システムの見直しを通してより良い情報提供サービスを目指す

成田国際空港(株)

成田国際空港(株)では、電話問い合わせの大半を占めるフライト情報の提供にIVRを活用し、大きな成果を上げている。受付窓口となるテレホンセンターの応対件数は、導入前に比べ倍近い数字となった。さらに、合成音声による案内を録音音声に変更することで、「聞き取りにくい」というお客様の指摘も改善。この5月には、電話番号を統一し、お客様への情報提供サービスの充実を図っている。

“空港の顔”として「テレホンセンター」を設置

 1978年5月20日のオープン以来、28周年を迎える成田国際空港。オープン当初、1日167便が離発着し、航空旅客数は約2万人を数えた。2002年に暫定滑走路が供用された時には、1日490便が離発着し、航空旅客数は約8万2,000人にまで増加、年間の利用者数は約3,000万人に達した。2005年には、1日515便が離発着し、航空旅客数は約8万6,000人、年間の利用者数は約3,144万人にまで増えている。空港の設置および管理、運営を行ってきた「新東京国際空港公団」は、2004年4月に、「成田国際空港(株)」(NAA)としてスタートを切った。
 同社の事業にとって、お客様サービスの向上は重要なテーマのひとつであり、空港を利用されるお客様への情報提供サービスは、そのために欠かせない要素である。同社では開港当初から“空港の顔”として「ご案内センター」および「テレホンセンター」を設置し、お客様に案内サービスを実施してきた。テレホンセンターの主な業務は、電話によるフライト情報の提供であるが、施設案内、駐車場案内、拾得・遺失物など各種問い合わせにも対応している。
 開港当初、テレホンセンターでは、オペレータ2名でお客様からの問い合わせの対応に当たっていた。その後、1994年には、航空旅客数の伸びに伴い、問い合わせ数が増えてきたことから、外線7回線・オペレータ7名に体制を拡充した。しかしながら、1998年になって、「電話がつながりにくい」という苦情が多く寄せられるようになったため、同社では、電話のトラフィックや問い合わせ内容に関する調査を実施。フライト情報に関する問い合わせが8割以上と大半を占めていたことから、フライト情報に特化したかたちであれば、IVRで対応できると判断。1999年4月から、外線数を16回線に増やすと同時にIVRを導入し、お客様案内サービスの充実に努めた。

お客様からの声をもとにガイダンスフローの見直しなどを行う

 IVR導入後のテレホンセンターのコールフローは、音声ガイダンスに従って、問い合わせ内容がフライト情報なのか、そのほかの内容なのか、あるいは英語による案内が必要かを選択する。フライト情報は、コンピュータによる合成音声あるいはファクスで提供され、そのほかの問い合わせの場合はオペレータに転送される仕組みだ。
 IVR導入の効果は即座に表れる。オペレータのみで対応していた当時の電話受付件数は月間約8万3,000件(フライト情報は、このうち約7万4,000件)だったものが、4月には一気に約11万7,000件まで増えた。ただ、この内訳を見てみると、オペレータ対応が約3万4,000件、IVR対応が約8万3,000件ということで、オペレータが応対した件数は約5万件を下回った。また、1999年10月に行った調査によると、IVRで対応できた着信が全体の約7割に達しているという。
 このように、「電話がつながりにくい」というお客様から寄せられた声を改善できただけではなく、オペレータの負荷軽減も実現するなど、同社ではIVR導入の成果を高く評価していた。ただし、IVR導入に伴う問題点がなかったわけではない。同社によると、「コンピュータによる合成音声が聞き取りにくい」「ファクスの出力に時間がかかり過ぎる」というお客様の声が寄せられたことと、音声ガイダンスが「長い」「案内がわかりにくい」という指摘があったという。
 そこで同社では、コンピュータによる合成音声の一部を肉声に変更するなど、少しずつ改善を施していった。こうした中で、2000年4月に、IVRのコールフローの大幅な見直しを行った。具体的には、航空機運航案内後にオペレータに接続できる機能・案内を追加。出発便、到着便の案内を分けたほか、(発着)予定時刻未定の場合の案内をわかりやすくし、オペレータ接続を容易にした。また、航空機便名の入力が「001便」の場合、「001」でも「01」でも「1」でもわかるよう、認識能力を向上。また、さらなるコール数に対応するため、空港内に設置されている無料電話から発信された内線通話に対してもIVRを追加した。これにより、外線数16回線に加え内線数4回線、合わせて20回線に回線を増やす一方、オペレータ総数は7名から5名に削減した。
 さらに同社では、2003年4月、2度目のIVRのコールフローの改修を行う。コンピュータによる合成音声をすべて肉声に切り換えるとともに、音声ガイダンスのフローを見直し、ステップ数を削減した。具体的には、フライト情報へのアクセスをよりスムーズに行えるよう、最初のガイダンスで「出発予定時刻」「到着予定時刻」を選択できるようにした。こうした変更により、お客様からの指摘件数が減少し始めたのである。

電話番号を統一しワンストップサービスを実現

 同社では、この5月1日から、テレホンセンターの名称を「NAA成田国際空港インフォメーション」に変更すると同時に、お客様に案内する電話番号を「0476-34-8000」に統一した。
 従来、電話番号は、フライト情報や施設案内、駐車場案内、拾得・遺失物などそれぞれ異なっていた。このため、お客様が問い合わせる内容と異なる番号に電話を掛けてしまった場合は、該当する番号に転送するか、改めて電話を掛け直していただくしかなかったのである。そこで、電話番号を統一することにより、お客様の掛け直しの手間を省き、ワンストップサービスを実現。また、IVRのコールフローの簡易化を意識し、最初の選択肢を「出発予定時刻」「到着予定時刻」「その他の情報」「その他の情報(英語)」の4つにまとめた(図表1)。これと同時に、局線数も20回線から24回線に拡張し、それに併せて集中コールに対応できるようにオペレータに直接つなげる回線をこれまでの8回線から16回線に増設し、オペレータも5名から7名に増員した。これにより、電話番号を統一する前の4月にはオペレータ対応件数が約1万6,000件だったものが、5月には約2万6,000件と大幅に増えたものの、平均待ち時間は4秒と統一前とほとんど変わらずに運用している。

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 同社では、今後も顧客満足度のさらなる向上を目指し、お客様案内サービスの改善を図っていくとしている。また、フライト情報以外の一般の問い合わせについても定型化できるものは定型化するなど、IVRの運用方法についてもさらに工夫を凝らしていく意向だ。


月刊『アイ・エム・プレス』2006年12月号の記事