紙DMを通じて「共感」し合える顧客を開拓

(株)あきゅらいず美養品

「美しさをカタチづくるのではなく、養うことからはじめよう」というコンセプトのもと2003年に設立された(有)あきゅらいず美養品。スキンケア商品などの通信販売を手掛けている同社は、2カ月に1度、「あきゅ便り」いう紙DMを6万人の既存顧客に送付している。同社では、紙DMを通じて、同社の企業理念やスキンケアに対する考え方に共感する顧客を開拓し、リピート客へと育成している。

同梱チラシによる新規顧客獲得が奏効 毎月約5,000人の新客を獲得

 スキンケア商品などの通信販売を展開する(有)あきゅらいず美養品。2003年11月に設立された同社は、せっけんやクリームなど基礎化粧品を中心に扱っている。商品の特徴としては、金銀花(きんぎんか)、丹参(たんじん)、玄参(げんじん)、黄蓮(おうれん)をはじめとした全十種類の草根木皮の植物から抽出したエキスを配合していることだ。
 設立当初、CS放送の通販専門チャンネルに商品を供給、同社の売上高に占めるテレビ通販のシェアは自社通販の約2倍を占めていた。しかし、2005年にテレビ通販から撤退し、自社通販のみに切り替えた。その結果、2006年の売上高は落ち込んだものの、通販会社の商品同梱チラシ(通販会社が顧客への商品出荷時に、クライアント企業のチラシやサンプルなどの販促物を同梱するサービスを利用)による新規顧客開拓が徐々に功を奏し、2007年5月期までに年間1万3,650人の新客獲得に成功。売上高も2億1,000万円を上回るまでに回復した。
 現在では、(株)千趣会を中心に、常時4~5社の通販会社の商品同梱を実施。毎月120万~130万部のチラシを配布し、約5,000人の新客を獲得している。顧客情報に関しては、同梱チラシに付いている注文はがきや、電話、ファクス、インターネットによる受注時に、氏名、電話番号、住所、性別、生年月日をはじめ、購買履歴をデータベースに蓄積。eメールアドレスについては、インターネットからの受注時、および同社からのeメール配信を希望する顧客に限り収集。インターネットから注文する顧客については、これを「会員ID」代わりに使用している。
 登録会員数については、1年前は1万5,000人程度だったものが、現在では約7万人を数えるまでに急増。2008年5月期の売上高は大幅に伸長し、16億円以上を見込んでいるという。

リピーターと新規顧客に対して紙DM「あきゅ便り」を送付

 同社では、前述の通り、新規顧客獲得については通販会社への同梱チラシを利用する一方で、既存顧客に対しては「あきゅ便り」という紙DMを2カ月に1度送付している。DM送付対象者は、過去1年以内に「お試し詰合せ〈泡石10g、優すくらぶ(ハッカ)10g、優すくらぶ(ゼラニウム)10g、秀くりーむ10g〉」などを購入した新規顧客と「ほぼ1ケ月セット〈泡石35g、優すくらぶ(ハッカまたはゼラニウム)80g、秀くりーむ50g〉」や「まんぞく2ケ月セット〈泡石110g、優すくらぶ(ハッカまたはゼラニウム)150g、秀くりーむ100g〉」などを購入しているリピーターである。これらを合わせて現在、6万人近くの既存顧客に紙DMを送付しており、その際には、ヤマト運輸(株)の「クロネコメール便」を利用している。
 紙DMには、季節の情報誌「あきゅ便り」と商品カタログ、注文用紙、ご意見・ご感想用はがきなどを同封している。
 同社が紙DMを送付する際に、気を付けていることが2つある。ひとつは、すぐに捨てられることのないようにお客様が使える工夫を施すこと。
 例えば、年6回送られる2008年分(1・2月号~11・12月号)の「あきゅ便り」は、「あきゅカレンダー」と称して、外封筒のオモテ面の上と下に1月、2月の月と日にち、曜日が書き込まれており、オモテ面を点線に沿って切り抜き、窓ができたら「あきゅ便り」をセットするとカレンダーになる仕組みだ。
 もうひとつは、大切なのは「読んで面白い」ことであり、商品を売るのは“二の次”であるということ。例えば、昨年、パッケージをリニューアルした「おとし玉」というサプリメントの販売に当たっては、「あきゅ便り」を身体にまつわる絵本のような読み物に仕上げた。一般に身体のメカニズムを説明するとなると、難しくなりがち。そこで同社では、絵本仕立てにすることで、これを簡単に理解できるようにしたのだ。あくまでも、健康について考えていただくと同時に、同社のスキンケアに対する考えを伝えることが優先であり、結果的な商品の購入はお客様の判断に委ねるというスタンスである。確かに「おとし玉」については、「あきゅ便り」の最後のほうに1ページで、パッケージをリニューアルしたことを紹介しているだけで、注文のための電話番号はもちろんのこと、ファクス番号、URLなどは、いっさい掲載されていない。
 つまり、同社においては販売ツールというより、コンテンツとして面白いかどうかが大事なのだ。従って、使う言葉を厳選し、その言葉を最大限に活かせるようなビジュアルに気をつかって紙DMを作っているという。
 同社企画室の横田郁子氏は、「『この商品はいいですよ』と言っては、お客様は引いてしまいますよね。だから売らないようにしているんです」と説明する。
 同社では、あくまでも「あきゅ便り」を通じて、スキンケアや健康はもちろん、同社の考え方に「共感」する仲間を探しているのだ。

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販売ツールというより、コンテンツとして面白いかどうかが大事。身体のメカニズムなど絵本仕立てにして簡単に理解できるようにしている

「あきゅ便り」を送付するとリピーターの3割が購入

 同社の顧客属性は、20~50代の女性。中でも30~40代の女性がコアな顧客層だ。紙DMの「あきゅ便り」の送付対象者は、1年前はリピーターが中心だったので現在とは多少異なり、5,000通程度しか発送していなかった。現在では、前述した通り、その12倍に当たる6万通近くを送付している。6万通の内訳は、リピーターが2万通、新規顧客が4万通である。
 最後に、この「あきゅ便り」の効果を見てみよう。まず、リピーターのレスポンス率は30%。リピーターは、「ほぼ1ケ月セット」(9,760円)か、「まんぞく2ケ月セット」(1万8,900円)といったセット商品を購入しているケースがほとんどであるため、同社ではこれを妥当な数値と見ている。一方で、新規顧客に関しては、この1年で急激に増えたこともあり、まだ数字の把握は行っていない。また、新規顧客で「お試し詰合せ」を購入し、その後、購買に結び付いていない場合でも、初回の購買から1年間は「あきゅ便り」を送付している。つまり、「あきゅ便り」は、休眠顧客の掘り起こしも兼ねているのだ。ちなみに、客単価は1万円前後とのこと。
 eDMに関しては、今のところはほとんど手掛けていない。「あきゅ便り」を発送したときに、お知らせのメールマガジンを送信する程度である。eDMの活用に関しては、まったく関心がないわけではないが、現在のところ紙媒体のほうが発信側と受信側の気持ちが伝わりやすいものと認識している。
 同社では、紙DMについては「読み物」としてのコンテンツ作りが課題と見ており、これにこれまで以上に注力していく意向だ。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年4月号の記事