効率性を重視し、販売チャネルを通信販売に限定 データマイニングでさらなる顧客満足向上を目指す

新日本製薬(株)

新日本製薬(株)は、健康食品や医薬品、美容品を通信販売により提供。2006年度の売上高は前年同期比185%の伸びを記録するなど、急成長を遂げている。コールセンターやアンケートへ寄せられた顧客の声からなる「態度データ(テキスト)」をデータ分析の変数に加え、顧客満足や非購入の理由を把握することに成功している。

2006年度は売り上げ185%アップ 顧客満足・不満足要因の特定を推進

 「One to Oneヘルスケア」をコンセプトに掲げ、注文商品をお届けするだけではなく、お客様の体質や持病などを把握し、予防を促すことによって健康管理を総合的にサポートしている新日本製薬(株)。健康食品、ダイエット食品、医薬品、美容品を通信販売により提供する同社の2006年度の売上高は85億円。前年同期比185%の伸びを記録している。
 同社の設立は1992年。現在も主力商品である、ダイエット茶の「極選上海康茶」の製造販売からスタートした。当時、販売チャネルのなかった同社がこのお茶の販売方法として採用したのが、フリーペーパーを媒体とする通信販売。同社の本拠地である福岡でフリーペーパーが盛んであることが決め手となった。その結果、反響が上々であったことから販売チャネルを通信販売に絞ることを決定し、コールセンターなどの受注体制を構築。個人情報保護の観点からセキュリティを重視した独自開発のシステムを導入した。現在では120席からなるインハウスのセンターを運営し、インバウンド70名、アウトバウンド30名のコミュニケータが顧客対応を行っている。
 また、さらなる「顧客満足度の向上」を目指して高度な分析を行うために、2006年7月にはSPSS社のデータマイニングツール『Clementine』を導入。属性、取引履歴、キャンペーンなどの施策への反応を数値化した行動データのほか、コールセンターやアンケートに寄せられた顧客の声からなる「態度データ(テキスト)」を変数に加えることにより、これまで把握しきれなかった顧客満足や非購入の理由が特定できるようになったという。

「費用対効果」を徹底追求し媒体間の相関など緻密な分析を行う

 同社のマーケティング戦略は、新規顧客獲得効率の最大化とリピート率向上の大きく2つに集約される。
 前者の施策としては、広告媒体にテレビ、ペーパーメディア、Webを採用。年間約30万人の新規顧客を獲得している。媒体予算の70~80%を費やしているテレビでは、コマーシャルではなく主に29分枠のインフォマーシャルを放映している。これは、購入後の効果を顧客にイメージしてもらうのに最適の媒体だととらえているからだ。また、媒体の選定に当たっては、最低でも売り上げが媒体費用を上回ることを基準とし、効果測定にはMR(Media Ration)、CPO(Cost Per Order)、RR(Response Ration)などの指標を使用。費用対効果を徹底的に追求している。
 さらに、先に述べた『Clementine』を使用してクリエイティブ分析や媒体間の売上相関などの高度な分析を実施。例えば、同じ内容を訴求するにしてもさまざまな表現を試みているが、それぞれのヘッドコピーやビジュアルなどを数量化してレスポンスへの寄与を分析するなど、多面的な角度からクリエイティブの分析を行っている。ちなみに媒体間の売上相関分析では、テレビ放映後に折込チラシを配布した方が折込チラシ単体の配布よりもレスポンスが高い、という結果が導かれた(資料1)。

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継続購入や離反防止策を講じリピート率向上を図る

 リピート率向上の施策としては、インバウンドで注文いただいた際に、コミュニケータが「定期購入コース」への入会をお勧めしており、既に「定期購入コース」の利用者は約10万人に達している。さらに、この定期購入者に対して①新商品やお勧め商品を案内したDMキャンペーン、②継続的にコミュニケーションをとるための会員誌の送付、③顧客満足度向上や離反対策を目的とした満足度アンケートを実施。活性化が見込める顧客には「商品Aに合わせて商品Bを勧める」といったアウトバウンドを行い、長期継続や購入金額の向上を狙ってあらゆる角度からアプローチを行っている。
 ①と②については配布媒体ごとにレスポンス率の測定やRFM分析を行い、各施策の効果を評価。また、ここでもデータマイニングを活用し、「購入に結び付く顧客か否か」「休眠状態から復帰する顧客か否か」などを予測。あらかじめ購入しそうな顧客をセグメントした上でDMキャンペーンを実施することにより、費用対効果の向上に加え、これまで特定できなかった顧客特性の把握を実現している。
 ③についても興味深い結果が出ている。同社のコアの顧客層は40~50代の主婦。一方で、アンケートの回答者はリピート率の低い20~30代の女性が中心。従って、このアンケート結果の分析を行うことにより、継続購入への阻害要因や離反要因を特定するのに役立ったという。また、回答率の低い顧客を休眠の一歩手前ととらえ、対策を講じたいとしている。
 そのほかにも、継続購入しにくい「ダイエット商品」を継続性の高い「健康食品」へスイッチさせるためにDMやアウトバウンドを実施しているが、その際の有望顧客の抽出にもデータマイニングが活用されている。

新日本製薬

同社Webサイト。「テレビや雑誌で話題沸騰のためキャンペーン実施中!!」というコピーが目立つ

通販形式での“かかりつけ”を目指す

 健康志向が高まる中、顧客の健康管理を総合的にサポートする同社。これまで医薬品については自社製品を扱っていなかったが、今後は「病気予防」の観点から通販における“かかりつけ”を目指し、自社製の医薬品事業を積極的に展開していきたいとしている。そのために、どのような健康状態のお客様にどのような商品をお勧めするのが適切か、顧客のパターンに応じた対応方法をコールセンターシステムと連動して構築していくことが課題となっている。
 精緻な分析に着手し、医薬品事業を拡大するなど、次々と新たな取り組みにチャレンジし、2010年には売上高を300億円規模にまで伸ばしていく構えだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2007年1月号の記事