メンバーズプログラムを導入し パーソナルな関係の構築を目指す

(株)リテイルネットワークス

「会いたくなったら、ディズニーストア。」というディズニーストアのコミュニケーション・コンセプトをベースに、メンバーズプログラム「fantamiliar(ファンタミリア)」を導入した(株)リテイルネットワークス。同社では、オリジナルプレミアムグッズとの交換やランク別のイベントへの招待などを実施しながら、ゲスト(お客様)とのよりパーソナルな関係の構築を図っている。

ディズニーストアがメンバーズプログラムを本格展開

 ディズニーキャラクターグッズを専門に扱う「ディズニーストア」を運営しているのは、(株)リテイルネットワークス。同社は、「東京ディズニーランド」および「東京ディズニーシー」を運営する(株)オリエンタルランドの100%出資の子会社だ。
 「ディズニーストア」の日本への進出は、1992年8月。横浜に第1号店を出店した。その後、北は北海道札幌市から南は九州鹿児島市まで次々に出店。現在、全国で53店舗を展開し、この9月28日には「ディズニーストア 川崎ラゾーナ店」のオープンにより全国で54店舗になる。
 キャラクタービジネスの市場において、圧倒的なシェアを確保するディズニーだが、その半面、ディズニーグッズは百貨店やスーパーなどディズニーストア以外でも手に入れられる状況にある。こうした中で、同社では、「会いたくなったら、ディズニーストア。」というディズニーストアのコミュニケーション・コンセプトをベースに、購入金額1円につき1ポイントが付くメンバーズプログラムを導入し、ディズニーストアとゲスト(お客様)のよりパーソナルな関係が深まることを目指した。
 会員組織を立ち上げるまでは、個店単位で購入金額や購買頻度の高いゲストの名簿を管理。店長や副店長クラスのキャスト(スタッフ)がそうしたゲストの顔や購買履歴を把握し、個々のゲストが喜びそうな商品が入荷した際に電話などでアプローチしていた。ところが、ゲストが増加するに従って、ストアの入店客数はオープン当初の数十倍に膨れ上がり、またキャストの人事異動も増加して、ヒューマンタッチなサービスができなくなってきたという。
 また、セル画や陶器の置き物といった5万~10万円の高額商品を購入したゲストの情報は、簡易なシステムで管理していたが、こうしたゲストは3カ月もしくは6カ月に1度のイベント開催時にしか来店しない。一方、OLや女子大生、女子中・高生、ファミリー層などの中には、週に1、2回、月に4、5回来店しているゲストが結構多く、1回当たりの購買金額は少ないものの、年間では相当な金額に上っていることが判明。これらゲストを満足させるサービス施策が急務になってきた。そこで同社では、2005年11月から渋谷公園通り店、池袋西武店、池袋サンシャインシティアルパ店、心斎橋店の4店舗でメンバーズプログラムを試験的に先行スタート。2006年2月から全国展開に乗り出した。

“真のディズニーファン”とのリレーションを育むことが目的

 このメンバーズプログラム「Fantamiliar(ファンタミリア)」(1円につき1ポイント)は、会員を「Fan」「Friend」「Fantamiliar」の3ステータスに分類。ディズニーストアを愛してくれるファン(Fan)が、やがて友だち(Friend)になり、最後には最も近い存在(Fantamiliar)になっていくという意味を込めて名付けられた。入会方法は、ディズニーストア店頭で申し込めば、その場でメンバーズカードが発行される。入会金は500円(税込み)で、有効期限は1年間。更新時にも500円の更新料がかかる。低額だが会費制にした理由は、家電量販店のように割り引きが主目的ではなく、“真のディズニーファン”とのリレーションを育むことを目的にしたからだ。入会時には、オリジナルプレミアムグッズ(2006年は、鍵付きストラップ&ネックレスとミニトート型ポーチの2種類のうち1点)のプレゼントやボーナスポイント(1,000ポイント)などの特典がある。
 それぞれの会員資格は、入会時は全員がFan会員。1円につき1ポイントの基本特典が付く。1年間の総額が3万円以上になると翌1年間はFriend会員に、8万円を超えると翌1年間はFantamiliar会員になれる。Friend会員には、更新ポイント(1,000ポイント)に加えて、1円につき1.2ポイントが与えられる。そのほか、Friend会員専用のプレミアムやキャンペーンなどを予定している。また、一度Friend会員になると、その後もFriend会員のまま更新でき、Fan会員へのステータス変更はない。Fantamiliar会員は500円の更新料が無料で、毎年違うデザインのカードが作成される。Friend会員同様、1円につき1.2ポイントが付与されるほか、Fantamiliar会員専用のプレミアムやキャンペーン、限定イベントへの招待などが行われる予定だ。しかし、Friend会員とは異なり1年間の利用金額が8万円未満の場合、Friend会員へステータスを変更する(変更時の更新料は無料)。ちなみに、この会員ステータスや金額設定は、同社がメンバーズプログラムの導入以前から実施していた、毎月1万人の出口調査における来店頻度や購買金額などのヒアリング結果をもとに決定した。
 メンバーズプログラムで貯まったポイントは、オリジナル・プレミアム・グッズ(非売品)との交換や買い物(1万ポイントごとに300円還元)に使える。実際、貯まったポイントの使い方を見てみると、オリジナル・プレミアム・グッズとの交換に利用するケースが圧倒的に多く、ほとんどのゲストが“特別感”を同社に期待していることがわかった。オリジナル・プレミアム・グッズには、1万ポイントと交換できるものから最高20万ポイントと交換できるものがある。一番人気は、3万ポイントで交換できる「フェイバリットシーン ティッシュカバー」。これは短編アニメの1シーンで、これまで商品化されたことがなかったもの。ディズニーファンにとってはプレミアム性の高いグッズだ。このティッシュカバーをオリジナル・プレミアム・グッズに加えたことで、同社自体が会員のディズニーに関する知識の豊富さをあらためて認識した。また、ディズニーリゾートでのイベントやディズニー映画の試写会などの案内をeメールで配信した時には、会員からのレスポンス率は非常に高かったという。

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Fantamiliarの会員数はすでに20万人を突破

 同社では、1年間の会員獲得目標を30万人に設定していたが、すでに20万人を突破。具体的な数値は公表していないが、会員数、 ステータス別の会員数ともに順調に推移している。
 これらを踏まえて、同社では現在、Fan会員(ライト層)をFriend・Fantamiliar会員へとアップさせていくための魅力的な情報やサービスの提供が課題と見ている。それに加えて、Friend・Fantamiliar会員への特別サービスの充実も図っていく意向だ。
 また、Fantamiliarに入会した会員はコアなディズニーファンが多く、入会時には住所・氏名、家族構成、好きなキャラクター、eメールアドレスなど詳細なアンケート項目が並ぶにもかかわらず、9割以上のゲストがすべてに記入。同社では、「自分に合った情報がほしい」というメッセージと受け止めている。ディズニーストア全店に自社レジを導入している同社は、メンバーズプログラムを導入したことで、購買履歴が会員一人ひとりと紐付けられることから、最適な情報の提供やイベントへの招待などを展開。その結果、ディズニー・グループ全体の満足度を高めることも目指していく。


月刊『アイ・エム・プレス』2006年10月号の記事