すべての顧客をカバーするフィールドセールスからより顧客の要望にこたえる集中的なセールスに

アールエスコンポーネンツ(株)

「工業用部品のカタログ販売ディストリビューター」として、多品種少量の品ぞろえと迅速な部品調達を可能にし、エンジニアのニーズにこたえているアールエスコンポーネンツ(株)。データマネジメントチームが行う顧客分析に基づき、セールス部門とマーケティング部門では顧客グループごとに最適な施策を展開している。

基本サービスときめ細やかなサポート体制でマーケットのニーズに対応

 1937年、英国での創業以来、世界160以上の国や地域で電子部品や半導体などの工業用部品を提供してきたアールエスコンポーネンツ。その日本法人であるアールエスコンポーネンツ(株)は、1999年3月の事業開始以来、「商品を常時在庫する」「注文は部品1つから受け付ける」「18時までの注文は翌日に届ける」という3つの基本サービスに加え、世界標準の部品を幅広く取り扱う、高い品質を維持する、きめ細やかなテクニカルサポートを提供する、といったサポート体制を整え、エンジニアを支えるプロ集団として他社にない価値の提供を目指している。
 研究開発や試作、保守・修理の分野における部品供給という、それまでになかった新しいマーケットを開拓した同社では、「工業用部品のカタログ販売ディストリビューター」として、多品種少量の品ぞろえと迅速な部品調達を実現する即納システムにより独自のビジネスモデルを構築し、エンジニアのニーズにこたえることで着実に事業を拡大してきた。
 同社が常時在庫している商品数は約11万点。これらは注文からタイムリーな情報収集まで、エンジニアが必要とする機能を備えたトレーディングサイト「RSオンライン」で紹介されている。
 また、11万点のうちの約7万8,000点を年1回発行する「RS総合カタログ」に掲載。もしも日本語版RS総合カタログやRSオンラインで目当ての商品が見つからない場合は、系列のグループ各社が取り扱う商品を取り寄せることも可能だ。
 ちなみに、RSグループ全体の取扱商品数は約50万点。すべての情報はグローバル版RSオンラインで見ることができる。

顧客セグメントにより施策の最適化を実現

 RSグループでは、2009年4月に組織を改編した。これにより、同社のマーケティングや物流などの部門はアジアパシフィック、セールスとカスタマーサービスの部門は現地で統括することとなったが、組織改編後も以前と変わらず地域に密着したセールス活動を行っている。
 具体的には、大きく既存顧客と新規顧客(ファーストタイムパーチェサー)に分けてアプローチ。既存の顧客にはセールスフォースが、新規の顧客には内勤のニュービジネスチームが対応を担っている。
 また、セールスパーソンが訪問するだけでなく、電話とeメールでのサポートも行っている。電話では、過去に購入した商品と関連のある商品やキャンペーンを紹介。eメールでは、新商品の情報や同社のコミュニケーション誌「ELECTRONICS」から顧客に関連のある記事を紹介している。
 既存顧客へのセールス活動を行うに当たっては、セールス部門のデータマネジメントチームが購入履歴とポテンシャル(購入の可能性)を分析して既存顧客を4層にセグメント。各層に最適かつ費用対効果を踏まえた施策を行っている。
 新規顧客には、セールス部門のニュービジネスチームがフォロー。以下の3つのプログラムを展開している。
 ひとつ目は、4 in 4である。これはリピートオーダー促進プログラムで、新規顧客に対してアウトバウンド・コールを行い、4カ月以内に4回購入してもらうことを目標としている。
 2つ目は、顧客化プログラムである。カタログ請求や問い合わせがあったものの、まだ購入に至っていない見込客を初回購入に導くことを目的としている。
 そして3つ目は、商品やキャンペーンの紹介。具体的には、顧客ニーズを聞き取り、個々の顧客に応じた商品情報やキャンペーンをお知らせしている。
 上記の活動を評価する指標には、売り上げ、継続・休眠・流出の顧客数、平均購入頻度、平均購入金額といった定量データと、コールセンターやフィールドセールスの声、リサーチ結果といった定性データを用いている。
 なお、データマネジメントチームでは、セグメントを年に2回見直すことで、実態に即した施策の実施に努めている。

「ベル リング セレブレーション」で楽しくインバウンド・セールスを強化

 同社では、eメールはサービスの案内に主軸を置き、顧客に同社の業務内容やキャンペーンを知っていただくためのツールとして利用。一方、電話はeメールに対するレスポンスの受け皿としてはもちろんのこと、顧客のニーズや不満、顧客のビジネスの状況などのヒアリングに利用している。eメールで顧客に情報を伝えてレスポンスを獲得し、電話でフォロー。ニーズを理解し、必要な対応を迅速に行うことによって顧客満足を高め、最終的に売り上げにつなげているのだ。
 電話の活用においては、アウトバウンド・コールだけではなく、顧客からの問い合わせに応じて最適な商品をお勧めするインバウンド・セールスも展開している。スタッフのモチベーション・アップと売り上げに対する意識を高めるために、同社では2009年6月から「ベル リング セレブレーション」を導入した。これは、10万円以上の受注があった際に、カスタマーサービス・スタッフがハンドベルを使って社内に知らせ、他部門スタッフはそれにこたえ拍手をすることで喜びを共有するもの。さらに、受注金額が100万円を超えた場合はフロアを一周し、社内全体で喜びを共有している。当初は、会社でベルを鳴らすことに抵抗感があるためか消極的な社員もいたが、次第に楽しみながらできるようになり、今では前向きにクロスセルやアップセルのインバウンド・セールスを行えているという。
 日本で事業をスタートして以来、順調に売り上げを拡大してきた同社だが、昨年は米国の金融不況に端を発した世界的な不況の影響を受け、初めて売上高が前年を下回った。しかし、組織改編以降、顧客別に展開しているセールス活動やインバウンド・セールスの効果も現れ始めている。同社では、継続して顧客分析に基づくセールス活動に注力することで、セールス活動の精度をアップ。今年の売り上げを2007年ベースに引き上げることを目指している。
 また今後は、新たな施策としてRSオンライン上で顧客のニーズを分析し、顧客ごとに興味のありそうな情報を選択して表示するレコメンデーション・サービスの仕組みを構築していく意向である。

0912c1

楽しみながらモチベーションが高まる「ベル リング セレブレーション」の様子。目標に達するとベルを鳴らし、みんなで拍手


月刊『アイ・エム・プレス』2009年12月号の記事