1995年に、事業局内にショッピング部門を立ち上げ、TBS主導でテレビショッピングを展開。その後、売り場の確保を目指してネットに進出し、民放他社をリードする。
事業局内にショッピング部門を立ち上げ本格的にテレビショッピングを開始
TBSの通販事業は1987年4月に、グループ会社の(株)グランマルシェが手掛けたテレビショッピング「新鮮卓急便」でスタート。その後、1995年に事業局内にショッピング部門を立ち上げ、TBS主導でテレビショッピングに注力し始めた。
同社事業局が最初に手掛けたテレビショッピングは「スーパーワイド」(毎週月曜日~金曜日午後3時~)内の、タレントの大木凡人が担当するコーナー「凡ちゃんのショッピング」である。その後、午前中のテレビショッピング枠のスポンサーの契約切れを契機に、TBS主導で行うテレビショッピングに変更。また、深夜に「亜米利加的買物」というインフォマーシャルのテレビショッピングをスタートさせた。
そのほか分社前から、「TBSラジオ」(2000年3月、TBSより分社、(株)TBSラジオ&コミュニケーションズを設立)でも独自のラジオショッピングを行っていたが、当時、ひとつの会社で2つのショッピング部門は必要ないという経営判断のもと、ショッピング事業部(現・メディアコマース事業部)に統合。現在では、同事業部がテレビとラジオの双方のショッピングを統括している。
現在、同社が展開するテレビショッピングには、「きょう発セレクション」(毎週月曜日~金曜日午前11時ごろ)、「特選名品館」(毎週月曜日~金曜日午後3時58分~)、「ブランチショッピング」(毎週土曜日午前10時15分ごろ)、「買物大図鑑」(毎週月曜日~土曜日深夜3時10分~4時05分ごろ)、BS-iで大人気の通販番組「icollection」(月曜日~金曜日午後1時00分~1時30分、月曜日~水曜日深夜2時30分~3時00分〈再放送〉)、「TBSラジオ」(毎週月曜日~金曜日あさ5時15分ごろ、午前10時25分ごろ、毎週土曜日午前10時30分ごろ)、「E娘!」(毎週木曜日深夜2時30分ごろ~2時55分ごろ)などがある。電話・インターネット・ケータイのいずれでも注文ができるように、テレビ画面上には電話番号やURL、モバイルサイトへのアクセス方法を表示。現在では、年間約60万~70万人が同社のテレビショッピングを利用している。
新たな売り場の確保に向けてインターネットに進出
一般的に、テレビショッピングの放送時間は、無尽蔵に増やせるわけではない。そこで同社では、“新たな売り場の確保”を念頭に置いて、2000年にeコマースへの進出を図った。最初に反響があったのは、ドラマのDVD先行予約。予想以上に多くの予約申し込みがあった。
また、「王様のブランチ」(毎週土曜日午前9時30分~)内の、流行のアイテムをいち早く紹介するテレビショッピングコーナー「ブランチショッピング」の放映中に、番組サイトでも同じ商品の詳細を掲載している旨をテロップで流したところ、電話受注もしているが、インターネット経由で多くの注文が寄せられたという。そこで同社では、2002年から徐々にインターネットによる受注を強化。さらに、ケータイが注目され始めると、ケータイサイトの構築に積極的に取りかかった。
現在、インターネット(PC)とケータイからの受注数は、後者と前者をやや上回っているという。
また、TBSでは、JNNグループの地方局各社に対して、放送外収入をもたらすビジネスのひとつとして、インターネットとケータイを活用したショッピング事業の提案を行っている。ショッピング事業はインフラの整備に相当のコストが掛かることから、 TBSがインフラを整備して提供。そしてショッピング事業が、地方局各社の放送外収入の柱として機能するようになれば、JNNグループのネットワークを活かし、地方局各社のショッピング事業をひとつにまとめて、さらに全国へと拡げていく考えでいる。
TBS本体よりも、地方局各社のほうが地域に密着した良質な情報を集めやすい上、地元テレビ局を通して自社商品を全国のJNNグループに発信できるというメリットをアピールすることで、地元企業との信頼関係を構築することもできると見ている。
商品の差別化などを通じてファン作りを目指す
インターネット(PC)とケータイのそれぞれのサイトには、TBSのドラマやバラエティなどのDVDやCD、関連グッズのほか、TBSオリジナルグッズや番組オリジナルグッズも取り揃えている。商品点数は数千点。多品種を用意することで視聴者ニーズに応えようというのがその心だ。テレビショッピングと言えども、視聴者への番組サービスの一環として、エンターテインメント性を大切にしているのだという。
テレビショッピングでの商品の注文方法は、電話および「TBS ishop」のPC版とケータイ版の3種類。特にDVDや番組関連グッズに関しては視聴者のアクセス動向を把握しながら、目的の商品が購入しやすいように工夫している。
TBSのテレビショッピングの売上高(ネット経由の売り上げ含む)は、1995年にTBS主導で事業を展開し始めた当時は数億円だったが、2005年度の売上高は約75億円に上り、10年間で10倍に達している。売上高が伸長し始めたのは、インターネット(PC)とケータイに試験的に取り組んだ2002年度からで、本格的に導入した2004年度には顕著な伸びを見せた。TBSでは、インターネットとケータイがテレビショッピングの受注チャネルとして有効な手段になってきたと認識している。
また、この4月にワンセグがスタートしたが、同社はいち早く実証実験に取り組んでいる。現在、ワンセグ端末の画面上に放映中のテレビショッピングのバナーを表示、これをクリックすると、ケータイサイトへ飛ぶように設定している。他局に比べてもワンセグコマースの実験に一番積極的に取り組んでいるTBSとしては、放送局のショッピングがメジャーになるかどうかには、ワンセグのインフラ整備が重要な要素になると見ている。
同社では、今後、リピート客を増やしていくために、番組のファンはもちろんのこと、TBSのファン作りを目指す。同時に、インターネット(PC)やケータイ、ワンセグなどのインフラの整備により、視聴者のテレビショッピング利用環境を整えるのはもちろんのこと、オリジナル商品の開発などにより、商品の差別化を図っていく意向だ。
テレビ・ラジオショッピングごとのコンテンツやドラマやバラエティ番組ごとのコンテンツを用意。それぞれのコンテンツをクリックすると、番組関連商品などが掲載されている