加盟店の販売促進支援を目的にDM受託サービスを展開

(株)ジェーシービー

独創的な事業戦略に基づくサービスの提供や商品開発を続ける(株)ジェーシービー。同社では加盟店への販促支援の一環として、ダイレクトメール受託サービス「J-COMPASS」を展開している。このサービスを活用して、2007年3月から、通販化粧品を対象とする「連合広告DM企画」を開始。参加企業から、同時期に行った全国紙の連合広告企画よりも費用対効果が高いと評価されるなど、好スタートを切っている。

顧客セグメント型の販売促進支援サービス「J-COMPASS」

 わが国におけるクレジットカード会社の草分け的存在であり、カード会員5,808万人、国内加盟店ネットワーク500万店の規模を誇る(株)ジェーシービー(JCB)。同社加盟店営業部では、加盟店に対する販売促進支援サービスの一環として、ダイレクトメール受託サービス「J-COMPASS(ジェイ・コンパス)」を展開している。
 同社では、従来から加盟店の要望に応えるかたちでダイレクトメール受託サービスを提供していたが、ニーズの増大を受けて、1990年代後半に「J-COMPASS」としてこれをパッケージ化した。なお、同社が加盟店に提供している「J-COMPASS」以外の販売促進支援サービスとしては、会員向けインターネットサービス「MyJCB」登録会員向けのオンラインショッピング優待サイト「Oki Doki ランド」への情報掲載、利用代金明細書に同封される「UNI CLIP」への情報掲載、発行部数110万部を誇るゴールド会員向け機関誌『THE GOLD』の通信販売ページへの掲載や同誌への冊子類の同梱などがあるが、これらはいわばJCBカード会員へのマス向けの告知サービス。これに対して、「J-COMPASS」は顧客セグメント型のサービスとして位置付けられている。
 「J-COMPASS」では、紙DMとeDMの双方の利用が可能である。いずれの場合も、要望に応じて会員属性(年齢、性別、居住地域など)とカード利用履歴データの組み合わせにより、さまざまな対象者の抽出ができる。また、発送の数カ月後、実施施策の購買(カード決済)分析を所定の効果測定表によりフィードバックすることも可能だ。さらに、特に紙DMについては、同社が差出人となりまとめて大量に発送するため、郵便料金が大幅に割安になるというメリットもある。一方eDMについてはスパムメールの増加によりeメールの開封率低下が叫ばれる中、発信アドレスの末尾が“jcb.co.jp”となることで、信頼度が格段に向上し、高い開封率が期待できる。

紙DMが再評価される傾向に

 「J-COMPASS」の利用加盟店数は年間数百社に及んでおり、発送通数は紙DM、eDMを合わせ、年間1,000万通以上に達している。
 紙DMとeDMの比較では、近年では1通当たりの絶対的な費用は高くなるものの、豊富な内容を折り込むことができ、さらにクリエイティブ上の工夫の余地も大きいことや、スパムメールの増加によるeDMの効率低下などから、紙DMが再評価される傾向があるとのこと。なお、利用加盟店の業態別に見ると、店舗型の加盟店ではクーポンなどのインセンティブを付けた紙DM、オンラインショッピングを展開する加盟店では、ダイレクトに自社のWebサイトへの誘導ができるeDMの利用が多いようだ。
 カード会員からのDM送付許諾に関しては、入会時に会員規約の中で個人情報の利用範囲について、「加盟店からの情報提供」がある旨を伝えているほか、特にeDMについては、前出の「MyJCB」の登録(ID取得)時にも許諾を得ている。さらに、紙DM、eDMには必ず、オプトアウトのかたちで、その後のDMの送付を中止できる仕組みを用意しているが、基本的には同社がカード会員にとっても有益な情報を提供しているという姿勢が理解されており、送付中止の申し出は少ないとのことである。

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左から商品案内パンフレット、レター、申込書、下は封筒

通販化粧品を対象に「連合広告DM企画」を展開

 「J-COMPASS」は、基本的に加盟店の要望に応じて提供するアドホック型のサービスだが、同社ではこれを一歩進め、同社が加盟店に提案するかたちでのサービスを2007年3月から開始した。これが通販化粧品を対象とする「連合広告DM企画」である。
 これは通販化粧品の分野において、新聞や女性向け雑誌などで連合型の広告企画が多数実施され、効果を上げていることを参考に企画したものである。具体的には、カード会員の中から属性や通信販売利用実績などによりターゲットとなる10万人を抽出し、「JCBカードでの決済者の中から抽選で50名にJCBギフトカード1,000円分進呈」というオファーを付けて、企画参加企業の商品を紹介。媒体は定型封書で、内容物はレター、商品案内パンフレット、申込書(JCBあて)、申込書用個人情報隠蔽シールの4点とした。また、受注方法については申込書(郵送)のほか、電話(フリーダイヤル)とファクスを用意した(電話、ファクスについては、企画参加企業がそれぞれ準備するかたちを採った)。さらに、商品案内パンフレットのクリエイティブに関しては、一定のフォーマットを作り、同様のスタイルで企画参加各社の商品を紹介することで、「JCBが会員に商品を紹介する」というスタンスを強調、また紹介商品の価格帯もなるべく揃えることで統一感を演出した。
 結果は上々であり、3社の参加により2007年3月に実施された第1回では、企画参加企業から「同時期に行った全国紙の連合広告企画よりも費用対効果が高かった」「今までの媒体の中でもトップクラス」「トライアルキット購入から本商品への移行率が他媒体より高かった」など、非常に高い評価を受けた。また、フォーマットを用意したことに関しても、「原稿入稿するだけで発送できるので、手間が掛からなかった」と好評であった。そこで、同社では2007年9月にほぼ同様のかたちで第2回を実施。これも6社の参加を得て好評であったことから、2008年3月下旬に第3回を実施することを予定している。
 なお、注文経路については、半数強が同社あての申込書となっており、同社ではこれをカード会員の同社に対する信頼の現われであると認識している。また、決済手段については、JCBギフトカードをオファーとした効果もあり、大半がJCBカードとなっていることから、施策結果分析のためのデータが十分に収集できる状況が整うとともに、同社にとってもカード利用の促進につながる結果となった。

カード会員と加盟店の双方にメリットがある情報提供を展開

 今後についてはまず、通販化粧品を対象とする「連合広告DM企画」が好評であることから、商品分野を拡大していく意向であるが、現状では、マス媒体でも通販化粧品以外の分野での連合型広告企画の成功例が少ないことから、慎重に業界を選定する必要を感じており、また、主体的に連合型広告企画が成立する文化を醸成していくことも視野に入れている。
 そのほか、紙DMとeDM、さらにはWebやモバイルなどを組み合わせた加盟店に対する販売促進支援サービス商品の開発などにも取り組んでいく意向だ。同社の最大の資産は、5,808万人にも及ぶカード会員の存在だが、これらのカード会員に有益な情報を提供するという意味では、国内だけでも500万店を超える加盟店ネットワークも大きな武器となる。今後もこのようなアドバンテージを十分に活用し、カード会員と加盟店の双方にメリットがある情報提供を進めていく方針である。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年4月号の記事