ポイントカードと連動したキャンペーン展開で来店率を向上

(株)東急ハンズ

2004年4月、ファン層の拡大とコミュニケーション深化を目的に「ハンズクラブカード」制度を開始した(株)東急ハンズ。会員向けに年3~4回ほど全店共通のキャンペーン情報をDMにて告知するとともに、各店舗の販促チームが地域に密着した情報でDMを企画・実施。セグメントした顧客に積極的にDMを送付し、高い来店効果を上げている。

ハンズクラブカードの導入により紙DMやeメールの利用を開始

 暮らしに役立つ生活雑貨から道具・工具、ホビー・クラフト用品まで、創造性豊かな商品を数多く取り揃える(株)東急ハンズ。こだわりの品揃えが支持され、店舗に足繁く通う熱烈なファンが存在することは周知の事実だろう。
 2004年4月、これらのファン層に向けて作られたのが「ハンズクラブカード」である。購入金額100円ごとに、その1%がポイントとして貯まり、累計ポイントに応じてお買い物チケットやオリジナルグッズと交換できる。同カードはフランチャイズの名古屋店および名古屋ANNEX店を除いた13店舗に導入されており、発行開始から2年半が経過した今日では、約90万会員を集めている。今日はレジや専用カウンターにてカード加入を促進するなど、会員数の拡大に力を入れている。
 同社では、入会時に希望した会員に対して紙のダイレクトメール(以下、DM)やeメールによる情報提供を行っている。DMの希望者が多いのに対し、eメールの希望者はまだ少ないのが現状だ。
 同社では各店舗が予算を持って独自に仕入れや販促活動を行っていることから、DMやeメールも基本的には各店舗で企画する。DMはキャンペーン情報が中心、eメールは季節ごとの商品情報が中心だ。これらの販促活動は社内Webに公開し、キャンペーン内容、クリエイティブ、リストの抽出条件、実施結果情報を全社的に共有化。本社に設置したハンズクラブカード事務局では各店舗の配信作業の取りまとめなどを行うとともに、全社的に統一したDMキャンペーンを試みている。

事務局では休眠顧客の掘り起こしを強化 各店舗では地域密着型のユニークな企画も

 事務局では“全社統一キャンペーン”として、これまでに春の新生活、夏・冬のボーナス商戦に向けたDMなどを実施した。当初はアクティブな顧客に絞って30万通ほど送付していたが、2006年10月以降のDMでは休眠顧客の掘り起こしを狙って送付対象を拡げた。結果、1年ぶりに来店した会員がいるなど、再来店の促進につながったという。また、ポイントは取得後2回目の3月末で失効するシステムになっているので、3,000ポイント以上の保有者に失効前のお知らせDMを送付した。結果、再来店促進につながったものの、3,000円相当のプレゼント獲得権利があるにもかかわらず、失効を迎えてしまった会員も存在したという。
 各店舗ごとに展開しているDMでは、地元のプロ野球観戦チケットプレゼントを絡めた地域密着の企画や、手書き文字の導入、特定の商品購入者に絞り込んだキャンペーン展開など、店舗ごとに趣向を凝らした企画が目立つ。
 同社ではこのように、さまざまなDMキャンペーンを試みているが、レスポンス状況を見ると“ボーナスポイントを加算するキャンペーン”の来店率(反応率)が総じて高い。通常の来店率は10~15%であるが、過去に行ったポイントアップキャンペーンでは35%を記録したこともあるそうだ。
 効果測定に当たっては、来店率や客単価、さらにはDMを送付したことによる利益の増加額を参考にしている。キャンペーン期間が長い時には、来店頻度もこれに加える。DMの形状では、費用効率の高いハガキの利用が中心。わざわざ封筒を開けなくてもキャンペーン内容が一目瞭然なので、効果が上がりやすいと見ている。
 リストのセグメントについては、同社が扱う商品の性質上、欲しい時に目的を持って訪れる顧客が多く、そう頻繁には来店しないことから、購入額より来店頻度を重視している。また、企画内容に応じて、過去の購入商品、年齢、性別などでセグメントを行う。これまでの例では、製菓器具購入者にクリスマスやバレンタインデーに向けたお菓子作りを訴求したDMを送付する、パスタ作りの器具購入者にそば打ち体験教室への参加促進DMを送るなど、企画に合わせたセグメンテーションによって効果を上げているそうだ。今後は、自転車購入者には部品、浄水器購入者にはカートリッジ、製菓材料購入者には粉類など、購入商品に関連したリピート商品のDMを強化していく計画だ。
 各店企画DMの発信数は1回当たり1,000~3,000通を目安にしている。まず特定商品の購入者に絞ってコア・ターゲットを抽出、その後、周辺商品までターゲットを拡げる。特定商品の購入者のみでは発信数が限られて発信単価が上がってしまうため、投資対効果を検証しつつ発信数をコントロールしているのだ。
 このように、同社では全社と店舗で企画を併行して展開しているため、少なくとも1カ月に1度は会員の手元に何らかのDMが届いているようだ。

目指すは欲しいタイミングに欲しい情報が届くDM

 DM戦略における今後の課題は、顧客の欲しい情報を欲しいタイミングで送ること。現在は売り上げへの直結を狙ったキャンペーン企画が中心であるが、今後はリレーションを重視し、例えば季節に合わせた情報を届けるといった企画にシフトしていきたいとしている。そのために、会員にDMを送付して欲しい店舗や送って欲しい情報の分野を選んでもらうことも視野に入れている。しかし、このような情報提供を行うには、投資対効果から見てある程度のロットが必要。また、購入商品でセグメントする際には商品の品目が多岐に渡るために、効果的な分類が難しいという課題がある。
 一方、同社では、POSレジとポイントシステムの連動を推進しているが、現時点でこれを実現しているのは一部の店舗に限られている。これは3年ごとに効果を検証しながら見直すという同社の方針によるもので、3年目を迎える2007年には次なる戦略を打ち出す計画。具体的には、これまでの取り組みを検証した上で「ハンズならではの企画」を打ち出していく構えだ。

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これまでに事務局から送付したDMの数々。各店舗が展開したDMは、社内イントラネットで閲覧が可能になっており、販促活動の情報共有化を図っている


月刊『アイ・エム・プレス』2007年2月号の記事