エコポイントカードを発行し家庭内での環境保全への取り組みを促進

港区役所

2007年2月、港区役所では、港区内の事業者と区民、区が連携して、環境保全活動を行うことを目的に発足した任意組織「みなと環境にやさしい事業者会議」の協力のもと、ポイントプログラムをベースとする「みんなとエコポイントカード」事業を開始。家庭内での環境保全への取り組みを促進している。

地球温暖化防止の実効性向上を目的にポイントプログラムを導入

 港区役所では2007年2月、港区在住・在勤・在学生を対象に、環境に配慮した行動を実践してもらうことを目的に、「みんなとエコポイントカード」事業を開始した。
 環境に配慮した行動、特に家庭から出される二酸化炭素の削減につながるライフスタイルへの転換を進めるための公的事業としては、環境省が2005年度から家庭内での環境保全への取り組みを促進する「我が家の環境大臣」事業を展開しているほか、地方自治体でも、例えば環境保全型ライフスタイルのチェックを小・中学校の夏休みの宿題とし、優秀者に首長から表彰状や図書券を贈呈するなど、さまざまな取り組みが行われてきた。しかし、これらにはいずれも、継続を促すインセンティブに乏しいという側面があり、十分な実効性を確保できなかった。このような認識のもと、港区役所が実効性の高い取り組みとして開始したのが、ポイントプログラムをベースとする「みんなとエコポイントカード」事業である。
 「みんなとエコポイントカード」事業のあらましは以下の通りだ。
 まず、区役所および5つの地区総合支所で、参加希望者にシリアルナンバーの入った「みんなとエコポイントカード」を配布。カードを受け取った参加者は、カード裏面のQRコードを携帯電話で読み取ったり、記載されたURLを入力したりすることにより、専用サイトにアクセスし、例えば「エアコンはつけなかった」「レジ袋はもらわなかった」「コンセントはこまめに抜いた」など、週ごとに設定される環境に配慮した7つの行動チェック項目を自己評価し、日々、ポイントを加算する。1項目につき2~3ポイントが配点されており、1日の最大獲得ポイントは20ポイント。アクセスは1日1回のみ可能である。貯まったエコポイントにより、区が運営する環境関連の学習・交流・情報交換施設である「エコプラザ」の常設ミニエコバザーや、年6回程度開催される朝市エコバザーで、100ポイント=100円相当のバザー券が発行され、おもちゃ、絵本、子ども用品、無添加食品、有機農産物などと交換できる。ポイントはシリアルナンバーごとに管理しており、個人情報は収集していない。当初は個人情報の収集も検討したが、収集により参加へのハードルが高くなり、また、個人情報保護の観点から外部のレンタルサーバの利用が困難になって運営コストが増大するという判断から、現在のかたちに落ち着いたとのことだ。
 携帯電話・PCそれぞれの専用サイトでポイントを貯めることが原則だが、機器の操作に慣れていない高齢者などに配慮し、区役所や地区総合支所で配布される「週間エコチェック・カレンダー」にチェックを入れて持参しても、ポイントを貯められる。

「みなと環境にやさしい事業者会議」がエコポイントカード事業を支援

 区で同事業を担当しているのは、環境・街づくり支援部環境課地球環境係であるが、同事業においては、「みなと環境にやさしい事業者会議」も大きな役割を果たしている。同会議は、港区内の事業者と区民、区が連携して、環境保全活動を行うことを目的に、2006年5月に発足した任意組織。港区の副区長が会長を務めている。設立当初、29にとどまっていた参加事業者は、2008年1月現在では、区内に本部を置く企業、学校、NPOなど63に拡大しており、ヒートアイランド対策イベント「打ち水大作戦」の実施、企業と環境をテーマとする展示会「企業と環境展」の開催、環境保全をテーマにしたフリーペーパー『エコプラ』の発行など、さまざまな環境関連活動を行っている。
 「みんなとエコポイントカード」事業では、ポイントの蓄積は自己申告によるものである。また、個人情報と紐付けていないため、カードさえ持参すれば、ポイントを蓄積した本人であるか否かにかかわらず、バザー券が発行され、物品との交換が可能となる。つまり、善意による参加を前提とする事業であるため、区の予算を使うことには問題がある。そこで同事業では、「みなと環境にやさしい事業者会議」の収入から運営コストを捻出するとともに、会員事業者にバザーへの協力を依頼。多くの会員事業者が快く応じたことにより、公的負担に頼らないバザーを実現した。特に、有機・低農薬野菜の宅配事業などを行う、らでぃっしゅぼーや(株)の提供による農産物などが出品される朝市エコバザーは、価格を市価より割り引いて設定していることから非常に人気が高く、エコポイントとの交換だけでなく、バザー券を現金で購入する人も多いとのことだ。ちなみに、収益金はボルネオの熱帯雨林再生活動に寄付している。

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貯めたポイント数に応じバザー券と交換。年6回程度開催される「朝市エコバザー」などで利用できる

発行枚数1万枚を目指すとともに環境関連事業全般での活用も検討

 「みんなとエコポイントカード」事業の告知は、区役所・支所のほか、区の広報紙、区のホームページ、「みなと環境にやさしい事業者会議」のホームページなどを通じて実施した。なお、カードは1,500枚を用意したが、これまでの発行枚数は約1,000枚、実稼動率は約40%前後であり、やや伸び悩んでいる。今後については、告知方法を工夫するとともに、区内の学校との連携なども検討し、参加者の拡大を図っていく方針だ。将来的には、1万枚の発行を目指している。
 なお、前述の通り、カードの発行に際して個人情報を収集していないため、参加者の属性は明らかではないが、バザーへの来場者では、高齢層や小さな子どもを抱える主婦層などが目立つとのことである。
 「みんなとエコポイントカード」事業は、家庭から出される二酸化炭素の削減につながるライフスタイルへの転換を大きなテーマにスタートしたが、今後については、区が関与する環境関連事業全般で活用していくことも検討している。
 例えば現在、地区総合支所を拠点に実施している清掃・美化活動や、環境課で実施しているあきる野市の森林整備活動へのボランティア参加者にエコポイントを付与するといったことだ。具体的には、1回の参加につき、100~200ポイントを付与し、エコチェックでの獲得ポイントと同様に、バザー券との交換などを行う。もちろん、発行ポイントが増加すれば、対応する財源が必要となるが、「みなと環境にやさしい事業者会議」の活動を拡大するなどして、対応していく意向だ。さらに、将来的には、ポイントの交換対象を増やすなど、エコポイントに地域通貨的側面を持たせることも視野に入れており、同事業を地域コミュニティ再生のきっかけにもしていきたい考えである。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年3月号の記事