顧客の店舗への誘導を使命にIVR主体の運用を実施

カーコンビニ倶楽部(株)

軽板金補修をはじめとする自動車に関連するアフターサービスを提供するカーコンビニ倶楽部(株)。同社のカーコンビニ倶楽部コールセンターは、顧客の店舗への誘導と苦情相談が主な業務だ。コール数の急増に伴い、オペレータによる人的対応からIVR対応に変更した。顧客満足度の向上を図りつつ、IVR主体の運用を実践している。

コール数が月平均1万件を突破し「話し中」になるケースが続出

 軽板金補修をはじめとする自動車に関連するアフターサービスをトータルに提供するカーコンビニ倶楽部(株)。2000年1月の会社設立以来、自動車整備工場・板金工場を中心に、全国規模でフランチャイズチェーン「カーコンビニ倶楽部」を展開している。現在、同社では、日本中のカーオーナーに価値あるサービス・情報を創出し続けるため、さらなる店舗数拡大を目指している。
 同社のカーコンビニ倶楽部コールセンター(以下、CCCコールセンター)は、社内で唯一の生活者向け問い合わせ・相談窓口として機能している。主な業務は、①TVCMやラジオ、雑誌などの広告を見て電話を掛けてきた顧客を店舗へ誘導するといった加盟店の集客支援、②サービス利用後の苦情相談(お客様相談室)の2つである。
 同社のCCCコールセンターは2000年2月に開設。オペレータ数13名(管理者1名を除く)でスタートした。開設当初は、24時間体制で常時2~7名の3シフト(早朝・日中・深夜)で対応していた。しかし、TVCM放映時の反響が大きかったことに加え、フランチャイズチェーン店の拡大に伴ってセンターに顧客からの問い合わせの電話が殺到したため、オペレータが受けきれないあふれ呼についてはアウトソーシング企業に転送するようにしたという。
 当時は、TVCM放映時の瞬間コール数(10分間)がローカルネットで10~30件、全国ネットでは100件を超えることもあり、月間では、2000年5月に約1万件に上り、同年6~10月も月平均約5,000~6,000件を数えた。そして、2001年には、月平均1万件に達し、アウトソーシング企業に転送していたあふれ呼も「話し中」になるケースが続出し、顧客から不満が出始めた。
 このような状況の中、2000年9月ごろ、TVCM放映時の対応についての打ち合わせ時に、アウトソーシング企業からIVR導入の提案を受けた。同社では、IVR導入を検討する中で、①24時間体制のため、コール数の少ない深夜・早朝といった時間帯にも人件費やマネジメントコストがかかる、②TVCM放映時などの集中コールへの対応強化などの課題を再認識し、顧客満足度を向上すると同時に、コストを削減すべく、IVRの導入に踏み切ったのだ。

試行錯誤を経てIVRに新機能を追加

 同社は、2001年1月に約2,000万円を投じてIVRを導入すると同時に、電話回線を7回線から24回線に大幅に増やした。これにより、深夜帯(午前0~9時)はオペレータ対応を廃止し、在籍するオペレータの総数を13名から8名に減らした。
 2002年2月には、IVR応答を段階的に進め、午後6時から午前0時までの時間帯をIVRに電話番号を入力してもらい、オペレータがお客様に電話を掛け直すIVRコールバックサービスに変更。そして同年4月に、午前9時から午後6時までの時間帯をIVRコールバックサービスに変えて、午後6時以降のオペレータ対応を廃止した。こうして1次対応を24時間IVRに切り替えたことで、オペレータの総数も8名から5名に削減。毎月200万円以上のコスト低減につながった。
 しかし、その後、顧客から“どんな傷をどこまで直せるのか”といった細かい問い合わせが多くなり、コールセンターに要求する内容が様変わりしてきたことを理由に、同社代表取締役社長の尾上正志氏がオペレータ対応の復活を決定。コールセンターの運営体制を再度見直すように指示したという。IVRは集中コールによる大量の受電に対応できるという点では優れているものの、IVR応答を継続していたのでは、潜在顧客を逃し、顧客満足度の低下を招きかねないと考えたのだ。もうひとつは、車検前に必ず、コンピュータによる車検料金・費用の見積りなどをする「ヤマト車検」という車検サービスを新しく開始するに当たり、カーオーナーへの認知度が高まるまでは、IVRによる対応ではなく、オペレータが対応したほうが顧客満足度の観点からも得策と判断した。
 しばらくして、全国のカーオーナーへの「ヤマト車検」の認知度も高まってきたことから、同社では、以前のIVRに新しい機能を追加することで、顧客満足度を維持できると判断。2003年6月に、再びIVR主体の運用を開始した。具体的には、「ヤマト車検」をスタートした当初、オペレータによる店舗紹介を行っていたが、それをIVR応答に変更。さらに、ファクスサービス機能を追加した。店舗を紹介する時に、「書き取れないので、ファクスによるサービスも提供してほしい」という要望が多かったためだ。
 そのほか、インターネットの利用者が増えていることを受けて、2002年10月からはネットでの店舗検索を開始。現在、ネットから直接店舗へ問い合わせができるファクスサービスの利用は、月平均60~80件を数えている。加えて、同社のブランド認知率の向上(大手広告代理店の調査によると96%、インターネット調査では100%)や実際の店舗数の増大に伴い、事前にCCCコールセンターに問い合わせることなく、直接、来店する顧客やリピート顧客も増加してきたことから、かつては月平均1万件を数えていたコール数は減少。現在では月に約2,500~3,000件(1日100コール前後)となっている。総コール数の50~60%を占める店舗所在地の問い合わせには、IVRによる店舗紹介で対応している。このため、オペレータ総数も4名(常時2~3名)に削減できた。

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顧客満足度を踏まえ人的対応を主体とした運用も視野に

 以前、同社のCCCコールセンターでは、サービス内容や店舗所在地の問い合わせが大半を占めていたが、現在は料金や修理時間(店舗の空き状況)に関する問い合わせが多くなっている。ちなみに、コールバックメニューを選択する顧客の大半は「料金について」だ。板金の修理料金は傷の状態によって変わってくるため、最終的には店舗へ誘導するオペレーションを実施している。
 また、IVRメッセージ案内中の切電率は約30%。ただし、オペレータによる対応時でも総コール数の10~20%程度は「途中で切れたり、いたずら」があったことから、同社ではIVR導入による悪影響はないと見ているという。
 今後、同社では、コールセンターに要求される内容の変化によっては、IVR主体の運用では十分とは言えなくなることもあると想定している。顧客満足度向上を目指すためには、オペレータ対応主体の運用も視野に入れて協議していくことも必要と考えているという。そこで今後とも、年2回実施する顧客満足度調査をもとに、IVR主体の運用を継続するかどうかを見直していく意向だ。


月刊『アイ・エム・プレス』2006年12月号の記事