組合員参画型商品開発により、生協ブランドへのロイヤルティ向上を目指す

パルシステム生活協同組合連合会

1都8県にある10の生協から構成されるパルシステムは組合員による生活者参加型商品開発を手掛けており、2005年12月にはインターネットを活用した「商品開発オンラインモニター」を立ち上げた。しかし、モニタリングから1品目を開発するまでに要する期間が1年弱も掛かることから、短期間で商品開発ができる制度の改善に着手。これにより、より多くの組合員が開発に参加できるようになった。

組合員と生協との関係性を強化する商品開発オンラインモニター制度

 パルシステム生活協同組合連合会は、首都圏を中心とする1都8県にある10の生協から構成されるグループで、「安全で安心な商品」を「ご自宅までお届け」することを中心に、健康、環境、住宅など、生協の組合員と生産者がともに喜びを分かち合える商品とサービスの開発・拡充を目的にしている。登録世帯数は約100万世帯。当初は個人宅配の名称として「パルシステム」を起用したが、現在は個人宅配にとどまらず、暮らしに対する取り組みや事業全体を包含したブランドとして位置付けられている。
 パルシステムでは「サポーターグループ」と「商品開発オンラインモニター」の2つの仕組みにより、組合員参加型商品開発を手掛けている。サポーターグループは1998年に設置した6~15名の生協組合員で構成するグループで、月1回定期的に集まり、商品化に向けての提案などを行っている。
 一方、2005年に立ち上げた商品開発オンラインモニターは、インターネットを活用した意見集約型モニター制度で、500~1,000人規模で意見を収集し、アンケートなどを行って商品開発に生かしている。これまで、商品開発オンラインモニターなど組合員参加によって開発された商品は「シーフードミックス」「ボロニアソーセージスライス」など計10アイテム以上に及ぶ。
 同連合会では2001年より、インターネットによる登録・受注を中心としたシステム「オンラインパル」の運営をスタート、インターネット事業の企画や運営を担う同連合会の子会社、(株)コープネクストを設立した。同連合会では、専門会社であるコープネクストを通じて、インターネットの特性を生かしたコミュニケーションによる組合員とのより良い関係の構築と、組合員の満足度向上に取り組みはじめたわけである。

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簡単な手続きでインターネットによる発注、商品検索などが可能なシステム「オンラインパル」のWebサイト

食材の使い方を啓蒙する副次的効果も視野に

 商品開発オンラインモニターは、連合会商品部、情報システム部などの参加によるプロジェクトとして2005年度に始まった。主な目的は3点で、「多くの組合員の意見を生かすことで、組合員ニーズにより適合した商品を作る」「参加する組合員の満足度やロイヤルティの向上を図る」「商品開発の経過を商品やパルシステムのプロモーションに生かす」こと。インターネットを活用することで、モニター募集、連絡、アンケート実施、集計、結果報告などの効率化を図ることが可能になった。
 商品開発事例として、2006年度に開発した「シーフードミックス」の商品販売までのフローを紹介すると、①2005年12月に事前市場調査を各種シーフードミックス購入者を対象に実施し、商品コンセプトを決定、②2006年2月、商品開発モニター約700名を募集、③同年3月、シーフードミックスの試作品2種をモニターに配布、④試食後、第1回のアンケートを実施、⑤第1回アンケートの回答を分析し、試作品を改善、⑥第1回アンケートの回答の集計結果をモニターにグラフなどで公開、⑦同年5月、改善したシーフードミックスの試作品を配布、併せて第2回のアンケートを実施、⑧同年8月、商品の名称を決めるために第3回アンケートを実施、⑨同年11月、新商品発売に合わせてモニターに告知、という流れになる。
 第1回のアンケートは735名のモニターに対して回答数は707件、回答率は96%という結果になり、参加組合員のモチベーションの高さが証明された。また、これを通して、①エビの配合比は50%のサンプルが好評、②イカのカットは「2cm×3cm」のサンプルが好評、というアンケート結果が得られたという。
 なお、同製品は2006年11月に「えびが自慢のシーフードミックス」として発売。しかし、価格帯がアンケートに基づく組合員の要望よりやや高くなったこともあり、売り上げはほかのシーフードミックスと比較すると必ずしも多くはない。
 同連合会はこれまでの商品開発事例を踏まえた課題として、商品販売に至るまでに要する期間が1年弱に及ぶことを挙げている。そのため商品開発モニターの目的のひとつである、「多くの組合員の意見を生かすことで組合員ニーズにより適合した商品を作る」という点において、改善の余地があると判断。新たな試みとして2008年11月から、従来の商品開発までのフローの一部を短縮し、最初の段階から商品開発のベースとなる試作品の販売をインターネットで行う手法を採用した。これは組合員が試作品を購入することで自動的にモニターにエントリーし、アンケートに回答する仕組み。同連合会にとっては試作品を実際に購入してもらうことで、厳しい意見を収集する狙いがある。今後は従来の生活者参加型の商品開発と並行してこれを推進していく意向だ。
 現在は第1弾として、「青大豆みそ」の試作品モニター2,000名を募集し、2009年初頭の発売を目指して進行中。今回の商品開発期間を短縮する試みが軌道に乗れば、年間10品目以上の商品開発が可能になるとのことで、開発品目の増加に伴ってモニターとして参加する組合員数が大幅に増えると見込んでいる。
 また、「商品開発の経過を商品やパルシステムのプロモーションに生かす」面においては、アピールしなければ売れにくい商品を取り上げることで、関心と理解を促すことを狙っている。例えば、冷凍のサトイモは皮をむく工程で全体の約4割を捨てることになるが、実際は約2割の皮を冷凍前にむき、あとはむき残りを家庭で処理すれば調理できる。こうしたコンセプトの商品開発に多くの組合員に参画してもらうことで、食材そのものに関する知識を浸透させると同時に、プロセスを機関紙などに掲載して食材の使い方を啓蒙するという副次的効果も視野に入れている。

生協活動参加意欲の活性化とロイヤルティの高まりを評価

 コープネクストでは、今後の課題としてモニターから収集、集約した意見をいかに商品開発のニーズと結び付けていくのかが重要と認識。モニターの意見を管理するノウハウを積み重ねていく真摯な取り組みを継続させるという。組合員参加型の開発商品ということが、まだ直接的な供給高には帰結していないものの、「自分の意見が商品開発に生かされた」「生協らしい商品開発姿勢を見直した」など、組合員の生協活動への参加意欲の活性化とロイヤルティの向上に寄与したことを評価。さらに、「食材や商品、料理法を見直す機会になった」「家族で話し合うきっかけになった」など、家族の食育意識を高めるきっかけになったことも取り組みに対する自信につながったようだ。
 今後は、手間を掛けながら開発する商品と、開発までの期間を短縮させる商品を並行して開発し、年間10品目以上の開発を目指す。自発参画型ともいえる今回のモニター募集の手法は、モニター数が増大しても供給側の手間はそれほど変わらないことから、モニター参加者数を2,000人から1万人単位にまで増加させていく意向だ。また、生協の伝統として培われてきた生活者参加型の理念の浸透を図り、パルシステムの全プライベートブランドを商品開発モニターによって作るところまでもっていく理想を描いている。


月刊『アイ・エム・プレス』2009年1月号の記事