「満足」から「感動」へ。求められる以上のサービスの提供でファンづくりを促進

(株)そごう 横浜店

(株)そごう横浜店では、2001年6月に、コンシェルジュサービスの提供を開始した。同店のコンシェルジュサービスでは、「店内の案内」「商品選びの手伝い」などにとどまらず、自店で扱っていないブランドや商品に関する案内、横浜の観光、文化、歴史などについての情報提供なども行うことで顧客満足度の向上を図り、同店のファンづくりにつなげている。

「お客様の抱えている問題を解決すること」を目的にコンシェルジュサービスを提供

 1830年の創業以来、180年近い歴史を誇り、現在では(株)西武百貨店とともにミレニアムリテイリンググループの一員としての活動を続ける(株)そごう。同社横浜店では、2001年6月に6名のコンシェルジュを導入し、コンシェルジュサービスの提供を開始した。
 コンシェルジュサービス導入の目的は、「お客様の抱えている問題を解決すること」。百貨店業界では情報化の進展の中で品揃えの同質化が進み、個性の演出のためには人的サービスの充実が必須となっている。売り場を横断して顧客の相談や問い合わせに応えるコンシェルジュはその象徴ともいえる存在である。
 コンシェルジュサービスを統括しているのは、顧客サービス担当チームだ。同チームにはコンシェルジュのほかにインフォメーションを担当するスタッフも所属している。インフォメーションは固定された場所で顧客からの質問に答えているに対し、コンシェルジュは必要に応じて店内を巡回、また顧客との会話により潜在的なニーズを汲み取り、その充足に努めるというかたちで役割を分担し、さらに連携することにより、総合的な顧客満足度の向上を図っている。
 現在、同店のコンシェルジュは9名。いずれも社歴20~30年の売り場経験豊富なベテラン店員で、男性6名、女性3名により構成されている。コンシェルジュ・デスクはメイン・エントランスである地下2階、および駐車場からの出入り口があり、また高級ブランドショップなどが集まる、いわばプレステージフロアである2階の2カ所に設置されており、ここに1~2名が常駐するほか、お客様のご要望によっては店内を一緒に回ってサービスを提供している。なお、これとは別に10Fのレストラン街にも4名の「レストランコンシェルジュ」を配置し、飲食に関する相談に対応している。
 コンシェルジュサービスの主な内容は「店内の案内」「商品選びの手伝い」「冠婚葬祭のしきたりなどについての問い合わせへの対応」など。そのほか、例えば自店で扱っていないブランドや商品に関する質問などについても、近隣の商業施設に問い合わせて案内するなど、直接、商品の販売につながらない対応も行っている。さらに、2006年からは、地域活性化への貢献という観点から、横浜の観光、文化、歴史などについての情報を提供する「横浜ちょこっと観光インフォメーション」サービスも行っている。ちなみに、2007年春にスタートした“ご当地検定”である「かながわ検定横浜ライセンス2級」を取得しているコンシェルジュもいるとのことだ。
 そのほか、販売員のサポートもコンシェルジュの大きな役割となっている。販売員が販売活動において必要とする情報を必要なときに提供することで、店舗全体のコミュニケーション力を高めているというわけだ。

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コンシェルジュには、社歴20~30年の売り場経験豊富なベテラン店員を採用)

他店のイベント・スケジュールも把握

 同店のコンシェルジュは前述の通り、いずれも社歴20~30年のベテラン店員。コンシェルジュは外部機関の研修などにも参加し、販売を目的とする通常の接客とは若干異なるコンシェルジュとしての応対に関するトレーニングを行っている。また、フィッティングやラッピングなどの社内検定や「カラー検定」「食生活アドバイザー」などの外部資格保持者も多く、顧客の要望により多く応えられるようになっているとのことだ。
 コンシェルジュには広範な問い合わせが寄せられるため、充実した対応を行うためには恒常的な情報収集が欠かせない。自店の各売り場やイベントについてはもちろんのこと、近隣や都内の他店のイベント・スケジュールなども把握している。また、特に流行を把握するために、TVや雑誌、新聞などのチェックも欠かさないとのことだ。さらに、きめ細かい対応のためには店内のネットワークが必須であるという認識から、各売り場の朝礼に随時参加するなど、販売担当者との交流にも積極的に取り組んでいる。
 コンシェルジュに寄せられる要望は非常に多岐にわたっており、同じものはほとんどない。表面的には同一の要望でも、顧客によって真のニーズは異なるからだ。そこで顧客の話をよく聞いて、ニーズの本質を見極めることが最も重要になっている。例えば、「ギフトサロンはどこですか?」と聞かれた場合には、単に売り場を案内するだけでなく、「どのようなギフトをお探しですか?」と問い掛けるなど、積極的に会話をつなぎ、顧客の真に求めているモノや情報を探るようにしている。コミュニケーション・ギャップを最小化し、表面にとどまらないニーズに応えることに注力しているというわけだ。なお、時には“無理難題”が寄せられることもあるが、そういった場合でも「ありません」「できません」とお断りするのではなく、別の提案をすることで少しでも顧客満足につなげるようにしている。

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お客さまとの会話により潜在的なニーズを汲み取り、真に求めているモノや情報の提案に努めている

コンシェルジュ的意識を全店規模に拡大

 同店のコンシェルジュサービスは、おおむね好評をもって受け入れられており、サービスを受けた顧客から感謝の言葉を寄せられることも少なくない。コンシェルジュの導入により、顧客満足度向上効果は着実に上がっているようだ。
 ただし、コンシェルジュサービスの利用について「相談したら、商品を購入しなくてはいけないのではないか」と考える顧客も少なくないと見られるので、今後は積極的な声掛けにより、より多くのお客さまから認識していただけるよう努めていく意向だ。
 サービスの提供体制については、コンシェルジュだけでなく、販売員全員にコンシェルジュ的な意識を拡大したいと考えている。各売り場では当然のことながら商品を販売することが接客の目的である。しかし、本当に「お客様に喜んでもらう」ためには必ずしも自店の商品が最適とは言えないケースもあり得る。そのような場合に顧客の利益を最優先した対応ができるよう、コンシェルジュを起点に店員全体の意識の改革を図っていく意向だ。そして、「何かあったら“そごう”に」というファンを増やしていく考えである。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年6月号の記事