FAQシステムの充実でより円滑な対応を目指す

(株)WOWOWコミュニケーションズ

(株)WOWOWコミュニケーションズが運営する「WOWOWカスタマーセンター」では、コール全体の10~20%程度のイレギュラーな内容のコールに対応する「辞書」のような位置付けでFAQシステムを運用。さらに、その作成過程で構築されるデータベースを、プロモーション施策の検討材料などとしても活用している。

3拠点500席弱の体制で年間約250万件にも及ぶコールに対応

 BS(放送衛星)放送を中心に、CS(通信衛星)放送、CATV(ケーブルテレビ)などさまざまな伝送路で有料テレビ放送サービスを展開する(株)WOWOW。同社では1990年11月のサービス(無料)放送開始とともに「視聴者サービスセンター」を開設。コンタクトセンターの運営を開始した。1991年4月の本放送開始を経て、同年10月に「加入システムセンター」を、翌1992年2月に「加入受付センター」をそれぞれ開設。同年7月にはこの2センターを統合し、さらに1993年10月に「視聴者サービスセンター」も統合することで、現在の「WOWOWカスタマーセンター」をスタートさせた。その後、1998年2月、WOWOWカスタマーセンターの担当組織を独立させ、コンタクトセンターの運営受託などを行う(株)WOWOWコミュニケーションズを設立した。今回はWOWOWカスタマーセンターの運営を中心的に担っている、WOWOWコミュニケーションズにFAQシステムの活用実態を聞いた。
 2009年5月現在、WOWOWカスタマーセンターは総席数235席の横浜センターを中心に、同110席の札幌センター、同135席の沖縄センターの3拠点で運営されているが、各拠点間はIP網でリンクされており、一体運営がなされている状況だ。コミュニケーター数は3センター合計で約600名であり、Div長、Unit長の下、スーパーバイザー(SV)が15名前後のコミュニケーターを管理・運営するかたちが採られている。
 年間対応件数は、電話が約250万件、eメールが約5万件。年間ベースでは3~4月の引越しシーズンや、夏・冬のボーナス商戦期、月間ベースでは月末の番組案内送付後などが、コールが集中するピーク時期となっている。なお、同センターの開設時間は基本的に9時から20時(一部業務は21時まで)であるが、その中では、「9~10時」「13時過ぎ」「19時前後」などのコールが多くなっている。
 業務内容は「加入申込」「テクニカルサポート」「料金・請求案内/対応」「変更・移行・追加受付」などが中心。基本的にはインバウンド業務が多いが、営業戦略に応じて、プレディクティブ・ダイヤラーによるアウトバウンド・コールも随時実施している。

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明るく機能的なセンター内

イレギュラーな内容のコールに対応する「辞書」

 同センターのFAQシステムはCRMシステム上で稼動しており、コミュニケーターがキーワードを入力すると関連する情報が表示される。情報はツリー形式で表示され、クリックしていくことで、必要とする情報にたどり着けるかたちだ。
 同センターに寄せられるコールの80~90%程度は同一傾向、またはそれらを組み合わせた内容であり、これらについては、十分な研修を行うことにより、コミュニケーターが特にサポートを受けることなく対応することが可能である。しかし、残りの10~20%程度はイレギュラーな内容であり、これらについて研修で対応しようとすれば、必要な時間・費用と効果のバランスが取れない。同センターではこのような認識から、いわばこの10~20%程度のイレギュラーな内容のコールに対応する「辞書」のような位置付けでFAQシステムを活用している。特に経験が浅いコミュニケーターにおいては、自分が的確な対応を行っているかを確認するツールとしての意味合いも強いようだ。
 また、FAQシステムを構築することは、顧客動向分析にも役立っている。同社では顧客データベースを中心とするCRMシステムを運用しており、「どのような属性の顧客が、どのような番組を視聴している」といったデータを蓄積し、分析・活用している。しかし、特に加入前の見込客については情報量が少ないため、FAQシステム構築の過程で蓄積される問い合わせ内容のデータベースは、プロモーション施策の検討材料として大きな役割を果たしている。さらに、このデータベースにより、十分な問い合わせ対応が実現しているかも検証できるため、センター・オペレーション自体の改善にも役立っているようだ。
 なお、WOWOWカスタマーセンターでは、FAQシステムを含むCRMシステムについて、2008年10月に全面的なリニューアルを行った。その主な目的はセンター運用のさらなる効率化である。
 新システムでは、システムのインターフェースを大幅に変更した。新システム導入の効果として、特に経験の浅いコミュニケーターを中心に、1コール当たりの処理時間は短縮傾向にあり、センター運営コストの軽減に寄与していることが挙げられる。また、比較的容易にシステムのマイナーチェンジを行うことも可能となっており、システム担当者の負担を減らしつつ、機動的に業務の状況に合わせたシステムを構築することができるようになった。同時にFAQシステムについても、従来はSVがコミュニケーターに対して行ったサポート内容を記録し、それらの中で重複する内容をピックアップしてQ&Aとしてセットするかたちであったが、これらの作業を自動的に行えるようにしている。
 なお、CRMシステムは従来、カスタマーセンターの運営を担当するWOWOWコミュニケーションズが管理・運用するかたちであったが、リニューアルに当たっては、ビジネス全体へのより一層の活用強化を目指し、管理・運用主体がWOWOW本体に移行されている。

FAQシステムの内容の一部は「オンラインカスタマーセンター」でも公開

 同センターでは、FAQシステムの内容についてその10~20%程度をWeb上の「オンラインカスタマーセンター」でも公開し、ユーザーの自己解決の一助としているが、現状、その移行作業は人手を介して行っている。この点については将来的にシステム上で行えるようにしていく考えであり、リニューアルしたCRMシステムが落ち着き、また、WOWOWが提供するサービスがアナログからデジタルへ完全移行する2011年ごろをメドに検討を行っていく意向である。
 また、CRMシステムについても、今後さらにブラッシュアップしていく方針だ。実際に操作を行うコミュニケーターやSVの意見を生かして、より使い勝手のよいシステムにしていくとともに、例えば現状、世帯主を中心とした契約者単位で管理している問い合わせ内容について、契約者とは異なるケースも多い実際の問い合わせ者ベースで管理できるようにするなど、蓄積したデータベースに基づく分析をより精緻なものにできるよう検討を重ねていく。そして将来的には、プロモーションにおけるアクションプランごとの効果期待値に対する予測レベルを、さらに向上していくことを目指す考えである。

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お客さまから寄せられた感謝状の数々


月刊『アイ・エム・プレス』2009年7月号の記事