独自の技術を活かし“健康”分野へ参入 長期的視野でビジネスを構築

サントリー(株)

サントリー(株)は、2000年から健康食品の通信販売に本格参入。現在、約30アイテムのオリジナル商品を販売している。マス媒体中心に新規顧客を開拓。緻密な事業計画の下、収支をコントロールしながら事業をスタートし、3年目で黒字化を果たしている。

新たな事業部を立ち上げ通販に本格参入

 サントリー(株)の健康食品事業は、そもそも同社健康科学研究所がゴマの栄養成分からセサミンを発見し、これをサプリメントとして商品化したことに始まる。当初は、同社商品を取り扱っている酒販店での店頭販売などをテストしたが、試行錯誤の結果、個人のお客様にダイレクトに通信販売することを決定。“健康”を核に企業ブランドを構築していこうという中長期の経営方針に則り、新たに健康食品事業部を立ち上げ、2000年より本格的な取り組みを開始した。
 現在、同事業部スタッフは商品開発の担当者も含め総勢50名。コールセンターなど受注チャネルやフルフィルメント部分はアウトソーシングしている。
 取扱商品は、もっとも販売量の多い「セサミンE+」をはじめほとんどがオリジナル商品。R&D部門が素材の探索からはじめて、効果と安全性の検証を行い、市場性の検討を経て商品化が決定されたものである。
 現在の品揃えは、「セサミンE+」のほか、「ローヤルゼリー+セサミンE」「グルコミンサン&コンドロイチン」「マカ」など約30アイテムを数える。価格帯は1,050円~1万8,900円(税込み)。毎日、摂取することを前提として1カ月・約30日分が容器に納められている。

マス媒体によりワンステップで顧客開拓

 新規顧客獲得における利用媒体は、当初は新聞と折込チラシからスタートしたが、現在は、新聞(主要紙すべて)、テレビ、折込チラシ、フリーペーパーへと利用媒体を拡大している。出稿量が多いのは新聞の全5段広告と折込チラシ、テレビのインフォマーシャル。利用媒体によって注文のミニマムロットが異なり、テレビでは約3カ月分となっている。
 効果についての詳細は非公表だが、競合が激化しているため、全体的に媒体効率は低下ぎみだという。CPO(Cost Per Order/1注文当たりのコスト)は大まかに見て2万円くらいとのこと。初期のころは、マス媒体によるサンプル請求者に購入を訴求するツーステップ方式が多かったが、現在は、商品のブランド認知が進みワンステップでも売れるようになってきたことから、ワンステップを主体にした戦略へシフトしているという。購入者に携帯用のサプリメントケースをプレゼントするなどのオファーをつけるケースが多いようだ。

定期お届けコースにより継続摂取を促進

 既存顧客に対しては、商品ごとのフォロープログラムを展開。商品によっても異なるが、基本的には購入の数カ月後にDMを送付。健康食品の場合、「買ったことを家族に知られたくない」という方もいるため、外封筒に記載する表現には十分配慮しているという。また、“健康維持”への関心の高い方に納得して買っていただくことを主旨としているため、スポット的な値引き販売は積極的には行っていない。これは、値引きに伴うまとめ買いが発生し、安定的な売り上げの獲得がままならなくなるためだ。
 DM送付は、顧客の最終購入日から1年間。1年を超えると、アプローチしても高レスポンスは期待できないという。継続率は比較的高く、1年間で約50%。2年目以降は約80%をキープしている。つまり、開拓した顧客がリピーター化するかどうかはほぼ1年で確定するというわけだ。「リピートへの訴求が消極的」という認識はあるが、 “押し売り”を避ける意味で、ある程度の離脱はやむを得ないとの考えだ。このため、新規顧客の獲得には常に注力しており、前述のとおり利用媒体も幅広い。
 リピートの傾向は個人差が激しいが、経済的な要因にはそれほど左右されないものと見ている。また、リピート率は商品によって違うが、具体的に症状があって摂取する商品の場合は、その症状が消えると摂取を中止しがちであることから、健康維持のために摂取する商品のほうがリピート率は高い傾向にあるという。
 現在、継続的な摂取意志がある顧客へのサービスとして、「定期お届けコース」を用意。①通常価格の10%割引、②毎回の送料無料、③携帯用のサプリメントケースプレゼント、④当該商品以外を注文の場合も通常価格の10%割引の4つの特典を提供している。
 このほか、いろいろな商品を気軽に試したいという顧客を対象に「まとめ買い割引サービス」を提供している。これは、1,050円~2,635円(税込み)の対象商品を好みに応じて組み合わせ、合計金額が8,400円以上に達した場合、5%割引で購入できるというものだ。

コンタクトチャネルの中でもコンタクトセンターを最重要視

 受注方法は、はがき、FAX、電話、Webサイトの4種類で、初回注文時の媒体ごとに比較的固定している傾向が強い。構成比は非公開だが、電話での注文が最も多いことから、同社ではコンタクトセンターでの顧客対応の質を非常に重視している。前述の通り、受注・問い合わせへの対応はアウトソーシングしているが、専門的な問い合わせについては、社員が二次対応を行っている。
 また同社では、既存顧客を対象に、すこやかな暮らしの提案を行う情報誌「美感遊創」を月1回送付している。内容は、健康に関する情報や愛用者のお便りのほか、時節にまつわる読み物的な情報となっている(写真)。

サントリー

情報誌『美感遊創』。紅葉の美しい寺院を紹介する「週末のイキイキ自分時間」や食材やレシピを紹介する「旬の歳時記」など読み物要素が強い

 商品は、注文してから3~5日後に到着。購入金額が5,000円(税込み)未満の場合のみ、350円(税込み)の送料が顧客の負担となる。決済方法は郵便振替が最も多く、続いて代引き、クレジットカードの順。顧客層は30代から80代まで幅広い。平均客単価は約7,000円~8,000円とのことだ。

3年目で黒字化を実現 お客様基点でさらなる戦略を模索

 現在、立ち上げから6年目を迎える同社健康食品事業部だが、当初は赤字見込みでスタートし、3年目の2004年度に黒字化を果たした。広告投資の回収までに時間が必要な構造が社内に理解されづらかったが、常に目標CPOを設定すると同時に、年次の予算でマックスの赤字額を設定してきた。また、健康食品の購買行動は目的買いに近いため、商品ごとにフィットする媒体が異なる。各商品に適した媒体を選択し、テストを繰り返しながら広告投資を積み重ねてきた結果が今につながっていると担当者は語る。
 今後は、健康相談の電話窓口を強化し、カウンセリングを含めた健康に関するトータルなソリューションを提供していきたいとする同社。まだまだ未開拓な個人市場に対してアプローチし、新規顧客獲得を推進するとともに、情報過多な時代、玉石混交の商品ジャンルだからこそ、「サントリーの健康食品」というブランドを強みに、情報発信していきたいとしている。
 また、ダイレクトマーケティングはモノ基点ではなくお客様基点。既存ビジネスモデルとは収益構造が異なることをこの数年間の実践の中で学んできた。今後は、これまでは行っていなかった各種テレマーケティングの試行や、これまでとは違う内容・タイミングでのDM送付などにより、顧客との関係をより深めていく意向だ。


月刊『アイ・エム・プレス』2007年1月号の記事