エリア限定の会員制ネットスーパー事業で店舗販売の補完を狙う

サミット(株)

サミット(株)は、2003年2月から、電話およびFAXによる「サミットお届けサービス」を東京・世田谷区の代沢十字路店で実験展開してきたが、2005年11月でこれをいったん中止。2007年4月からは同じ世田谷区を中心に、新たに会員制ネットスーパー「らくちん君」を開始した。これはインターネットが身近なコミュニケーション手段となり、お客様のネットを通じた商品の購入ニーズが高まっていることを踏まえてスタートしたもの。2008年4月からは東京都杉並区に拡大していく予定だ。

インターネットの普及を背景に会員制ネットスーパー事業を展開

 住友商事グループで、首都圏で食品スーパー「サミットストア」を展開するサミット(株)。同社では2007年4月、会員制ネットスーパー「らくちん君」事業を開始した。
 同社が食品・日用品の会員制宅配事業に取り組んだのは、今回が初めてではない。2003年2月から2005年11月にかけて、「サミットストア代沢十字路店」を拠点に、電話およびFAXで受注して商品を宅配する「サミットお届けサービス」を実験的に展開していたのだ。
 同サービスは、同店利用顧客、特に幼稚園児を持つ母親層の要望に基づき始められた。当初、20世帯ほどであった利用会員は、ピーク時には220世帯程度にまで拡大していた。従って、食品・日用品の宅配に一定のニーズがあることは確認されていたが、収益性が低かったこと、また、例えばFAXによる注文の際に、送信エラーや、注文用紙の表裏を間違えて送信してしまうなど、受発注にまつわるトラブルの発生が避けられなかったことから、実験はいったん中止された。
 このような経験を踏まえ、今回、同社が会員制ネットスーパー事業を開始した背景には、インターネットが生活者にとって身近なコミュニケーション手段として浸透してきたことがある。また、住友商事グループ全体がeコマースを強化する方針であることも大きい。店舗販売を主体とする同社にも、インターネットを活用した新しい販売チャネルの模索が求められたのだ。

世田谷区全域でサービスを提供

 「らくちん君」の対象エリアは、当初、砧、祖師谷、千歳台など、東京都世田谷区の一部地域に設定された。これは、この地域にはサミットストアが数多く存在し、「サミット」のブランドイメージが確立されていること、また、注文を受けた商品をピッキングし、出荷するためのスペースを確保できる店舗(砧店、代沢十字路店)がこの地域に存在することによる。なお、現在では世田谷区全域に対象エリアが拡大されている。
 取扱商品は、生鮮食品をはじめ加工食品、酒類、日用品など約4,000アイテム。これは、サミットストアの取扱商品約1万2,000アイテムから販売量の上位3分の1をピックアップしたものである。商品の入れ替え、価格の変更は基本的に毎週1回行っている。価格については、目玉となる特売商品は店舗と同レベル、それ以外は店舗より若干高めに設定している。なお、商品代金以外にも1回の購入代金5,000円以上の場合300円、同5,000円未満の場合500円の「買物代行・宅配手数料」を設定している。
 注文は24時間受け付けており、時間帯により、受注後、最短2時間から最長4時間で配達している。翌日分の注文も可能であり、配達時間帯の指定も受け付けている(図表1)。

【図表1】注文時間帯と配達時間
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 注文が届くと、専任のパートタイマーが店内の売り場から商品をピッキング。常温、冷蔵、冷凍の3温度帯別に梱包し、業務委託している配送会社が配達を行う。2007年11月現在、2拠点合計でパートタイマー10名、配送車5台という体制だ。
 代金決済方法としては、クレジットカード決済と代金引換の2通りを用意している。サービス開始前は、個人情報を送信することの抵抗感から代金引換が大半を占めることを予想していたが、クレジットカード決済利用者も比較的多く、全体の45%程度を占めている。

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「サミットネットスーパーらくちん君」のトップページ。ネット会員には、店舗とは異なる専用ポイントシステムを用意している

新聞折り込みチラシを中心に会員を獲得

 会員の獲得手段の中心となっているのは月1回配布している新聞折り込みチラシ。そのほか、エリア内店舗や駅などへのポスター掲示、チラシのポスティング、タウン誌への広告掲載、FM世田谷でのラジオCM、世田谷区内を対象とするターゲティング・メールなど、対象エリアに限定して周知を図れることを条件にさまざまな媒体を利用している。
 2007年11月現在、会員数は約3,800世帯。これは世田谷区の全世帯約43万の1%弱に当たる。当面の目標は全世帯の1%以上の獲得であるが、現在の増加ペースから考えて、2008年度中には達成できる見込みだ。なお、属性的には30~40代の主婦で、小さな子どもを持つ世帯が多い。なお、同事業の展開においては、同社店舗が数多く存在する地域を対象エリアに設定していることから、店舗販売との自社内競合が危惧されたが、現状では会員の8割弱が拠点店舗の商圏外の世帯であり、新規顧客獲得効果のほうが大きいようだ。
 利用件数は、例えば2007年11月では1日当たり60件前後。会員の40%以上が月2回以上利用しており、最高では月に13回の利用があった会員も存在するとのことだ。利用が増加するのは、新聞折り込みチラシの配布後、雨の日など。曜日としては、土・日・月曜日の利用が比較的多い。なお、同社では、現状の2拠点体制における当該事業の採算ラインを140件/日の利用と考えており、さらなる新規会員の獲得と同時に、週1回配信しているメールマガジンなどにより既存会員の利用促進を図ることで、これを実現していく考えである。
 実際に購入されている商品としては、売上高ベースで3割弱を生鮮食品が占めている。そのほかでは、1.5~2.0リットルのペットボトル飲料やビール、米など重量がある商品、トイレットペーパーやティッシュペーパーなどかさばる商品の注文も多い。注文1回当たりの平均単価は6,000円前後となっている。
 会員サービスとしては、前述のメールマガジンの配信のほか、ポイントサービスを実施している。これは200円の利用について1ポイントが付与され、次回以降の利用時に1ポイント=1円として使用できるというもの。なお、同社では店舗でも「サミットポイントカード」によるポイントサービスを実施しているが、店舗販売とネットスーパーは別事業であるという観点から、現状ではポイントの統合などは行っていない。
 今後の課題としては、対象エリアの拡大、マーチャンダイジングの強化、Webサイトの改善などが挙げられている。
 対象エリアに関しては、2008年4月から杉並区に拡大することが予定されている。その後も「サミット」のブランドイメージの確立度合いなどを見極めながら、エリア拡大を検討していく意向だ。
 マーチャンダイジングについては、比較的富裕層が多いという対象エリア居住者の属性に合わせ、高級志向の品揃えを強化していく方針である。
 また、Webサイトについては、恒常的に改善を加え、お客様が使い勝手の良いサイトを実現していく考えだ。また、更新頻度もできる限り増やすことで、常にフレッシュな売り場づくりにも取り組んでいく意向である。

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チラシを配布し、新規顧客獲得を行っている


月刊『アイ・エム・プレス』2008年2月号の記事