1990年5月、神奈川県相模原市の住宅街に「BOOKOFF」1号店をオープンしたブックオフコーポレーション(株)。その斬新なコンセプトは多くのユーザーに歓迎され、現在では日本全国に900店舗を展開するまでに至っている。「BOOKOFF」のリユース事業における最大の特徴は、店舗を軸に“世界最速のサプライチェーン”を実現していること。今後は「捨てない人のブックオフ」という新たなコンセプトの下、モノを大切にするエコ文化を普及し、循環型社会に貢献する企業としてのポジションを確立していく意向だ。
従来の古書店とは異なるコンセプトの“リユース書店”
1990年5月、神奈川県相模原市の住宅街に1号店をオープンした「BOOKOFF」。同店のコンセプトは従来の古書店とは大きく異なっていた。
まず、従来の古書店では、買い取りは店主をはじめとする店員の“目利き”により行われ、内容により買い取り価格が左右されていた。これがチェーン展開を妨げていたのだが、BOOKOFFではマニュアル化を徹底することにより、書籍の内容を問わず、状態のみを確認することで、誰でも買い取りが行える仕組みを構築した。また店構えにおいても、薄暗く女性が入りづらい印象がある従来の古書店とは異なり、女性が夜に1人でも入店しやすい明るい印象を演出している。
このような新しいコンセプトで書籍のリユースに取り組む「BOOKOFF」は多くのユーザーに受け入れられ、その後、急速に多店舗化。2008年7月末現在、日本全国に900店舗(フランチャイズ店を含む)を展開するまでに至っている。
なお、「BOOKOFF」を展開するブックオフコーポレーション(株)では、リユースの対象を書籍以外にも拡大。「BOOKOFF」でCD・DVD・ゲームソフトなども取り扱うほか、「B・KIDS」「B・SPORTS」「B・STYLE」「B・LIFE」など新たな業態を次々に開発し、ベビー用品・子供服、スポーツ・アウトドア用品、婦人服・ファッション小物、インテリア・雑貨・ギフト商品など、幅広い分野でのリユース事業に取り組んでいる。
各店舗での“自給自足”が基本
「BOOKOFF」における買い取りには、「店頭」「宅本便」「出張買い取り」という3つの経路がある。
中心は、各店舗に持ち込まれる書籍、CD・DVD・ゲームソフトをその場で買い取る「店頭」であり、全体の90%程度を占めている。そのほか、インターネットで申し込みを受け付け、宅配便での引き取り(無料)を行う「宅本便」が約6%、全国18カ所の出張買取センター(店舗内に設置)が引き取りを行う「出張買い取り」が約4%となっている。代金の支払い方法は、「宅本便」では指定口座に振り込み、「出張買い取り」では指定口座に振り込むか、引き取りを行った出張買取センターのある店舗で直接支払う仕組みだ。
書籍の査定においては、まずサイズを確認。さらにハードカバー、文庫、コミックスなどに分類し、日焼けや表紙の破れ、書き込みがないかなど、再販売が可能な状態かどうかを判定する。査定価格は再販売時の価格が最低レベルの105円の場合で10円。それより状態の良いものには、マニュアルに従い定価の半値程度の再販売価格を設定し、査定価格は状態に応じてランク分けしたうえで決定する。また、CD・DVD・ゲームソフトについては、アイテムごとにデータベース化しており、検品後、このデータベースをもとに買い取り価格を決定している。ちなみに売り上げに対する仕入れ(買取価格)の比率は金額ベースで約33%になっているとのことだ。
買い取った書籍は、カバーを外して側面(3面)を研磨。さらに特殊な洗浄液でカバーの汚れを拭き取り、値付けして店頭に陳列している。また、CD・DVDも小さな傷は研磨によりリフレッシュして陳列している(修復不能な大きな傷がある場合は買い取り対象外となる)。
「BOOKOFF」では、店舗レベルでの“自給自足”が原則となっており、各店舗での販売商品の大半はその店舗での買い取り商品となっている。特に書籍においては地域性によってコミックの比重が高かったりビジネス書籍の需要が多かったりという傾向はあるが、売れるジャンルは買い取りに持ち込まれることも多くなるということで、いわば出店時点でマーチャンダイジングが確立しているという側面がある。つまり、店舗を軸に“世界最速のサプライチェーン”が確立しているのだ。しかし、店舗の立地条件によっては販売が買い取りを上回り、品不足傾向になりがちなことや、買い取り商品の2%前後が最終的に販売に至らず、回収業者に引き取られ古紙化されることなどから、従来から近隣店舗間で随時行っていた商品移動に加え、2007年末頃からは本部主導による商品移動を開始。全国レベルで各店舗の在庫を調整することで、より効率的な販売を行っている。
なお、販売については2007年8月にECサイト「ブックオフオンライン」を開設し、本格的なインターネット販売を開始。最近では月商平均1億2,000万円程度を上げており、売り場面積140坪、月商850万円前後の標準的な実店舗10店舗分以上を売り上げるまでに至っている。
モノを大切にするエコ文化の普及と循環型社会に貢献する企業として、新たなコンセプトを提示
共同ポイントカードシステム「Tカード」に参加
同社では従来から会員カードを発行していたが、本格的な顧客情報の管理・分析は行っていなかった。しかし、2007年10月に「TSUTAYA」をフランチャイズ展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループの(株)Tカード&マーケティングが運営する共同ポイントカードシステム「Tカード」に参加。同システムによる顧客情報管理・分析への着手を開始している。
この取り組みによってわかったのは、客層が20代男性中心に偏っているということ。特に高年齢層、女性のユーザーが少ない傾向にあった。しかし、書籍は老若男女あらゆる層で読まれているものであり、その意味では大きなチャンスロスが発生していることになる。そこで今後は、「Tカード」を通じた施策やTVCMでの訴求などを通じて、高年齢層、女性ユーザーの開拓にも取り組んでいく意向だ。なお、TVCMを中心とする広告宣伝では従来、認知度の向上と「元気で明るい」店舗イメージの訴求に努めてきたが、すでに知名度は97%に達しており、また店舗イメージも定着しつつあることから、2008年6月からは、モノを大切にする、捨てたくない人のためのインフラを目指し、循環型社会に貢献する企業として「捨てない人のブックオフ」という新たなコンセプトを提示、社内外に発信している。
複合型店舗やショッピングモール内店舗など集客面で有利な立地での店舗展開に注力
店舗についてはこれまで標準パッケージがなく、買い取りを容易にするという観点から路面店(テナント出店の場合は1F)を推奨するという以外は、立地条件に応じた規模・スタイルで出店してきた。今後も特に標準パッケージを設定する意向はないが、最近では、ユーザーの利便性向上を目指し、ワンストップ化に取り組んでいる。そのひとつのかたちが「BOOKOFF 中古劇場」である。
「BOOKOFF 中古劇場」は1,000坪レベルの売り場に同社グループが運営するリユース専門店を複合した大型施設。2008年8月現在15店舗を展開しており、今後も年間5店舗程度のペースでの出店を進めていく意向だ。なお、このほかイオングループが展開するショッピングモールへの出店なども進めており、今後はこれら集客面で有利な立地を中心として店舗展開を図っていく方針である。