チャットシステムの導入で「リアルタイムでカウンセリングが受けられる化粧品通販サイト」を実現

(株)イプサ

化粧品メーカーの(株)イプサでは2010年8月、「イプサ公式通販サイト」のリニューアルオープンに伴い、国内化粧品業界で初の「チャットカウンセリング」をスタート。接客経験が豊富な「イプサオンラインクルー」の対応によって、店頭と遜色ないレベルでの接客を実現している。

国内化粧品業界で初となるチャットカウンセリングをスタート

 (株)イプサは1986年に設立され、翌1987年から営業を開始した化粧品メーカー。「自ら」「・・・自身の」「自発的な」などを意味するラテン語に由来する社名を持つ同社では、“一人ひとりの「美のレシピづくり」”をコンセプトに、全国の百貨店内の「イプサショップ」、およびインターネット上で展開する通信販売を通じて、顧客一人ひとりの肌や感性に合ったスキンケア、ベースメイク化粧品などの提供を行っている。
 同社では2010年8月17日に「イプサ公式通販サイト」をリニューアルオープン。これに伴って、日本の化粧品業界では初となる「チャットカウンセリング」をスタートした。
 同社では冒頭で紹介したコンセプトを実現するために、例えば業界でもいち早く店頭に肌測定器「イプサライザー」を導入。顧客それぞれの肌の状態を確認し、それに合った化粧品を提供するというスタイルでビジネスを展開してきた。ネット通販においてもこのスタンスは同様であり、Webサイト上の質問に回答していくことで、自らの肌タイプを判定し、お勧めのアイテムを確認することができる「オンラインカウンセリング」の提供や、電話での問い合わせへの対応により、店頭に近いレベルの“接客”を実現している。今回のチャットカウンセリングの導入は、これらの動きをさらに推し進めようとするものであると言えよう。
 チャットカウンセリングの具体的な仕組みは、公式通販サイト上の「チャットで相談」ボタンをクリックすると、チャットにより肌の悩みや商品選びについての相談ができるというもの。このチャットを担当する「イプサオンラインクルー」は、いずれもイプサショップでの接客経験が豊富なプロフェッショナルであり、ユーザーは、まさに店頭と遜色ないレベルでの接客を受けることができる。受付時間は平日の11~20時。電話での問い合わせの受付時間は平日の10~17時だが、チャットカウンセリングについては主婦の夕食後や仕事を持つ女性の帰宅後にも利用できるよう、夜間の時間帯を増やしているとのことである。
 イプサオンラインクルーは現在5名。うち2名が常時チャットを担当しており、ほか3名は電話受付業務をしながら、必要に応じてチャットも担当している。また、すべてのクルーが稼働中ですぐに対応できない場合は、サイト上にその旨が表示される。なお、スタート時においては、クルー1名が同時に最大3ユーザーまで対応していたが、ユーザーへのレスポンスが遅れてしまうケースが間々あったため、現在では最大2ユーザーまでに変更し、より高い顧客満足度の実現を目指している。

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接客経験が豊富なイプサオンラインクルーによる、チャットカウンセリングの様子

“店頭と変わらない接客”で好評価を獲得

 チャットカウンセリングのスタートから約4カ月を経過した2010年12月現在、利用件数は1日平均12件程度である。システムの利用において属性情報の提供を求めていないため、ユーザーのプロフィールは明らかではないが、その対話内容から、妊娠中や小さい子どもがいるなど、店舗を訪問できない事情がある女性が多いのではないかと類推している。なお、時間帯で特に目立ったピークはないが、19時以降の利用は比較的少ない。また、曜日でのバラつきも少ないが、不定期に発行しているメールマガジンの配信翌日は利用が多くなるなどの傾向が見られたとのことである。
 相談内容については複数の要素を含むことが多く、明確には分類できないが、商品選びについての相談が肌の悩みについての相談をやや上回っている状況となっている。なお、特に個別アイテムの詳細な成分についての問い合わせなどでは、Webサイト上の説明ページのURLなどを張り付けて対応することができることから、好評を得ているようだ。
 1ユーザー当たりの対応時間は平均16分程度だが、最長では2時間にも及ぶケースもあるとのこと。なお、同社では、チャットシステムとして導入した「Live800」の定型文登録機能を利用することなどで、同じ時間内でもより充実した対応ができるよう心掛けている。
 またユーザーの満足度については、システム上で対応後にユーザーが行う評価でおおむね高い評点を得ており、「店頭とイプサらしさが変わらない」「店舗を訪問できず困っていたが、相談できて良かった」といった肯定的なコメントが寄せられることも多いことから、一定以上の評価を得ているものと判断している。なお、店頭対応との比較で「時間を拘束されず自分の都合で退出できる」という点、また、電話対応との比較で「(対応可能かどうかがリアルタイムで表示されているので)つながらないフラストレーションがない」という点も評価されているようだ。

チャットカウンセリングの認知向上とアクセスに対する抵抗感の一掃を図る

 同社では、チャットカウンセリングについて、顧客サービスの向上に一定の貢献をしていると判断しており、今後、さらなる利用促進を図る意向である。そのための施策としては、「チャットカウンセリングの認知向上」と「アクセスに対する抵抗感の一掃」を図ることを考えている。
 まず、「チャットカウンセリングの認知向上」については、Webサイト内での“入り口”を増やしていく方針だ。具体的には、現状、「オンラインカウンセリング」と同じページに1カ所のみとなっている入り口をほかのページにも設けたり、チャットカウンセリングの対応時間では「オンラインカウンセリング」の表示をせずにチャットカウンセリングに導く「チャットで相談」ボタンのみを表示したりすることで、サイトユーザーがチャットカウンセリングを認知する機会を増やしていく。これに伴い、必要に応じたイプサオンラインクルーの増員を行うことで対応のキャパシティも拡大し、より多くのユーザーに利用してもらえる体制を確立したい考えだ。
 また、「アクセスに対する抵抗感の一掃」については、チャットでの問い合わせ対応の内容の中で普遍的なものをリスト化して「Q&A」としてWeb上に表示することで、実際のチャットでどのようなやり取りが行われているかを例示。さらに、トップページからもアクセスされやすいように、トップページに「肌のお手入れの疑問」というバナーを置いて、Q&Aページに誘導することを考えている。
 そのほか、顧客データベースを活用することで、お客さまの購入履歴やカウンセリング結果に基づいたアドバイスを行うなどの個別対応を強化することも検討している。
 現状では店舗とネット通販で別々の顧客データベースを運用しており、店頭で商品を購入している顧客については対応できない状況であることから、将来的にこれらを統合した段階で、本格的な検討に入りたい考えである。


月刊『アイ・エム・プレス』2011年2月号の記事