ポスティングと御用聞きで商圏と顧客の拡大に結び付ける

国分グローサーズチェーン(株)

国分グローサーズチェーン(株)が展開しているコンビニエンスストア・チェーン「コミュニティ・ストア」。1998年から、同チェーンでは、「親切・ふれあい便」という宅配サービスを導入。2005年からは、「待つ店舗」から「行動する店舗」へをキャッチフレーズに、御用聞きを強化。商圏と顧客の拡大につなげるなど、着実に成果を上げている。

酒販店の活性化の一環としてスタートしたコンビニ・チェーン

 都市周辺の住宅地や、郊外・地方の幹線道路沿いに数多く見かける、コンビニエンスストア(以下、コンビニ)。近年では、公共施設の病院・大学・庁舎内などへの出店も増えてきている。
 1974年5月に、日本における「セブン-イレブン」の1号店が東京都江東区に開店して以来、効率的なオペレーションと情報システムの駆使で、小売業のあり方に大変革をもたらしたコンビニ。ところが今、コンビニには、それに逆行するような動きが見られるようになっている。それは、セブン-イレブンが既存店の活性化の一環として注力している食事配達サービス「セブン・ミールサービス」に代表される、昔の商店では当り前だった配達サービスだ。
 中でも、国分グローサーズチェーン(株)が展開しているコンビニ・チェーン店「コミュニティ・ストア」は、「待つ店舗」から「行動する店舗」へをキャッチフレーズに、「親切・ふれあい便」という宅配業務を1998年から導入し、着実に成果を上げているという。
 「コミュニティ・ストア」は、食品・酒類の総合卸売と輸出入などを手掛ける国分(株)が、酒販店の活性化のひとつとして、1978年に「国分グローサーズチェーン(KGC)」というリテール・サポート事業をスタートさせたのが始まり。1991年には、チェーン全店の看板を「コミュニティ・ストア」に統一。1994年に、KGC首都圏本部を分離独立して、国分グローサーズチェーン(株)を設立した。現在、全国加盟店数は389店(2005年12月末現在)。年商は195億円に上る(2004年12月末現在)。

徹底したポスティングを実施し月平均150件の利用を拡大

 「コミュニティ・ストア」の場合、チェーン店オーナーの9割以上は元酒販店経営者。昔からその地域で商売を続けており、地域に根ざした店舗であるという特長がある。酒屋からコンビニに業態転換する際に、「これからは配達や御用聞きではなく、店頭で売り上げを上げていこう」という経緯があった。
 その後、コンビニへの業態転換による店頭での売上向上を推進していた同社が宅配サービスを始めるきっかけになったのは、小売業態の変化が進む中で、宅配機能を持つところがなくなってしまったこと。もうひとつは、1990年代後半から叫ばれ始めた高齢化社会の進行が挙げられる。そこで同社では、買い物がままならない高齢者の増加を予測し、そこにニーズがあると判断。「店頭商品を、お客様にお届けしよう」と考えたのだ。
 「親切・ふれあい便」は、都心のオフィス街や郊外の住宅地などにある5店舗で試験的にスタート。1年間の実験を経て、1999年から正式導入した。2001年には、宅配サービスの導入店は100店舗を超えたが、その後、急速に減少していった。同社では、コンビニが宅配サービスを行っていることが認知されにくく、成果が上がらなかったのではないかと見ている。現に、宅配サービスを止めてしまったチェーン店のほとんどは、なかなか上がらぬ数字に我慢できず、ポスティングを始めて3カ月ほどで諦めていたのだ。
 そこで同社では、2004年に、直営店を使って1年間かけてポスティングを徹底的に実施。ポスティングを始めてからの半年間は、1店舗当たり月平均20件ほどの利用しかなく、なかなか数字が伸びなかった。ところが、半年を過ぎてからは毎月の利用件数が急速に伸び始め、1年後には、月平均150件をコンスタントに超えるまでに成長したのだ。同社では実験店でのデータをもとに、6カ月以上は諦めずに続けることを勧めて、現在約70店舗が宅配サービスを実施している。

「待つ店舗」から「行動する店舗」へ積極的に「声掛け」を実施

 同社の宅配サービス「親切・ふれあい便」は、「お電話1本で、商品をお届けします!」をモットーに、カタログ掲載商品はもちろんのこと、店内にある商品すべてを配達している。受付時間や配達時間、配達エリアは個々の店舗に一任している。
 宅配用カタログは本部で製作し、3カ月ごとに改定。カタログ掲載商品数は、150点余り。また、2005年の夏頃からは、地方特産品をはじめ、こだわりの商品や店に在庫しにくい商品などを集めた、予約商品専用カタログを製作している。特に、クリスマス用のデコレーションケーキやバレンタインデー用のチョコレートなどには予想以上の注文が寄せられたという。
 宅配サービスの売り上げは、個々の店舗により異なるが、月平均20万円以上。繁盛店になると、40万円を超える。ひとり当たりの購買金額は、3,500~4,000円。少ない時でも、2,500~3,500円に上る。
 また、同社では、2005年から「待つ店舗」から「行動する店舗」へをキャッチフレーズに、一般家庭はもちろんのこと、職場などにも積極的に「声掛け」を行うように指導している。
 こうした取り組みを始めたきっかけは、徹底的にポスティングを行っていても、すべての地域住民に浸透しているとは言い切れず、宅配サービスを行っていることを伝えると、驚かれるケースがあるからだ。また、お客様が1年を通して宅配を利用することはほとんどなく、必要とするタイミングがある。タイミングが合致することで需要が顕在化すると同時に、一度利用するとリピート率が高いことは、同社が蓄積したデータからすでにわかってきている。そこで同社では、お客様から初回の注文を受けるまでが勝負と判断し、「声掛け=御用聞き」を展開するようになったのだ。
 近年、コンビニ業界ではコンビニの乱立激戦により、利益が上がらず閉店するところが増えてきた。これは、コンビニは商圏が狭いので、ただ単に店を構えているだけでは、商圏内の限られた顧客の奪い合いになるということが起因している。
 ところが同社では、御用聞きを始めたことにより、商圏外にまで顧客を広げると同時に、見込客の掘り起こしにも成功するなど、商圏と顧客の拡大を実現、コンビニ激戦区域でも伍して並ぶほどだ。

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店内にあるすべての商品を配達するほか、この6月からは予約商品専用カタログを充実させ、宅配サービスを強化する

国分グループの一員として関連企業とのシナジー効果を追求

 同社は、宅配サービスの強化の一環として、この6月から予約商品専用カタログを変更する。国分グループの他部門で、「ハートフル」という商品カタログを製作しているが、従来のカタログを「ハートフル」に切り替えて、取扱商品をこれまでの30アイテムから60アイテムに倍増し、月1回の発行から月2回の発行へと充実させる。今後は、国分グループの一員として関連企業とのシナジー効果を最大限に追求していく考えでいる。
 また、宅配サービスを行っているコンビニであることを全面に打ち出し、個々の店舗に対するバックアップを強化していく。今年は、「顧客にとっての宅配サービスの利便性は何か」をキーワードに、さまざまなアクションを起こしていく意向だ。


月刊『アイ・エム・プレス』2006年7月号の記事