約1,000万人を対象にセグメントされたリコメンドメールを配信

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)では、同社が運営する共通ポイントサービス「Tポイント」が貯まるTカードを保有する会員を対象にリコメンド事業を開始した。そのひとつとしてeメール配信が可能な約1,000万人の会員へのeメールマーケティングがある。セグメント性の高いeメールを発信することでeメールマーケティングの効率を高めるとともに、Tポイント事業におけるアライアンス企業店頭への未訪問客の送客などにも役立てていく考えだ。

ケータイへのリコメンドメールを中心とするリコメンド事業を開始

 DVD、CD、書籍、ゲームのレンタル・販売店最大手「TSUTAYA」の全国フランチャイズ展開を行うTSUTAYA事業のほか、バラエティに富んだエンターテインメント情報をPCやケータイ向けに発信するとともに、オンラインショッピングやオンラインクーポンなども提供する「TSUTAYA online」事業、TSUTAYAおよび提携先で利用できる共通ポイントサービス「Tポイント」を軸としたアライアンス・コンサルティング事業などを展開する企画会社カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)。
 同社では2009年10月末現在、約3,365万人のT会員の中で、eメールアドレスの登録があり、かつパーミッションの取れている会員約1,000万人を対象とするリコメンド事業を開始した。
 これは、会員の属性や利用データなどに基づいたセグメント性の高いeメールを発信することでメールマーケティングの効率を高めるとともに、62社に及ぶTSUTAYA以外のTポイントアライアンス企業店頭への未訪問客の送客にも役立てることで、アライアンス・コンサルティング事業の収益向上と新たなメール配信料収入の獲得を目指すもの。当面はeメール中心の展開となるが、将来的には紙DMやレジで発行するPOSクーポンなどとの連携も図っていく意向だ。
 同社がリコメンド事業を開始した背景には、マスメディアやインターネット上などにさまざまなエンターテインメント情報が氾濫する中で、多くの生活者が購買・レンタルするDVD、CD、書籍、ゲームなどの選択に迷っているのではないかという認識がある。実際に同社が2009年10月にネットリサーチ会社を通じて行った調査でも、多くの生活者が家族・友人からの勧め、趣味・嗜好が合う人からの勧めなどを参考にしていることがわかっており、これらに類するものとしてリコメンドメールが有効であると判断したのである。
 このリコメンドメールを活用すれば、例えば同じ新作DVDを紹介するにしても、ハリウッド大作などのメジャータイトルに関して全体的に案内するのではなく、ミニシアター上映作品などのミドルタイトルについて、過去の利用状況をベースにセグメントを行い、利用確率が高いと思われる会員のみに特典付きのオファーを行うなど、きめ細かい対応も可能となる。さらにこのロジックをアライアンス企業のビジネスにも活用すれば、Tポイントをベースとしたマーケティング施策の効果を押し上げることにつなげられるというのが同社の考えだ。

事業開始に先立ち全社的な編成・編集体制を構築

 同事業の開始に当たっては、2007年10月から準備を開始。まずは「TSUTAYA online」上で新しいサービスを告知するお知らせeメールなどを通じて約1,000万人からリコメンドメール送信のパーミッションを獲得した。ちなみに送信先の約7割はケータイアドレスであり、特に女性ではケータイアドレスの比率が高いとのことだ。
 パーミッション獲得と同時に進めたのが、全社的な編成・編集体制の構築である。同社では、多彩な事業を展開しており、リコメンド事業の対象となるT会員はいわばグループ共有の財産だ。しかし、各事業の企業・担当部署が個別にeメールの発信を行っていては、ひとりの会員に多数のeメールが集中し、結果として会員の同社に対するロイヤルティを低下させることにもなりかねない。そこで同社では、「届けるべき情報を、届けるべきタイミングで、届けるべき人に」届けることを目的に、2009年10月に情報編集準備室を立ち上げ、eメール配信に関するルールづくりを行うとともに、同室を中心に全社レベルでの編成会議を定期的に開催、情報発信の優先順位などを決定していく体制を整えた。この新体制の構築により、過剰なeメール配信によるロイヤルティ低下を防いでいる。

Push型マーケティングとPull型マーケティングの融合による効果の最大化を目指す

 リコメンドメールの送信はいわばPush型のマーケティングであるが、同社ではこれにPull型のマーケティングも融合していくことで、その効果の最大化を図ることを目指している。その中で大きなテーマとなっているのが、Tカード事業のポータルサイトとして、PCとケータイを通じてTカードのポイントであるTポイントの獲得・利用履歴照会や提携ポイントプログラムとのポイント交換などのコンテンツを提供している「Tサイト」のさらなる充実化だ。さらなるCGMサービスを拡充することで、T会員のサイトへの来訪意欲の喚起を図ることを検討している。

リコメンドメール送信対象会員の増加が課題

 同社のリコメンド事業における今後の課題としては、リコメンドメール送信対象会員の増加が挙げられている。
 前述の通り、3,365万人のT会員の中で、現状、リコメンドメールの送信対象となっているのは、約1,000万人である。同社ではT会員の大半はケータイを所有し、ケータイメールも活用しているはずという認識から、これをなるべく早期に3,000万人規模にまで拡大したい意向。最近ではTSUTAYAだけでなくTポイントアライアンス企業店頭での新規会員獲得ペースも伸長していることから、さらなる会員数伸長に向けた体制を目指していきたい考えだ。

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ケータイに届くセグメントされたリコメンドメールの数々。

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ケータイ専用サイト「T‐SITE MOBILE」


月刊『アイ・エム・プレス』2010年1月号の記事