チャット利用者の約90%が対応に満足 新たな顧客層の取り込みに期待

SBI損害保険(株)

ダイレクト損害保険ビジネスを手掛けるSBI損害保険(株)。SBIグループのインターネット金融サービスノウハウと、あいおいニッセイ同和損保の業務ノウハウを融合して実現したリーズナブルな保険料の自動車保険が人気を博し、契約件数を右肩上がりに伸ばしている。顧客の多様な声に応えるため、同社では2009年7月よりチャットでの問い合わせ対応を本格稼動させた。

担当者がチャットに興味を持ったことをきっかけに導入を検討

 SBI損害保険(株)は、SBIホールディグス(株)、あいおいニッセイ同和損害保険(株)、ソフトバンク(株)が出資するダイレクト損害保険会社である。2006年6月にSBI損保設立準備(株)として設立し、2007年12月に損害保険業の免許を取得すると同時に商号をSBI損害保険(株)に変更。2008年1月より営業を開始した。同社が第一弾として取り扱いを開始した自動車保険は、インターネットを活用することによって実現したリーズナブルな保険料が評判を呼び、保険契約件数が急伸。創業から2年9カ月で、累計契約件数20万件を突破した。
 パソコンとモバイルのインターネットのみで自動車保険の申し込みを受け付けている同社にとって、「SBI損保サポートデスク」(以下、サポートデスク)は貴重な顧客接点である。
 業務内容は、インバウンド業務とアウトバウンド業務のほかに、バックヤード業務がある。各業務を具体的に見ると、インバウンド業務は、①見込客からの見積り依頼・契約・資料請求の受け付け、②契約内容の変更・訂正・解約の手続き、③契約継続の手続き、④インターネットでの見積り、契約申し込みの手続きに関する問い合わせの受け付け。アウトバウンド業務は、インバウンド業務に付随する督促業務。バックヤード業務は、書類の整理や入力、顧客の声の活用となっている。
 ビジネスが急成長中であるが故に、サポートデスクに寄せられるコール数は右肩上がりに増え続け、現在では月平均2万5,000件に達する勢い。しかし、コール数が増えるにつれ増加していたのが「もっと気軽に聞いてみたい」「操作方法などを手軽に教えてほしい」などの顧客の声。そんな中で、サポートデスクの運営・管理を担う業務推進部のスタッフが面白そうと興味を持ったのがチャットだった。

テスト期間を経て2009年7月から本格稼動

 コミュニケーション・ツールを増やすことは、電話に集中しているアクセスを分散させると同時に、顧客の利便性を高めることにもつながる。同社ではこうした観点から、3カ月のテスト期間を経て2009年7月にチャットの本格導入に踏み切った。現在チャットでは、同社Webから商品・サービス内容・見積り方法・契約手続き・変更方法などの問い合わせを受け付けている。Webサイトで見積りや申し込み手続きを行いながら、チャットを利用して商品内容や操作方法を聞くことも可能だ。
 同社では、チャット対応の開始に当たり、多くの顧客に利用してもらえるよう、Webサイト上でチャットの使い方を告知。チャットとは何かといったチャットそのものの説明からはじまり、どのように会話を始めるのかを丁寧に説明している。また、チャット終了後にはアンケートへの協力も要請。チャット対応に関する顧客満足度を測定している。
 受け付けに当たるのは、業務推進部のスタッフ。サポートデスクは大阪にあるが、チャットに関しては東京本社の業務推進部のWebチャット運営チームで行っている。業務推進部では、チャット対応の開始に当たり、損害保険会社のコールセンター勤務経験者をチャット専任のオペレータとして新規に採用した。

チャットの導入で新たな顧客層を開拓

 受付時間帯は、平日の10~18時。また、チャットシステムには、Live800を使用している。「お問い合わせはチャットでも受付中!」と書かれたアイコンをクリックすると、「何かお困りですか?」というポップアップ・ウィンドウが表示され、チャットを始めることができる。
 チャット対応の留意点としては、特に正確な対応が挙げられる。これは問い合わせを匿名で受け付けていることから、間違った情報を伝えてしまっても訂正することが難しいためで、サポートデスクでは電話対応以上に細心の注意を払って対応に臨んでいるという。一般的に、チャットはひとりのオペレータが一度に複数の顧客に対応できることが導入メリットと言われているが、同社では2名までを限度としている。顧客ごとにケースが異なり、対応の難易度が高いためだ。
 正確な対応をサポートするツールとしては、ナレッジデータを用意している。ナレッジデータはエクセルベースで、FAQと事例をそれぞれ約200件ずつ収録。コピー&ペーストして使えるようにした。
 チャットの応対履歴は、チャット利用者にユニークIDを振り、テキストデータとともに管理している。チャットの途中で顧客が電話への切り替えを希望した場合には、このユニークIDとテキストデータをセールスフォースに登録することで、スムーズな連携と顧客ニーズに応じた対応を実現している。
 受付状況を見ると、利用時間帯のピークは12~14時。商品やサービスに関する問い合わせが多く、平均対応時間は約20分。電話の約15分に比べるとチャットのほうがやや長くなる傾向が見られる。
また同社では、チャットを始めて改めて気付いたことがあるという。それは、①乳幼児を抱えた母親や、仕事の合間などで電話をかけにくい状況の人がいること。②文章による説明の方が、声での説明よりわかりやすいと感じる人もいること。このようにチャットの導入によって、新たな顧客層の獲得につながる可能性もありそうだ。

利用者の約90%が満足

 前述の通り、チャット終了後にはLive800のアンケート機能を使用して、対応の満足度を調査している。アンケートは5段階評価とフリーコメントからなり、同社ではこの結果を今後の運用の参考にしていく構えだ。
 2010年10月の実績を見ると、「非常に満足」が55.3%、「満足」が32.5%、「普通」が10%、「不満」が0.6%、「非常に不満」が1.5%であった。「非常に満足」と「満足」で90%弱を獲得しており、かつ「不満」と「非常に不満」の合計が約2%にとどまることから、同社のチャット対応の品質が高いことがわかる。
 ちなみに、「非常に不満」と回答している顧客は、個別ケースにおける契約の引き受けができない場合などのためで、チャット対応への不満はほぼ無いとのことだ。
 チャット活用における課題として、同社では効果測定の問題を挙げている。顧客は匿名で問い合わせてくるため、対応後に契約に至ったか否かを確認することが難しいのだ。アンケートからチャット対応が顧客に好評なことは明らか。効果測定が可能になれば、CSの観点からも、販売促進の観点からも、チャットが有効なツールであることが証明されることになるだろう。

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チャットの利用方法を丁寧に説明。アンケートへの回答も促している


月刊『アイ・エム・プレス』2011年2月号の記事