通信販売の補完から事業の大きな柱に

(株)DoCLASSE

百貨店での期間限定ショップなどの経験を経て、2010年11月に「DoCLASSE自由が丘本店」をオープンしたアパレル通信販売専業企業(株)DoCLASSE。同社では今後、首都圏を中心に直営店展開を進め、将来的には店舗販売を通信販売事業を上回る規模にまで育成することを目指している。

40~50代の女性をメインターゲットにファッション性の高い衣料品をリーズナブルな価格で提供

 (株)DoCLASSE(ドゥクラッセ)は、7年間にわたって外資系アパレル通信販売企業の経営に携わった経歴を持つ林恵子氏が2007年9月に設立し、現在も代表取締役を務める通信販売専業企業である。
 同社の通信販売事業におけるメインターゲットは40~50代の女性。これらの層では、「おしゃれはしたいが、ファッション性を重視すると、身体にフィットするサイズのものが少ない」という悩みを持つ人が多いという認識から、ターゲットを絞り込み、それらの層にフィットするアイテムを数多く品揃えすることで、ニーズを充足することを目指している。なお、2011年3月には、これらの層の配偶者をイメージした同年代の男性向け商品の展開も開始。自社の位置付けを「日本の40~50代の婦人と紳士をいつまでも若々しく、元気にし、輝かすことを使命とする」とうたっている。ちなみに、約50万人のデータベース登録顧客のうち、90%前後が40代以上の女性とのことであり、ほぼ、同社の想定に近いかたちで推移しているようだ。
 利用媒体の中心は新聞広告とカタログ。そのほかWebサイトによる販売も行っているが、現状では活字媒体の補完的な位置付けとなっている。
 新聞広告については、朝日、読売、日経などの全国紙および地方紙に全5段広告を出稿。直接購入とカタログ請求の申し込みを受け付けており、レスポンスの約1/3が直接購入、約2/3がカタログ請求となっている。レスポンスがあった顧客、見込客にはカタログを送付して、継続的な購入を促している。
 カタログは基本となる“春夏版”“秋冬版”をベースに月ごとのおすすめ商品などを入れ替えたり、追加したりするかたちで月1回発行している。
 商品については、「おしゃれで高品質の洋服」を値頃感のある価格で提供することを基本としており、代表取締役の林恵子氏と、40~50代のファッションデザイナー、美容ジャーナリスト、美術プロデューサーなど8名の外部委員で構成される“9人委員会”の意見などを反映した自社企画商品を中心に、トップス、ボトムス、アウター、バッグ・小物・靴などを品揃えしている。
 フルフィルメントについては、電話・ファクス、Webサイトで注文を受け付け、宅配便で商品を配送。支払い方法は代金引換、クレジットカード、コンビニエンスストア振込(2回目以降)を用意している。なお、返品・交換については、理由にかかわらず無期限で受け付けることで、顧客満足度の向上を図っている。
 業績は順調に伸長しており、3期目となる2010年8月期の売上高は22億2,000万円。4期目となる2011年8月期では、前年の約2倍に当たる売上高45億円を達成する見込みである。

本社移転を機に本格的店舗を開設

 同社が本格的な店舗展開を開始したのは2010年11月。2010年8月に本社を東急東横線・大井町線の自由が丘駅から徒歩圏にある東京都目黒区八雲に移転したことを機に、従来、顧客から寄せられていた「商品を直接見てみたい・触りたい」といったニーズに応えることを目的として、本社と同一のビル内に店舗スペースを設け、「DoCLASSE自由が丘本店」として営業することとしたのだ。
 店舗運営においては、本店オープンに先立って2010年10月に実施した百貨店の伊勢丹立川店・浦和店における各2週間の期間限定テナント出店での経験が役立った。特に通信販売にはない陳列、プライスタグの取り付けなどについては、百貨店での出店経験によって蓄積されたノウハウが生かされている。なお、百貨店における期間限定のテナント出店については、来店客に好評だったことから、その後も同じく伊勢丹の相模原店、町田店、また、国分寺マルイ店、都筑阪急(横浜市都筑区)などで継続的に実施されている。
 本店はスペースが約13坪と限られていることから、通信販売の売れ筋商品を中心にカタログの約1/3に当たる約120アイテムを取り扱っている。ただし、特に通販利用顧客の「あの商品を直接見てみたい・触りたい」といったニーズに応えるため、事前取り寄せサービスを実施しており、来店の3日前までに電話で「商品番号○□番の白の9号」といったかたちで申し込みをすれば、配送センターから店舗に商品が届けられ、確実に商品を試すことができる。また、店頭でカタログを見て、店舗に置いていない商品を注文する際には、配送料金を無料にし、その場で注文できるサービスも行っている。
 事前取り寄せサービスは来店客の2割弱が利用しているが、試着のみで終わるケースも少なくないという。しかし、顧客サービスによって満足度を向上することができるという観点から、当該サービスについては今後も継続する意向である。
 店舗については、Webサイトのほか、新聞広告において小さなスペースで紹介する程度で、さほど積極的な告知を行っていないため、現状、1日平均50人程度の来店客の約80%が通信販売の実績顧客となっている。カタログの興味がある商品のページに付箋を貼って持参する顧客も多いことから、同社では、顧客の「商品を直接見てみたい・触りたい」というニーズの充足に多少なりとも貢献できているものと認識している。なお、来店客のプロフィールは正確には把握していないが、ファッション感度の高いリピート顧客が多く、客単価も通信販売より若干高めになっているとのことである。
 同社として未経験分野であった店頭での接客については、自社スタッフ6名で対応。コールセンターのスタッフなどから希望者を募り、アパレルでのショップ勤務経験などよりも、ホスピタリティの高さを重視して人選した。すでに同社通信販売のコアなファン層では、“店舗スタッフとの会話を楽しみに”来店する人も増えているとのことであり、今後もコールセンターでの対応と同様に、節度を保ちながらもフランクな対応を継続していく考えだ。ただし、店舗ではコーディネート提案などが求められるケースもあるため、例えば、専属スタイリストが作成したスタイリングブックなどを教材に、知識やノウハウを蓄積していくことで対応していく意向である。

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閑静な住宅街に立地する本社ビルの一角にあるDoCLASSE自由が丘本店(上)。月1回発行のカタログ(右)は、毎号約半分の商品を入れ替える

将来は店舗販売を通信販売を上回る規模の事業に

 同社の店舗販売は、現状では常設店舗については1店舗のみの展開であるが、売り上げは坪当たり100万円/月を実現しており、一定の採算性を確保している。定期的な新聞広告の出稿などでブランドの知名度も上がってきていることから、同社では、将来的には店舗販売を通信販売の補完的な役割としてではなく、通信販売を上回る規模の事業として育てていく方針を示している。
 現時点の計画としては、2012年度に5店舗体制、2013年度には20店舗体制とすることを予定。現在、通信販売の顧客データベースにおける居住地の分布状況などを参考に、首都圏のターミナル駅周辺などで、路面店出店の可能性のある場所を探索しているという。


月刊『アイ・エム・プレス』2011年8月号の記事