TVCMでお馴染みのプロアクティブのブランド認知率は約80%に。次の重要課題となる顧客維持に向けて、メンバーズプログラムを刷新。適切なアドバイスを提供することによって、もっと製品の良さを実感してもらおうと、メディアとメニューの両面から相談窓口の強化を図った。
ブランド認知率は約80%に
日本でもTVCMですっかりお馴染みのニキビケア化粧品「プロアクティブ」をはじめ、安心と信頼をモットーとした商品を提供するガシー・レンカーは、米国カリフォルニア州で1988年に誕生した。世界最大規模のインフォマーシャル・カンパニーとして知られており、米国本社の2010年のスポット放映量は全米No.1。同社は現在、世界10カ国で事業展開しており、主力ブランド、プロアクティブの顧客は全世界累計で1,500万人に上っている。
日本法人、ガシー・レンカー・ジャパン(株)は、2001年の設立。今年で事業展開10年目を迎える。2006年調査ではおよそ15%だったブランド認知率が2010年には80%近くにまで達しており、これに伴って売上高、新規顧客数とも右肩上がりで推移してきた。
そこで今後の重要課題と位置付けられているのが、ブランドロイヤルティの育成による顧客維持。プロアクティブの商品特性から、ニキビが改善されると使用をストップするお客さまは少なくないが、肌の健康維持やニキビ予防にも効果があることを知ってもらい、より長く商品を使い続けてほしいと考えている。
使い方を分かりやすく説明
プロアクティブの中心顧客層は10代から20代半ばまでの若い層で、これが全体の70%弱を占める。性別で見ると、ここ数年で男性の顧客数が倍増しており、男女比はおよそ3対7だ。
プロアクティブ製品の使用方法はTVCMでも紹介されている通り3ステップで、決して複雑ではないのだが、過去に化粧品の使用経験がほとんどない10代の顧客や男性の中には難しいと感じる人もいる。商品は60日間で1セットを使い切る量になっているが、正しく使用しないとニキビケアの効果は上がらない。そこで同社では、初めて購入したお客さまに対して、男女別、年代別に使い方やニキビケアに役立つ知識を説明した冊子や、洗面所に置ける防水タイプの説明書を作成して、スターターキットとして商品に同梱。また、60日間に4~6回のメルマガを送り、使い方などにかかわるワンポイントアドバイスを行っている。
さらに、それでも効果を実感していただけない場合には、60日の間ならいつでも代金をお返しする仕組みをとっている。この「返金保証制度」は、顧客視点に立つ同社の姿勢を最も端的に表している施策と言える。
「スターターキット」に入っている、使い方やニキビについての知識をわかりやすく説明した冊子は、約30人にグループインタビューした結果、全員に支持されたという
定期お届けプランの利用者が半数以上
同社では60日ごとに商品をお届けする「定期お届け『クリアスキンプラン』」を運用。これを利用するお客さまを「メンバー」と位置付け、「メンバーシッププログラム」によってさまざまなサービスを提供している。
TVCMを見て新規申し込みをするお客さまには、ニキビには継続的なケアが重要であることをていねいに説明。さらに、クリアスキンプランに登録すると商品を割引価格で購入できることなどを伝え、メンバー登録をおすすめする。これによって電話受注の場合は、ほとんどのお客さまがメンバー登録を希望する。Webからの申し込みの場合は、電話と比べてメリットが十分に伝わりにくいことから登録率は低くなるものの、それでも電話とWebを合わせて、新規顧客の半数以上がメンバーになるという。
同社では今年1月、ブランドロイヤルティ育成に向けて、メンバーシッププログラムを刷新した。例えばポイントプログラムにおいては、獲得ポイント数に応じた4つのステージを設け、ロイヤルティの高い顧客ほど手厚いサービスを提供できるようにした。
相談窓口を拡充
同社には自社スタッフ60名を擁するカスタマーサービスセンターがあり、ここで顧客からの電話やeメールを一手に受け付けている。受付時間は平日の9時から20時までと、土曜日の9時から17時まで。電話の内容は大きく①注文、②解約・返金などを含む各種手続き、③相談の3つに分けられる。年間で100万件に及ぶコール数のうち約半数が①の注文で、②が約30%を占める。③の相談は約10%であるが、この相談業務に力を入れることで顧客視点に立つ同社の姿勢をより明確化しようというのが、今回の刷新の狙いの一つである。
同社ではメンバーが解約を希望した際に、その理由を聞いている。また年に3~4回、グループインタビューを実施して顧客満足度などを調査している。当然、満足度が高い層ではリテンション率が高くなり、不満足層はその逆となるが、不満足を生み出している理由として決して小さくない割合を占めるのが、間違った使い方をしたり自分に合っていない商品を選んだりしていること。ほんのちょっとしたアドバイスを提供することで満足度を高め、離反を防げたと思われるケースが少なくなかった。ここでも相談業務の重要性が浮き彫りになっていたのだ。
ニキビの悩みを他人に相談するのは勇気がいる。思春期の顧客にとってはなおさらのことだろう。そこで同社では、電話をかけづらいという顧客のためにWeb上での肌タイプ診断などのコンテンツ充実を図る一方で、より気軽に電話やeメールで相談を寄せてもらうために、問い合わせ方法や内容を多様化するとともに、窓口の名称を以下のように明確化した。
「スキンケアサポート」ではカスタマーサービスセンターの営業時間内に電話でアドバイザーが相談に応じているほか、平日9時半から16時半にアドバイザーがチャットで相談にのる「チャットdeサポート」、Webメールで質問に応じるサービスがある。加えて、あらかじめWebで希望の日時を予約すると、指定の時間にアドバイザーが電話をかける「お電話予約サービス」も実施している。相談内容は「自分に合う製品はどれか」「乾燥対策とニキビケアを両立するにはどうしたらよいか」などさまざま。また「娘がなかなか使わない」といった保護者からの相談も多い。「チャットdeサポート」にはスタートから1カ月間で約200件の利用があったという。
また、より専門的な知識を得たいという要望に応えて「プロフェッショナルサポート」を開始した。電話とWebで予約を受け付け、指定の日時に管理栄養士や看護師などが電話をし、メンバーから肌タイプや生活習慣について伺いながら、食生活や薬との併用といった専門的な相談に応える。管理栄養士や看護師は外部の協力スタッフであるが、カスタマーサービスセンターに常駐し、通常の相談業務にも対応しているという。
顧客維持・拡大に期待
新しいメンバーズプログラムについては、Webや商品同梱のパンフレットなどで告知。きめ細かなサポートの提供による口コミ効果も期待されている。
サービス拡充の効果については最終的にはリテンション率で測ることになるが、これにはサポート窓口を利用した顧客と利用しなかった顧客の購入継続期間や購入金額の比較調査なども必要であることから、結論を出すまでにはまだ時間がかかると同社は見ている。