ケータイサイトを軸にしたクロスメディアで“ランチパック”ブランド認知向上に成功

山崎製パン(株)

国内最大手の製パン会社である山崎製パン(株)は、同社のロングセラー商品「ランチパック」のラインナップを拡充したことに伴い、同商品のブランドを醸成するためのPCサイト「ランチパック・スペシャル・サイト」を開設した。2008年8月からはケータイサイトも開設し、これを軸にしたプロモーションを展開している。

ロングセラー商品「ランチパック」のブランド認知向上のためのサイトを開設

 日本最大手の製パン会社である山崎製パン(株)は、パン、和菓子、洋菓子、菓子パン、調理パンに加え、食をテーマにバリエーション豊かな製品群を提供するメーカーであり、日本を代表するナショナルブランドとして知られている。
 同社を代表する菓子パンのひとつに「ランチパック」がある。同商品は1984年に発売、2009年には25周年を迎え、年間400億円を売り上げるロングセラー商品として多くの生活者に愛されている。ランチパックは食パンに具材を密封してサンドイッチにしたシンプルな作りであるため、パン本来の味わいが問われる商品でもある。そこで、同社独自の製法で作られた特製食パンを使うことで、具材が食パンに染み込むのを防ぎながらも“ふわふわ”と“しっとり”の食感を実現。その絶妙な味わいが支持されて、同社を代表する商品のひとつとなっている。
 発売当初は「青りんご」「ピーナッツ」「小倉」「ヨーグルト」の4種類の具材でスタート。現在では、全国で常時50品目以上がラインナップされている。2002年には同社独自の食パンのスライス技術が開発されたことで、ランチパックの保湿性と食感がさらに向上。食パンの保湿性が高まれば、具材の水分がパンに染み込むのを抑えられることから、パンに挟む具材の種類を大幅に増やすことが可能になった。
 同社はこれを機に、携帯性に優れ“中食”などの食習慣の変化にもマッチする同商品の魅力を改めてアピールするため、PCサイト「ランチパック・スペシャル・サイト」を開設し、新たなプロモーション展開に乗り出した。

若年層の固定客開拓を狙ったケータイサイトを開設

 ランチパックは鮮度を保つため、パッケージにより密封加工がされており、通常のサンドイッチと違って常温保存が利き、また食べている時に具材がこぼれにくく携帯性に優れているなどの特長がある。
 以前はスイーツ系の品揃えが多かったが、前述の理由から惣菜系を充実させたことで、サンドイッチやおにぎりを購入している客層をターゲットに取り込むための第一歩として、ブランドの認知、醸成が必要と判断。同社によると、PCサイト開設当時の「ランチパック」ブランド名の認知率は同商品購入者の約3割であったという。そのためパッケージ・デザインもブランド名が目立つように一新した。
 そして2008年8月からは、同商品の購買者が少ない10、20代へアピールするために、ケータイ専用サイト「モバイルサイト ランチパックCLUB」を開設した。同サイトの告知メディアとしては、商品パッケージ(裏面)に加え、店頭のポスター、PCサイトを利用。いずれもQRコードを用いて手軽にアクセスできるようにしている。また、出張するサラリーマンをターゲットにした、JR東日本(株)の車内誌『トランヴェール』や、(株)日本航空の機内誌『SKYWARD』などに出稿することで、潜在顧客へのアプローチも図っている。媒体ごとにQRコードを差し替えることで、効果測定を行っているが、商品パッケージからのアクセスが全体の半分以上を占めているとのことだ。
 ケータイサイトにはランチパックの製品情報のほか、会員限定のコンテンツとして、ゲームや壁紙のダウンロードサービス、投稿コーナー、ランチパックにまつわる裏話の紹介、サイト担当者がリアルタイムでアップする新製品情報などを掲載。また毎月配信するメルマガでは、会員の登録地域限定の新製品情報なども案内する。ケータイサイトの特性を生かしながら、ランチパックのコアなファンを見据えたサービスになっている。

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ランチパックのパッケージ・デザインも変更。新デザイン(写真上)では、ブランド名が以前に比べて目につきやくなった。

ケータイサイト開設の効果

 ケータイサイトの開設から1年余りがたち、同サイトの会員数は1万6,000人を超えた。属性は10、20代が半数以上を占め、性別では女性が75%。1日当たりのページビュー数は6,000~8,000PVに達する。
 当初の狙い通り、ケータイサイトの開設によって、スーパーよりコンビニを利用する機会が多い若年層、中でも女性にアプローチすることに成功し、購買層を広げることができたと同社は認識している。
 また、ケータイサイトを運営することでランチパックのプロモーションもしやすくなったという。これまでは、同商品が常時約50品目、毎月10品目弱の新しい具材が開発される中で、各店頭には限られた種類しか置けないため、新商品情報を伝えにくい実情があったからだ。
 2009年9月には、同商品のサンプリングとグループ・インタビューを実施。ケータイサイトで会員を対象に参加者を募ったところ、約30名の募集に全国から10倍以上の応募が集まるなど、ケータイサイトの活用によって、顧客ニーズの収集・開拓も可能になったという。
 また同社では、ケータイサイトのコンテンツをネタにした書き込みなどが、コミュニティーサイト、ブログへと波及していると認識。これは同商品のパッケージに描かれているブランド・キャラクターのデザインが品目ごとにすべて異なるなど、パッケージ・コレクターや新商品を探し求めるマニアの話題になりやすいという特性によるところも大きい。さらに、同商品の「富士宮やきそば」「阿蘇小国ジャージー牛乳入りダブルクリーム」などは、各地名産品を具材に使った地域発売品のため、SNS上などでの口コミを誘発したようだ。
 これらの取り組みが奏功して、現在では「ランチパック」のブランド認知は同商品購入者の9割を超えるまでに達した。販売チャネルは“駅ナカ”のコンビニを中心に拡大し、売上高も4、5年前に比べると年間100億円から現在は約400億円にまで成長。1日当たりでは100万個が販売されており、現在はどの媒体よりも商品のパッケージ自体がメディアとなってブランド認知が進んでいると同社は認識している。その傍証として、Webサイトにダイレクトにアクセスするユーザー数が増えていることや、同商品のパッケージを活用したコラボレーション企画が増えていることなどが挙げられるという。
 今後の課題としては、約50品目におよぶランチパックの販売店情報をサイト上で楽しく交換できるシステムの提供を考えている。
 また新たな方向性として、今後は割引クーポンやグッズ・プレゼントなど、販促やインセンティブにつながる企画、コラボレーション企画などにより、さらなるファン層の裾野の拡大を見据えている。
 なお、同社では、同商品にかかわるケータイ・プロモーションの成功を受けて、新しい試みとして2010年には30周年となる同社恒例のキャンペーン“春のパンまつり”の告知を1月下旬からケータイサイトでも行い、若年層の参加率向上を目指す。


月刊『アイ・エム・プレス』2010年1月号の記事