フリーダイヤルからのあふれ呼をIVRに誘導し呼損率を低減

損保ジャパンひまわり生命保険(株)

2004年、控除証明書発行時のコール増に対応するかたちで、IVRによる手続き専門ダイヤルを開設した損保ジャパンひまわり生命保険(株)。同社はその後、対応範囲の拡充をはじめとするさまざまな取り組みにより、対象サービスにおいて、約10%をIVRへと移行することに成功した。

呼損率低減を狙いIVR専用ダイヤルを設置

 損保ジャパンひまわり生命保険(株)は、日本で初めて終身保障の医療保険を開発し、終身医療保険のパイオニアとしての地位を確立、また「無解約返戻金型収入保障保険(新・お給料保障プラン)」や女性のための入院保険「フェミニーヌ」など各種保険商品を幅広く提供している。2002年からは、「リスクと資産形成に関する総合サービスグループ」である損保ジャパングループの生命保険事業を担う企業として事業を展開。2005年度の保険料等収入は2,554億円で、前年比12.2%増を達成している。
 同社の主な販売チャネルは、代理店、専門知識を有する営業社員「ライフカウンセラー」、ダイレクトマーケティングの3つ。これに合わせて、資料請求や各種相談・問い合わせを受け付けるコールセンターも、代理店やライフカウンセラー経由のお客様を対象としたカスタマーセンターと、ダイレクトマーケティング経由のお客様を対象とした通販コールセンターの2つを設けている。ただしシステム上は相互受電できる仕組みで、現在、合計して約80名のスタッフが午前9時から午後5時まで対応している。
 同センターの大きな特徴は、年末調整や確定申告を控えて生命保険料控除証明書が発行される10~12月にコール数が増えることだ。その原因は、契約者からの控除証明書の再発行や住所変更などの各種手続きの依頼にある。この時期は通常で1日800件のところが1,600件とコール数が倍増。特定の時期に特定の用件のコール数が増え、呼損率が一時的にはね上がってしまう問題の解決策として、IVR導入が検討された。
 また、電話がつながりにくい状況はお客様の不満を招く。グループで推進する顧客満足度(CS)の追求やカスタマーセンターで取り組んでいる「ISO9001」に則った品質の継続的改善という観点からも、呼損率の低減は必須課題だった。
 そうした中、2004年9月、デジアナコミュニケーションズ(株)が提供するASP型のIVRサービス「アクセスネット」を採用し、控除証明書再発行専用の「お手続き受付ダイヤル」を開設。証明書発行の時期に差し掛かる少し前から、Webサイトで告知したり、契約者に対して年1回発行する「コミュニケーションブック」に電話番号を記載するなどして認知向上を図った。
 当初は、一定期間のコール増へ対応する目的でIVRを導入したのだが、2005年6月にはお客様からの要望を基に、IVRの対応用件に「保険証券の再発行」と「保険料振替(引き落とし)口座の変更」、代理店からの入電に限っては「解約の受付」を追加。また、日中に通常の電話番号に掛かってきたコールも、あふれ呼の場合はアナウンスを流して希望者はIVRに転送できる仕組みに改善した。さらに2006年10月には個人のお客様にも「解約の受付」を開放するなど、徐々に対応範囲を拡大してきたのだ。

コール数が増加する中であふれ呼の削減を実現

 これらの取り組みの結果、対象サービスにおいて、約10%がIVR対応に移行した。顧客数の増大により、同社に寄せられるコール数はこの2年で約2割増加しているが、繁忙期の呼損率は2005年の15%から7%にまで低減した。この背景には、IVR導入当初は68名だったスタッフを80名に拡充したこともあるが、同時にIVRの功績も無視できない。年間のIVRによる対応件数の推移を見ると、通常時で月平均1,000~1,500件のところ、2005年11月には6,000件超に至った。一時的なコール増からくる呼損の解消にIVRが果たしている役割はかなり大きい。
 IVRでの対応状況は、契約者本人からの入電が約84%、代理店からが約14%。当初予測していた夜間や休日のコール数はそれほど多くなく、 日中、 特に午前中にフリーダイヤルからIVRへと流れているケースが多いようだ。また、2005年9月までの入電者別の手続き選択の割合は、 契約者本人からは 「口座変更」が61%、「控除証明書の再発行」 が25%、 「証券の再発行」が14%。代理店では、「解約」が37%、「口座変更」が8%、「控除証明書の再発行」が47%、「証券の再発行」が8%と、さまざまな手続きのニーズがあるそうだ。

IVRでの業務拡大を視野にさらなる効率化を追求

 同社ではこれまで、IVRで完了できる用件を追加するたびに、フローの改変を行ってきた。前述の通り、2006年10月に、契約者本人からの受電でも解約の受付を開始したが、この際にもIVRのコールフローを大幅に改変した(資料1)。以前は、フリーダイヤルからIVRに転送されたコールについては、代理店か、法人契約の担当者か、個人の契約者かをIVRのメニューに従って選択していただき、その上で用件を選択していただくという流れだった。しかし同業務の開始後は、お客様を問わず対応する用件が4つに統一されたことから、最初に用件を選んでいただき、その後にお客様を識別するという流れにフローを変更した。これによる効果の検証結果は取材時点ではまだ出ていなかったが、用件を選択する階層を最初のほうへ移動したことで、時間短縮や完了率への好影響などが期待できる。
 現在、同社が課題として挙げているのは、IVRによる完了率を高めることだ。現在の完了率は約30%。電話がどの箇所で切断されてしまったかの検証を重ねて、さらなる改善策を講じる意向である。ちなみに、未完了のうち最も多いのは、該当する用件がなかった場合にフリーダイヤル番号を案内するケース。この点については、IVRによる取扱業務以外の用件で電話を掛けてきたり、直接オペレータに問い合わせたいお客様もいることから許容される要素だと同社はみている。しかし、次に多い、IVRに転送した直後の「PBチェック」(プッシュボタンの操作確認)時点での切断については、そもそもIVRでの対応を望んでいないものと予測。
 システム上、いったんIVRに転送されてから同社のPBXへ戻れないこともあり、改善には障壁も大きい。また、住所変更と改姓など、複数の手続きが一度に必要な用件や、聴取項目の多い用件などは、メニューに載せるのは難しい。こうした阻害要因を認識しつつも、単一手続きで完結できる用件はIVRへと種目を増加していく意向には変わりない。例えば、コール内容の2割を占める「住所変更の手続き」などは、慎重な対応が必要ではあるが、IVR化を進めていきたい用件だと言う。同社では今後も、ASP型のIVRサービスという利点を活かし、より柔軟性の高い活用方法を模索していく。

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月刊『アイ・エム・プレス』2006年12月号の記事