人事と教育システムの抜本改革でオペレーションスタッフの“やる気”に応える

(株)ベルシステム24

テレマーケティング・サービス・エージェンシーの(株)ベルシステム24では、オペレーションに従事する契約社員が、やりがいと目標を持って働き続けられるよう人事と教育システムの抜本改革を実施した。また、同社CRM支援室CRM教育グループが中心となって、モチベーションとクオリティを上げるための新たな研修・昇格制度も導入している。

「CRM人事制度」を策定

 コールセンターのオペレーション業務従事者において最も構成比率が高いのは、一般的にコミュニケータ、リーダー、スーパーバイザーと呼ばれるスタッフである。その大半は契約社員や派遣社員で、シフト制で勤務しているというのが多くのコールセンターにおける雇用の実態となっている。
 全国に47拠点を構え、流通・小売り、情報サービス、メーカーといったあらゆる業界のコールセンター業務を手掛ける(株)ベルシステム24では、現在、正社員を上回る数多くの契約社員が活躍している。
 同社では、この大きな戦力である契約社員が自らの仕事にやりがいを感じ、目標を持って生き生きと働けることを主眼に置き、人事制度を抜本的に改革。CRM支援室CRM教育グループと人事部が共同でプロジェクトチームを立ち上げ、既存の人事制度とは別にオペレーション部門に特化した「CRM人事制度」を策定し、2010年3月より全拠点で適用を開始した。

役割を細分化して契約社員の活躍の場を拡大

 「CRM人事制度」の特徴は、ポジションと役割を明確にしたことと、公正かつ透明な評価制度と昇進制度を構築した点にある。
 前者については、まず、CRM(以下、新)人事制度のベースとなるポジションごとの役割と必要なスキルを再定義するとともに、呼称も刷新した。管理職の呼称については、これまでリーダー、スーパーバイザー、チーム長/グループ長というように、コールセンター業界で一般的な名称を用いていたが、あえてこれを廃止し、業界ではなじみのない「ディレクター」という呼称を採り入れた。この斬新な名称の導入には、人事制度が根本的に変わったことを内外にアピールするという狙いがあった。
 ディレクターは、旧制度で言えばスーパーバイザーに相当し、センター運用の責任者として、与えられた人材と予算の範囲で最大限の効果を上げることをその役割としている。同社では新人事制度の下、ディレクターを起点に他の役割の定義やマネジメント範囲を決めていった。
 これまでの契約社員のトップポジションは、新階層でいうところのディレクターまでであったが、新人事制度ではチーフ・ディレクターにまで拡大。より一層、契約社員が活躍できる場を広げた。現状、重要な役割になればなるほど社員の占める比率が高くなっているわけだが、同社では新人事制度の導入を機に、ディレクター、チーフ・ディレクターにおける契約社員の割合を増やしていく方針を掲げている。

ステップアップの仕組み

 新人事制度におけるキャリアアップの仕組みは、以下の通り。
 まず、コミュニケータからリーダー、チーフ・リーダーまでは、ポジションごとに設定された要件を満たすスキルを身に付けるために必要な研修を修了していること。次に、年2回実施される「姿勢・スキル評価」の結果が基準を満たしていること、の2点をクリアしなければならない。
 さらに、アシスタント・ディレクター、ディレクター、チーフ・ディレクターへと昇格するには、上記に加えて登用試験での合格が必須となる。登用試験は、役割に即したテーマに関するプレゼンテーションと面接で構成されている。アシスタント・ディレクター以上は、クライアントとの接点も増えてくることから、登用試験を通して筆記試験で判断できないプレゼンテーション能力や交渉力、人となりを見極めることが目的だ。
 ジャッジをするのは、グループ長以上の管理職。アシスタント・ディレクター面接はグループ長と局長で、ディレクター面接はこれに部門長が加わり、チーフ・ディレクター面接にはさらに役員クラスが加わる。
 ディレクター以上になるには、もうひとつの勤務条件を満たす必要がある。シフト制の時間勤務では担うべき業務の遂行が難しいため、フルタイムでの勤務が必須となるのだ。これに伴い、同社人事部においては新たな賃金制度の構築を視野に入れ、検討を重ねているとのことである。

ポジションと役割の見直しに伴い研修カリキュラムも再構築

 研修体系は、ライン研修とスキルアップ研修に大別されている。前者は、ポジション別に必要なスキルを総合的に学ぶ研修で、1研修当たり7~8つのカリキュラムで構成されている。後者はさらに、必修研修と任意研修の2つに分かれており、必修研修ではライン研修で網羅できなかったスキルを、任意研修ではオペレーション分野別に必要なスキルを教育している。この任意研修のメニュー数は約15種類に及ぶ。
 同社では新人事制度の適用に合わせて、期初に研修スケジュールを公開、集合研修は首都圏と関西の2カ所で行っている。なお研修は、基本的に研修会場で行うが、例えば労務に関する講義など、本社スタッフが講師を務める専門性の高い内容の時や、集合研修地まで遠い一部地域の研修においては、テレビ会議システムも活用している。
 テレビ会議システムの利用においては、臨場感に欠けるとか、集中力に欠けるといったことが懸念されたが、予想以上に評判も良く、合格率にもリアルな講義との差違が見られないことから、今後も取り入れられるところには積極的に導入していく意向だ。なお、スキルアップ研修のeメールコミュニケーターコース、派遣リテラシー研修、レポーティングアセスメント研修には、eラーニングを活用している。
 また同社では、新人事制度の策定に当たり、研修カリキュラムについても、新たなポジションとその役割に応じて見直しを図った。
 見直しに当たっては、現場に即したカリキュラムを作ることに留意し、現場の協力をあおいだ。また、COPC®の認証を取得した経験と長年にわたり培ってきた独自のノウハウを融合させたトータル・マネジメント手法を用いて、同社の全社的オペレーション・クオリティ基準であるオペレーションズ・パフォーマンス・マネジメント(OPM)を満たしている。現在、CRM支援室CRM教育グループでは、個々のカリキュラムの策定の大詰め作業に入っているところだ。

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今年度は50名のチャレンジを目指す

 各研修は、学ぶ意欲があれば誰でも参加できるが、昇進したところで活躍の場がなければ意味がないことから、ただ闇雲にキャリアアップを促進するものではない。同社では、期ごとに、どのポジションを重点的に教育するか、各拠点に計画してもらうと同時に、該当者が学びやすい環境を整えるために育成枠を設け、計画的な受験を促している。
 新人事制度はスタートしたばかりだが、同社では今期、50名のチーフ・ディレクターの育成を行っている。


月刊『アイ・エム・プレス』2010年8月号の記事