お客さま視点で買い取り、販売の仕組みを構築 中古カメラ市場のシェアを拡大

(株)キタムラ  

1934年に高知県で創業し、現在「カメラのキタムラ」「カメラのきむら」などを展開する(株)キタムラ。同社では、2001年に「新宿中古買取センター」をオープンすると同時にWebサイトをリニューアルして、中古カメラ売買事業を本格的に開始した。当時、35億円だった売上高が、現在では60億円にまで成長。その裏には、お客さまの視点で作り上げた買い取り、販売の仕組みがあった。

新品と中古品の販売は対のビジネス

 あらゆるものがデジタル化される中で、カメラ市場は大きく様変わりした。現在、「カメラのキタムラ」「カメラのきむら」などを展開する(株)キタムラでは、こうした状況において市場の動向をいち早くとらえ、『デジカメ専門店』『プリント“超”専門店』の2本柱でデジタルのニーズに対応。“デジタル時代の写真生活提案企業”を目指している。
 すでに、カメラの主流はデジタルである。しかし、今でも1950年代、60年代のマニュアルカメラは根強い人気があり、高値で売買されている。カメラ業界では古くからある「下取り」「買い取り」のシステムによって中古カメラが流通しており、同社では、新品カメラと中古カメラの販売を合わせてカメラ事業と認識。メイン事業は新品カメラの販売とし、これに付随するかたちで、かねてより中古カメラ事業を行ってきた。
 同社が中古カメラ売買事業に注力し始めたのは、2000年に入ってから。デジタルカメラが主流になってもマニュアルカメラを愛用し続けるお客さまのニーズに応えていくことを目的に、2001年6月、「新宿中古買取センター」をオープンしたのである。続いて、札幌、大阪、福岡の3店舗内に買い取りセンターを設置。その後も拠点を拡大し、現在では全国に62の中古専門店を設けているほか、全国の「カメラのキタムラ」と「カメラのきむら」でも中古カメラの販売を担っている。
 また、「新宿中古買取センター」のオープンから2カ月後に、1998年より運営していた中古カメラ用Webサイトをリニューアルするかたちでnet-chuko.comを開設。旧サイトのスペック情報に本体の写真を加えることで、見やすく選びやすいサイト作りに努めた。同サイトでは、店舗ごとに商品を掲載しており、更新などの運営・管理も店舗ごとに行っている。

お客さま視点で買い取り、販売の仕組みを構築

 中古カメラを販売する店舗は、専門店および取扱店に限っているが、下取り、買い取りは「カメラのキタムラ」および「カメラのきむら」の全645店舗(2008年9月現在)で行っている。店舗では、同社の中古カメラ担当部門が作成した紙ベースの中古相場表に基づき、お客さまが持ち込んだカメラを査定している。中古相場表の情報はWebサイトを通じてお客さまにも公開しているため、お客さま自身が査定することもできる。また、デジタルカメラに関しては、商品サイクルが早く次々と新商品が発売され、値動きが激しいことから、ネット上では常に情報を更新して最新の状態を保っている。
 一方、net-chuko.comでは、「直送買い取り」というサービスを用意している。これは、お客さまにわざわざ店舗に足を運んでいただくことなく買い取りを行う仕組み。ここでの査定にも店舗と同様の査定基準を用いている。
 お客さまからの下取り、買い取りに当たっては、その場で各店内でマニュアルに従って入念な点検が行われる。マニュアルは、デジカメ用とフィルム用に分かれており、それぞれ20項目からなる。ひとつでもNG項目があった商品は、提携企業に修理を依頼。販売できる状態にしてから、中古カメラ取扱店の店頭に並べる。なお、一般店舗で買い取った商品は、点検後に専用便で中古カメラ取扱店へ届けられる。
 商品の販売は、net-chuko.comでも行っている。お客さまに同サイトで興味のある商品を検索・予約していただき、予約された商品をお客さまの最寄りの店舗に配送。店頭で現物を見て確認した上で、購入を決めていただいている。複数の商品を予約し、店舗で実際に商品を確認してからひとつだけ購入することもできる。同社では、全国を網羅する店舗網を活かしてお客さまに商品を手に取っていただける仕組みを構築することでネット通販への不安を解消。さらに、販売時に一部を除き半年間の保証を付けることで、中古品の購入に対する不安も払拭している。
 なお、net-chuko.comで買い取りや注文を利用する際には、キタムラグループネット会員への登録が必要となる。入会金・年会費は一切無料で、中古カメラの購入だけでなく、デジカメプリントの注文などキタムラグループが提供するさまざまなサービスを利用することができる。

スクリーン 1 スクリーン 2

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市場が縮小傾向にあってもシェアを拡大

 主なお客さまは、40~60歳代の男性だが、最近は若い男女のマニュアルカメラ愛用者も増加。土日には、20歳代の姿も見られるという。
 お客さまの視点に立った販売方法や、お客さまにも中古相場の情報を公開することにより透明性を確保した点がお客さまの信頼を集め、同社の中古カメラビジネスは順調に成長。2001年当時は35億円だった売上高が、今日では60億円と倍近くに成長している。1台当たりの平均購入金額は2万円。売上高を平均購入金額で割ると、年間30万台を販売している計算となる。売上構成比は店頭が約8割で、ネットが約2割となっている。
 同社の中古ビジネスは右肩上がりで順調に推移しているが、中古カメラ市場全体を見ると、前年比90%程度で縮小傾向にある。市場が縮小傾向にある中で、同社のシェアが拡大している理由としては、お客さまの視点に立った入荷情報やキャンペーン情報のWebによる提供のほかに、同社とお客さまとの親密なコミュニケーションが挙げられる。
 店舗では、購入、買い取りの際にお客さまに氏名などをご記入いただくことから、氏名を覚えて積極的に呼び掛けることでコミュニケーションを促進している。呼び掛けに当たっては、失礼にならない程度にフレンドリーな雰囲気を作ることに留意。「○○さま」ではなく「○○さん」と呼び掛けることで、親密さを演出している。
 ネットによるコミュニケーションとしては、キタムラグループネット会員を対象としてメールマガジンを配信。毎週、会員限定の情報をお届けしているほか、不特定多数への情報提供としては、net-chuko.comでオススメ中古カメラの紹介、店舗ブログで入荷情報、セール情報、買い取り情報を発信している。

中古品専門のネット部門の開設を検討

 同社の中古カメラ事業における課題は、販売より買い取りにあるという。現在、買い取りのPRには、店舗ブログや新聞広告を活用しているが、今秋にnetchuko.comをリニューアルし、ネットでの買い取りを強化していく考え。同時にネットによる販売にも注力していく意向だが、そのためにはnet-chuko.comの商品情報を増やすことが不可欠であることから、中古品専門のネット部門開設の必要性を感じているという。店舗が担っている業務を専門部門に集約し、情報更新を効率的に行うことができれば、新品と中古の双方を取り扱う店舗を絞り込むことが可能となり、店舗の業務負荷も軽減できると見ている。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年10月号の記事