価格比較サイトの有効活用で売り上げを急拡大

(株)アベルネット・PCボンバー

「PCボンバー」の名称でPC、デジタルカメラ、情報家電製品などの販売を手掛ける(株)アベルネットでは、価格比較サイトを最大限活用して“低価格”を訴求し、売り上げを急速に拡大してきた。近年では中古品の買い取りやレンタルサービスなども展開。ユーザーとの結び付きを強化し、さらなる業容拡大を図っていく意向だ。

現金卸問屋での経験を生かし通信販売に参入

 「PCボンバー」の名称でPC、デジタルカメラ、情報家電製品などの販売を手掛ける(株)アベルネットは、当時、東京・秋葉原の家電製品の現金卸問屋に勤務していた小山励基氏・渡邉健次氏らにより、1998年に設立された。
 当時はPCの普及期であり、“家電の街”と言われる秋葉原の中でも、販売店により同一機種の販売価格のバラつきが大きかった。従って、ユーザーはより低価格で販売している店舗を探して多くの店舗を歩き回るのが一般的で、そのために多くの労力を割かねばならなかった。
 そこで、小山氏らは“いつでも低価格でPCを販売する”ことを目指し、「PCボンバー」を開店したのである。
 「PCボンバー」は開店から現在に至るまで、リアル店舗での販売とインターネット通販を並行して実施している。当初は、リアル店舗での売り上げが大きかったが、比較的早い段階でインターネット通販の売り上げがリアル店舗を上回り、現状では売り上げの約90%がインターネット通販によるものとなっている。
 取扱商品は、当初、PCが中心であったが、その後、デジタルカメラ、液晶TV、DVDレコーダーなどに拡大した。ただし、在庫を極力減らし、回転率を上げるために、ラインナップは各分野の売れ筋商品に特化しており、総アイテム数は1,000~1,500アイテムにとどまっている。液晶TV、DVDレコーダーなどの情報家電製品が約30%、PCが20%、デジタルカメラが20%弱、その他が30%強といった構成だ。なお、取扱商品の中心は新品であるが、一部、中古品や新古品なども取り扱っている。
 通信販売における利用媒体はインターネットのみ。そのほかの媒体はコスト的に合わないという判断から採用していない。
 配送については宅配便を利用。設置サービスなどは行っていなかったが、現在準備段階に入っているとのこと。代金決済は前払いの銀行振り込み・コンビニ支払い、インターネット銀行口座決済、代金引換となっている。クレジットカード決済については以前、自社カードとして発行した「ボンバーカード」があったが、手数料がほかの決済手段と比べて割高だったため、現在は取り扱っていない。
 返品・交換は、購入後1週間以内で、初期不良の場合に限り受け付けている。保証については基本的にメーカー保証で対応しているが、購入代金の5%を支払うことで、同社独自の3年間の延長保証(メーカー保証に2年間の独自保証をプラス)を付けることも可能だ。

価格比較サイト上で“最安値”にこだわって知名度をアップ

 同社のインターネット通販における最大の特徴は、価格比較サイトを最大限に活用して、“低価格”を訴求していることだ。
 「PCボンバー」の開店当時は、価格比較サイトの黎明期で、価格に敏感なユーザーによる活用が一般化しつつあった。また、同社が手掛けるPC、デジタルカメラ、情報家電製品などは基本的に大手メーカーの製品であり、ハードとしての信頼性は担保されていることから、当然のことながら、同一機種であればより低価格で購入したいというユーザーの比率が高かった。そこで同社では、価格比較サイトで“最安値”の地位を維持することにより、知名度をアップし、「PCボンバー」=低価格というイメージを確立することを狙ったのである。
 同社ではその実現のために、メーカーからの直接仕入れのほか、現金卸問屋などからの仕入れも行うなど複数の仕入れルートを活用し、常に“最安値”を実現できる商品を確保している。さらに、同一機種の他社の販売価格動向なども常にチェックして、機動的な販売価格の修正も行っている。
 このような取り組みの結果、近年では、ユーザーの約80%が価格比較サイト経由となっており、年々ユーザー数が増加している。それに伴って売り上げも年々拡大。2007年度に約128億円であった年間売上高は2008年度には約168億円となり、2009年度では240億円に達する見込みだ。

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最安値にこだわり、価格比較サイトでは系列3店舗が日常的に上位3位を独占

中古品の買い取りやレンタルサービスなども実施

 前述の通り、現在、同社の売り上げの約90%がインターネット通販によるものだが、同社では店舗販売を中止する意向はない。それは、店舗を構えていることがユーザーの安心感につながり、インターネット通販に伴う不安を払拭する効果があると考えているからだ。
 例えば、購入した製品の使い方がわからない場合など、メーカーに問い合わせても、なかなか電話がつながらないといったケースは少なくない。そのような場合に気軽に問い合わせができる店舗を用意しておくことで、低価格でありながら安心してショッピングをしてもらえる環境を整えておこうというわけだ。
 同社では、このような姿勢を明確にするため、通販サイトも、各リアル店舗が運営するかたちとしており、本店が運営する「PCボンバー」のほか、「大阪ボンバー」「仙台ボンバー」「博多ボンバー」が並立している。そして、実際の仕入れや価格設定、サイトの更新なども各店舗のスタッフが行い、直営店舗間でも競争することで、ユーザーにより喜ばれるショップを目指している。
 同社では売り上げの約90%が新規ユーザーによるものとなっており、リピーターによる売り上げが10%程度にとどまっている。これは、耐久消費財中心の商品構成であることから、ある程度止むを得ないことといえるが、同社ではこの状況に満足することなく、各店舗から週1回ペースで配信しているメールマガジンでニーズの喚起を行うほか、中古品の買い取りやレンタルサービスなども展開することで、ユーザーとの結び付き強化を図っている。中古品の買い取りについては、東京・秋葉原のリアル店舗「PCボンバーRe☆Birth(リ・バース)」(現在、秋葉原の店舗は一時的に閉鎖し本店にて稼動中)のほか、インターネット上にも専門サイトを開設。一方、レンタルサービスについては、一眼レフデジタルカメラ、デジタルビデオなどを対象に、インターネット上の専門サイト「レンタルボンバー」をベースとして、配送または店頭渡しによるサービスを展開している。特にレンタルサービスに関しては、サービス開始から間もないながら好評を博しており、「レンタルで試した機種を購入する」といったユーザーも徐々に増えつつあるということだ。
 そのほか、今後の課題としては、通販サイトのユーザービリティ向上が挙げられている。同社ではこれまで販売コストを極小化するという観点から、サイトづくりについては、最低限「型番・スペックと価格が確認できればよい」という姿勢であったが、今後はユーザーの見やすさなどにも配慮し、より買いやすい“売り場”を実現していく方針だ。また、現状実施している独自の「3年保証」を「5年保証」とすることや、レコメンド・エンジンを導入することなども検討しており、これらの取り組みによって、固定ファンを増やし、さらなる業容拡大を図っていく意向である。


月刊『アイ・エム・プレス』2010年3月号の記事