うまでもなく日本最大級のインターネット・ショッピングモールだ。1999年9月のサービス開始時に17店舗であった出店数は、現在約2万店舗、約1万5,000点であった取扱商品数は、現在5,000万点以上にも及んでおり、年間取扱高(2010年度)は約2,900億円に達している。
 取扱商品分野は、食品、衣料品、家電製品、各種雑貨など、あらゆるカテゴリーに及んでおり、このショッピングモールを通じて手に入らない商品はほとんどないと言えるほどだ。
 ターゲットは1カ月当たり5,000万人以上のユニークユーザー数を誇るポータルサイト「Yahoo! JAPAN」のユーザー全般。20~40代を中心に老若男女、幅広い層の利用実績があり、特にB to C分野では、あらゆる企業にとって魅力のあるショッピングモールになっていると言える。また、さまざまな集客支援メニューを用意しており、それらのメニューを効果的に利用すれば、効率的に新規ユーザーを獲得することも可能だ。さらに2010年6月には、アリババグループとの業務提携により、「Yahoo!チャイナモール」「タオジャパン」の提供も開始しており、その舞台は中国にも拡大している。
 ビジネスモデルとしては、同社が出店企業に出店スペースを提供。その対価として、初期費用、月額システム利用料、売上ロイヤルティなどの支払いを受けるかたちであり、商品の紹介、決済、配送、販売促進などを行う販売主体は出店企業となる。
 西武池袋本店におけるアンテナショップの出店は、この「Yahoo!ショッピング」が、(株)セブン&アイ・ホールディングスとの連携によって実施したクロス業態商品展開企画「お取り寄せグルメ選手権」の一環としてスタート。同店地下1階の食品フロアスイーツ&ギフト売場で継続的に展開しているものである。

定番とウィークリーでの入れ替えを併用して継続的な展開を実施

 「お取り寄せグルメ選手権」は、同社と(株)セブン&アイ・ホールディングスが連携して、“消費におけるネットとリアルの新しい融合”を実現すべく2010年3月から展開したイベント企画。先行して2010年1月に西武池袋本店で催事企画として開催した「Yahoo!ショッピング人気グルメ&スイーツお取り寄せ市」が、来場者数・売り上げともに予想を大きく上回る大成功を収めたことから、これをさらに発展させたものであり、本当に良いものをお客さまの手で発掘し、最終的には全国のセブン&アイグループの店舗で販売するまでのデマンドチェーン・マネジメントのモデルとなることを目指す壮大な取り組みとなっている。
 その具体的な内容・スケジュールは、2010年5~8月、「Yahoo!ショッピング」内に特設サイトをオープンし、約1,000店舗の商品を対象に売り上げと人気によるネット予選を実施。一方で同年9~11月には約100店舗がそごう、西武、アリオの7店舗でリアル予選を実施。さらに、ネットとリアル、それぞれの予選を勝ち抜いた上位70店舗が2011年1月に西武池袋本店に集い、最終決戦を実施。その最優秀商品について、セブン-イレブン、イトーヨーカドー、セブンネットショッピングで販売するための製品化を検討するというもの。西武池袋本店のアンテナショップは、この企画の一環として、「Yahoo!ショッピング人気グルメ&スイーツお取り寄せ市」で好評を博し、特設サイトでも人気が予想された和洋菓子やパンの名店を厳選し、常時10~12アイテムを販売。半分はウィークリーでの入れ替え制、残り半分は定番として継続的な展開を行ったものである。
 正式な店舗名称は「Yahoo!ショッピングお取り寄せグルメショップ」。ビジネスモデルとしては、「Yahoo!ショッピング」の出店企業が、「Yahoo!ショッピング」を通じて西武池袋本店に商品供給を行うというかたちであり、店舗運営・販売は西武池袋本店が担当。特に販売については、「Yahoo!ショッピング」の売り場で語られている商品についての大量の情報やレコメンドを、リアル店舗ならではの販売員を介した試食、接客トークを通じ、個々のお客さまに合わせてわかりやすくアピールすることに注力している。一方、「Yahoo!ショッピング」側は、商品供給以外ではサイト内での告知などを実施。店舗への送客促進を図っている。

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厳選された商品が並んだ「Yahoo!ショッピングお取り寄せグルメショップ」の店頭風景(2010年9月撮影)

“消費におけるネットとリアルの新しい融合”のトライアルとして多くの成果を獲得

  「Yahoo!ショッピングお取り寄せグルメショップ」では、昼間はデパ地下ファンの年配客、夕方からは仕事帰りの20~40代女性などを中心に順調な集客を実現。お試し買いが多く、平均単価は800円前後にとどまったものの売り上げ面でも一定の成果を収めた。しかし、それ以上に大きかったのは、“消費におけるネットとリアルの新しい融合”のトライアルとしての意義だ。
 例えば、普段ネットショッピングを利用していない顧客が、「Yahoo!ショッピングお取り寄せグルメショップ」の利用を通じて、メーカーに直接電話で注文したり、PCに慣れ親しんだ人に頼んで注文したりするといったケースが数多く発生したが、これは「Yahoo!ショッピング」とその出店企業にとっては、ネットユーザーでない百貨店の顧客を新たに獲得したということであり、大きなメリットだ。また、もともとの「Yahoo!ショッピング」ユーザーにとっても、ネットショッピングでは不可能な、実際に商品を店頭で見たり、味見したりした上で購入できるというメリットがあった点も見逃せない。実際に利用顧客においては、お取り寄せブームが続く中で、話題の人気商品を気軽にその場で購入できるということが喜ばれ、配送にかかる時間、送料が節約できるお得感に魅力を感じるといった声も多かったようだ。
 一方、西武池袋本店にとっては、目新しい商品を週替わりで展開することにより、常に新鮮で、見て楽しい売場づくりができたことに加え、ネットグルメの特徴である、時代性、情報性の高い商品を、既存にない新しいジャンルとして品揃えできたことが大きなメリットとなった。同店では、この成果を踏まえ、「ネット上に展開される楽しいワクワク感を百貨店の店頭に落とし込んで再現することにさらに注力していきたい。また、さまざまな理由でネットショッピングでしか扱っていない魅力ある商品をリアル店舗で展開し、お客さまに購入いただけるような仕組みづくりにも取り組んでいきたい」としており、今後もインターネットと店舗の融合を進めていく意向だ。
 なお、「Yahoo!ショッピング」と西武池袋本店では、「お取り寄せグルメ選手権」終了後も、店舗およびサイト上での「Yahoo!ショッピングお取り寄せグルメショップ」の展開を継続しており、今後も当面は当該企画を続けることにより、相互送客効果の持続を図っていきたい考えである。


月刊『アイ・エム・プレス』2011年8月号の記事