「人を想う力」で想像力を養い「one to only one」の実現を追求

(株)JIMOS

コールセンターを「ユアーズルーム」と名付け、戦略の中核と位置付ける(株)JIMOS。人とつながる仕組み作りを大前提に、1988年の設立以来、コミュニケータの「人を想う力」を養う研修に取り組んでいる。他部署との連携を巧みに図り、コミュニケータが生み出す、想像力を働かせた顧客との会話で「one to only one」の実現を目指す同社の取り組みを紹介する。

「one to only one」で顧客との関係づくりに注力

 物だけではなく、人とつながる仕組み作りに重点を置き、化粧品や健康食品などの通信販売で「one to only one」の実現を追求し続ける(株)JIMOS。1998年の会社設立以来、「ユアーズルーム」と名付けたコールセンターを戦略の中核に位置付け、インバウンドではあるが、営業色を持たせた重要な役割を担わせている。
 通信販売会社のコールセンターという性質上、顧客からの注文や問い合わせを受けることが業務となるが、他部署との連携に基づき、売り上げや客単価などの目標設定を行い、同コールセンター独自の実行計画を立てている。
 通常75名ほどのコミュニケータが、朝8:30から夜21:00までに受けるコール数は、1カ月で8万5,000件ほど。電話以外の対応メディアとして、eメールとファクス、ハガキがあるが、メインはやはり電話である。コールセンターにかかってくる電話のほとんどが、注文の電話である点が特徴的だ。
 顧客との電話応対の中で、コミュニケータがお勧めの季節商品の話などをしながら、プラスアルファの商品購入に結び付ける。顧客から商品注文の電話があった際のコミュニケータによるクロスセリングの売り上げは、ここ数年来、恒常的に20%を保っている。

「人を想う力」で顧客への想像力を強化

 日常での行動と教育プログラムはリンクすると考える同社。普段から人を想う力を養っていけるようにと、業務上の取り組みやその成果のみならず、例えば仲間への声掛けを小まめに行ったり、楽しく仕事ができるための改善策を提案したオペレータをリーダー職のスタッフが評価し、月単位や週単位で表彰している。表彰制度という名前にはなっているが、そこには、スタッフがコミュニケータの良い行いや取り組みを誉めることで、コミュニケータからの信頼を深めたり、またコミュニケータに周りを思いやり、人を想う力を養うことができるといった効果がある。
 このように、“日常的にできないことは顧客に対してもできない”という考えのもと、同僚などへの気配りをはじめ、コミュニケータ画面に表示されたデータから顧客を想像し、「お客様想像シート」を書くなどといった、想像力を働かせることで自然と人を想う力が養われる仕組みを随所に設けている。
 また、他部署との連携も戦略上、重要な課題であるとし、センター内にコミュニケータと事業部、あるいはコールセンターとコミュニケータとのハブ的な役割を果たす「戦略チーム」を設置。5人の専任スタッフが事業方針やターゲット、商品情報などについて、コミュニケータが理解しやすいような「戦略シート」を作り、コミュニケーション戦略を設計したり、コミュニケータをフォローしたり、さらにはコール結果や顧客の声を検証レポートにまとめて事業部にフィードバックするといった役割を担っている。レポートは以降の販売計画や商品開発などに活かされる。

センター

「ユアーズルーム」では、戦略チームによるコミュニケーション戦略の設計や、コミュニケータのフォローが行われている。「one to only one」の実現を目指し、コミュニケータを強力にバックアップする

CM

「人を想う力」を身に付け、クロスセリングで売り上げ増を実現するコミュニケータ。会社への貢献度は高い

VOCチームの存在

 コミュニケータが残した顧客データは全社員が閲覧可能となっており、その顧客の声に対してどの部署がアクションを起こすかを指示する「VOCチーム」の存在も大きい。VOCチームによって改善された事例として、顧客への本人確認の方法がある。
 以前は注文や問い合わせ時に名前、電話番号、住所の確認を行っていたが、住所が長い場合などは確認に時間がかかり、「注文のたびに確認されるのはわずらわしい」といった顧客からのクレームが延べ数百件も発生していた。
 そこでVOCチームでは、スムーズな確認方法を構築しようと、住所ではなく会員番号でも確認ができるようにシステムを変更。その結果、「確認作業がわずらわしい」といった顧客からのクレームが半減したのである。

「AIDMAの法則」で営業への貢献度を高める

 同社においては、半年ほど前からコミュニケータに提供する情報や教育方法を変えたところ、コールセンターの売り上げへの貢献度が高まってきているという。その背景には「AIDMAの法則」を研修プログラムに導入したことがある。具体的には、コミュニケータの商品理解を深めることにより、コミュニケータの意識の中にAIDMAのプロセスを擬似的に引き起こし、顧客が興味を持った商品を実際に購入するまでのプロセスを一歩リードするかたちで提案させようというもの。この結果、顧客からの注文のインバウンドコールにおいて、関連商品をお勧めするクロスセリングの成果が大きく躍進し、コールセンターの売り上げ増が実現したのだ。
 一例を挙げれば、年に1回のキャンペーン期間に限定して販売している定価2万円の高級美容クリーム受注の際には、クロスセリングにより売上高の25%を達成した。これはコミュニケータの研修に「AIDMAの法則」を取り入れたことによるもので、過去3年間で最高の結果となっている。
 また、コミュニケータの教育に「AIDMAの法則」を取り入れたことで、それまでは着任後、3カ月ほどかかっていた営業目標の達成が、2カ月で実現できるようになったほか、センターが掲げている顧客満足度、平均応答時間、放棄呼率などのKPI達成率も過去最高の数値を更新し続けている。
 現在、同社においては、顧客とつながる仕組みをさらにパワーアップするべく、センターの運営方法や顧客とのコミュニケーションのあり方をどのように改善していくかが課題になっている。
 そこで同社では、今年を準備期間とする3カ年計画を立案。「人を想う力」をこれまで以上に養うことにより、コミュニケータの創造性を育成し、顧客に付加価値を提供するセンターを目指していく。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年7月号の記事