独自性の高い商品政策に基づき“価値ある商品”を提供

(株)カタログハウス

『通販生活』で知られる(株)カタログハウス。カタログ誌の有料販売をベースとする同社のビジネスは、ほかの通販企業とは明らかに一線を画している。特に独自に制定した“商品憲法”に基づく商品政策は、地球環境への配慮などの点で極めて先進的であり、今後の企業経営のあり方におけるひとつの指針になっているとも言えよう。

メイン媒体は有料カタログ誌

 カタログ誌『通販生活』で知られる(株)カタログハウス。同社は1976年11月、(株)日本ヘルスメーカーとして設立。オリジナルの室内ランニング器「ルームランナー」の通信販売を行い、一躍通販業界の注目企業となった。その後、1982年には社名をヘルス(株)に変更し、カタログ誌『通販生活』を創刊。さらに1987年に現社名に変更している。
 同社が展開している通販ビジネスの最大の特徴は、何と言っても『通販生活』に価格を設定し、有料で販売していることだ。従って『通販生活』には、単に購入商品を選ぶための“カタログ”ではなく、クオリティーの高い“読み物”であることが求められており、その実現のために、紹介する商品についても「めったに街では見かけない掘り出し物にこだわる」姿勢が徹底されている。そして、その姿勢は多くの生活者に支持され、100万人以上の購読者(2009年10月実績)を獲得するまでに至っているのである。
 現在、『通販生活』は春号(1月)、夏号(4月)、秋冬号(10月)の年3回の発行。各号には別冊を付けており、それ以外に『ピカイチ事典』を年2回発行している。
 カタログ誌以外の販売チャネルとしては、Webサイト「通販生活」がある。Webサイトについては、従来、購入時に顧客番号が必要となる『通販生活』購読者向けサイトと誰でも利用できるオープンサイトの2種類を運営していたが、利用者の中で一部混乱が見られたことなどから、より高い利便性の実現を目指して2010年2月に統合し、現在ではオープンサイトのみの展開となっている(ただし、会員登録制度はあり、会員登録をしてからログインすると、次回以降の買い物の際、届け先の入力が省略できる)。なお、顧客層の中心が40代後半から60代の女性層となっているためか、インターネットを通じた購入の比率はほかの通販会社などと比較して低く、カタログ誌『通販生活』を見て購入商品を選び、注文のみインターネットで行うというケースを含めても、20%前後にとどまっているとのことである。
 新規顧客獲得の主要チャネルは、テレビCMと新聞折り込みチラシである。テレビCMについては数ある通販会社の中でも先進的な試みを行っており、例えば1992年には長寿の双子姉妹「きんさんぎんさん」を起用した正月CMが大きな話題を呼んだ。また、最近では著名人を起用したCMの「○○さんも『通販生活』を始めた」といったフレーズが印象深い。新聞折り込みチラシについては、テレビCMの中で「詳しくは明日(本日)の新聞折り込みチラシをご覧ください」といったナレーションを流し、相乗効果を高めるという手法を採っている。

独自の“商品憲法”を制定して厳格に運用

 同社が取り扱う商品は、年間700~800アイテム。そのうち新商品は半数程度で残りは継続販売商品である。原則として1分野1商品という姿勢が採られており、いずれも各分野の中で、商品調達担当者自らが「こんな商品が欲しい」「この商品の良さをぜひ紹介したい」といった観点で、厳しく選定したものとなっている。その中で価格については、「(価格に見合った)価値のある商品だけを紹介する」という理念の下、それぞれについて“適正”と考えられる価格を設定している。従って、購買意欲を刺激するための「半端価格」(980円、9,800円など)に設定されている商品はほとんど見受けられない。
 全社的な商品選定基準としては、独自の“商品憲法”(別掲参照)を定めている。これは第1条~第6条、および第9条により構成されるもので、基本的には地球環境への配慮や国内製造業振興への貢献を意識したものとなっているが、(おそらくは日本国憲法第9条と関連付けた)第9条として「できるだけ、核ミサイル、原子力潜水艦、戦闘機、戦車、大砲、銃器のたぐいは販売しない」という条文を加えているあたりは、単に商品を販売するのではなく、商品を通じた“価値”を提供する同社の面目躍如といったところだろうか。
 しかも、同社の商品憲法は単なるお題目ではない。例えば、第1条については、「廃棄焼却時にダイオキシンを発生させにくい商品しか販売しない」「環境ホルモンの疑いがない商品しか販売しない」など、具体的な“売らないルール”を策定して遵守。カタログ誌面にも「商品ジャンル別環境チェック一覧」といったコーナーを設けるなどしている。
 また、第2条については、1997年に修理部門として「もったいない課」を設置し、通常3年間のメーカー無料保証期間を過ぎた商品について有償で修理を実施。2009年度では508点の修理依頼を受け、473点について修理を完了した。また、特に耐久消費財に関しては、製品を長期的に使用するために必要な消耗品、お手入れ方法などを知らせる「メンテナンス通信」を製作し、購入実績客に定期的に送付することで、長期使用のサポートを行っている。
 第3条については、2000年にリユースショップ「温故知品」をオープン。同社から購入したものの不要となった商品を買い取り、修理・点検をした後に、新品価格の3~5割前後で再販売している。ちなみに2009年度は3,666点を買い取り、うち2,753点を再販売した。
 第4条については、「メディカル枕」「ホワイトクラウド」「デロンギヒーター」など16商品に“回収・再生マーク”、「浄水器シーワンのカートリッジ」「マキタの30/15の充電器」など37商品に“回収・無害化マーク”を付け、買い替え時などに無償回収を行って、再資源化・再商品化、廃棄・リサイクル前の無害化処理などを実施している。
 さらに第5条については、グリーン電力購入やモーダルシフト(自動車便から鉄道貨車便への移行)によるCO2の削減、第6条については取扱商品の約7割を「メイド・イン・ジャパン」商品とするなど、いずれも理念の掲示にとどまらない具体的な対応を行っている。

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ビジネスの根幹は顧客との信頼関係の構築・維持

 同社では、商品の価値を顧客に理解してもらい、納得して購入・使用してもらうことに重きを置いており、例えば、『通販生活』においては商品調達担当者自らの言葉で商品を紹介できるよう、コピーライティングも内製化。さらに編集途上で台割り(ページ構成)を20回前後も変更するなど、徹底した吟味を行っている。さらに、前述の「メンテナンス通信」のほかにも、ハガキやeメールなどにより定期的なアフターフォローを行うことで、購入後の満足度向上も図っており、これらの取り組みによる顧客との信頼関係の構築・維持をビジネスの根幹としている。
 なお、長引く不況で小売業全体が停滞状況にある中、近年、同社の売上高も減少傾向にあり、2008年度(2009年3月期)では約330億円と前年比6%程度のマイナスとなった。2009年度においてもマイナス傾向は持続する見込みであるが、受注件数自体は増加傾向にあることから、同社では「自社の取り組みは顧客に一定の理解を得ている」と認識しており、今後もこれまで同様の展開を継続していく意向である。


月刊『アイ・エム・プレス』2010年5月号の記事