既存チャネルを活かしつつ販売店主体の通信販売を実現

コクヨS&T(株)

文具販売店が、顧客企業へカタログやネットを介した通信販売を行う際に、システム面や物流面をサポートするオフィス用品購買システム「@office」。費用負担を上まわる売上増大効果をもたらし、販売店からも好評を得ている。販売店主体の通信販売を実現するインフラを提供することで、既存チャネルとの関係性を保ちながら顧客企業の利便性向上も実現している。

競争が激化する文具業界 購買システムの導入で差別化を図る

 日本最大の総合オフィス用品サプライヤーであるコクヨグループにおいて、文具まわりの商品開発や販売を行うコクヨS&T(株)。紙製品、文房具、筆記具、PC関連用品の製造・仕入れおよび販売をはじめ、文書管理に関するコンサルティングやシステム提供など、そのサービス範囲は多岐にわたる。
 法人向けオフィス用品購買システム「@office(あっとオフィス)」の普及・促進も同社が提供するサービスのひとつ。コクヨ商品を取り扱う販売店(文具店など)が、顧客企業に対してカタログ販売やネット販売を行う際に、システム面や物流面をサポートするサービスである。
 このサービスが生まれるきっかけとなったのは、1990年代後半に外資の文具小売店が相次いで参入し、大型店舗の出店や通信販売に乗り出したことで、文具業界内の競争が激化したことだ。国内でも“注文の翌日には顧客のもとに商品を届ける”という新しいビジネスモデルが一躍話題になった。
 しかし、同社はメーカーと販売店が共存していくことを重視した。そこで、“顧客フロント”としての販売店機能はそのままに“通信販売”を実現し、顧客の購買コストを削減する仕組みとして「@office」を開発。このシステムの導入で、他社との差別化を図った。

物流や問い合わせ対応を一元化して業務効率化を実現

 @officeの前身である販売店支援サービスは、1998年にカタログ販売支援からスタートした。同社でカタログを製作し、販売店経由で顧客企業へ配布した後、FAXでの注文受付を一元的に代行することで、販売店の業務効率化を実現するというものだ。
 現在の@officeになったのは2002年のこと。基本サービスは4つであり、①カタログ作成サービス、②販売店専用Webページを実装したネット通販サービス、③物流代行サービス、④顧客からの問い合わせ対応(カスタマーセンター)サービスで構成されている。
 ①のカタログは、1万7,000品番の品揃えで展開。価格の決定権は販売店にあるため、カタログ上に掲載されているのはメーカー小売価格だけで、実際の価格は②に後述するWebページなど、販売店で独自に告知可能にしている。また、環境問題に留意する企業が増えてきたという販売店からの情報に対応し、1万品番からなる環境対応商品と定番品を掲載したエコロジーカタログも用意された。
 ②の販売店専用Webページは、ネット上で既存流通を支援するサービスである。販売店が顧客企業向けに専用ページを用意し、価格を自由に設定できることが特徴で、顧客企業はサイト上で注文まで行うことができる。これにより、販売店が主体となって通信販売を行うことを実現させた。カスタマイズ機能にも優れており、販売店が提供するほかの商材(内装工事など)も案内できるなど、自由度の高い設計になっている点も好評を博している。また、自社サイトへのリンクも可能としていることから、顧客企業には販売店のページの一部として映るため、販売店が提供するページとして一体感を持たせることができる。
 ③の物流代行は、インターネット、FAXからの注文を一元的に受け付け、発送作業まで行うもの。従来は販売店が顧客企業に訪問をして注文を受け付けていたが、カタログやネットを通じて顧客企業が直接注文することが可能になった。現在の受注チャネルの割合は、インターネットが60%、FAXが40%である。
 ④の問い合わせには、コールセンターで一元的に対応している。電話での受付時間は、平日の午前9時から午後6時まで。業務の効率化だけではなく、商品知識を持ったオペレータが対応するため、専門的な問い合わせに応えられるなどのメリットもある。このほか、インターネット、FAX、eメールでの問い合わせは24時間受け付けている。
 また、「購買管理ソリューション」として、企業内での購買管理業務をスムーズにするために、上司への承認機能・検収機能や、注文履歴データの提供、購入頻度の高い商品を「お気に入り」に登録する機能など、利便性の高いサービスを提供することで、競合他社との差別化を図っている。

スクリーン 1 スクリーン 2

@officeのトップページ。商品を注文するだけでなく、カタログに載っていない新商品の案内や面白くて役に立つ商品マメ知識など、情報が満載だ(写真左)/ @officeでは、CSRを配慮した「グリーン購入」を積極的に推奨している(写真右)

営業パフォーマンスが向上 2ケタ成長を続ける@officeビジネス

 @officeの導入にあたり、販売店は費用を負担することになる。販売店にとっては今まで不要であった費用が発生するが、@officeを導入すれば、営業本来の提案業務に専念できるため、これまで配送業務も担っていた営業スタッフのパフォーマンスが向上するほか、一方で顧客企業の購買業務も効率化できるため、顧客満足度も合わせて向上することができる。同社ではこれらの利点を説明することで導入を促進。導入した販売店からの評価は高く、投資を十分に回収できるだけの売り上げ増大に貢献しているという。文具販売店の店舗総数の減少に伴い、自社製品を扱う店舗が減りつつある競争の時代において、他社との差別化策としても役立っているようだ。こうして販売店への@officeの導入数は順調に伸びており、このビジネス自体は2ケタ成長を続けているという。
 @officeの普及は、コクヨグループの販社を通して行われている。同社は販社に対する営業支援策として、各種売上分析や掲載商品追加・更新情報、販促ツール、営業提案ツール、新機能マニュアルなどを提供。さらに、頻繁に販社からニーズを吸い上げるなど、さまざまな工夫を凝らすことで、このビジネスを活性化することに気を配っている。また、参加販売店向け専用サイトも立ち上げており、定期的に参照してもらえるようにしているほか、顧客企業向けのメールマガジンの発行や、お勧め商品を掲載したチラシの提供など、販売店支援メニューも充実させているとのことだ。
 このように、同社では常に“顧客の声”に耳を傾けながらビジネスモデルをブラッシュアップすることを、何よりも重視している。顧客の満足度を向上させることが、結果として“顧客フロント”に対する支援につながっていくのは間違いない。


月刊『アイ・エム・プレス』2007年4月号の記事