イベントを通じてブランディング強化 ケータイの即時性を存分に活用

(株)マンダム

女性用ヘアメイクブランド「ルシードエル」で展開した2つのイベント、2004年の「渋谷ジャック」と2005年、2006年の「神戸コレクション」において、応募受け付けから当選発表、参加券配信までにケータイで対応。イベントを盛り上げるために会場でリアルタイムに情報を配信するなど、ケータイをプロモーション・ツールとして存分に活用している。

ケータイとイベントの連動によりブランディングを強化

 (株)マンダムでは、「ギャツビー」「ルシード」「ルシードエル」などのブランドを擁し、ブランドごとに、おのおののターゲットに向けたパワフルなマーケティングを展開している。中でも主力のメディアはテレビCMであるが、4大メディアへの接触時間と情報(媒体)支出の減少傾向を受けて、早くからケータイのマーケティグ活用法を模索していた。2000年4~5月には、着メロ配信サービスに先駆的に取り組んでいた(株)三愛・ギガネットワークス(GIGA)と提携して実証実験を展開。アンケート回答者に抽選で、賞品やサンプル、着メロなどをプレゼントするオープン懸賞を行った。結果、GIGAのケータイサイトのみで告知したにもかかわらず、応募数は12万6,000件に上った。これはGIGAの契約数の14.8%に当たる。
 ケータイを有力メディアとして改めて認識した同社は、その後、従来の他メディアと連携させたケータイのマーケティング活用法を、以下のように位置付けた。①テレビCMの楽曲をフックに、着メロサイトを活用してCM効果の向上を図る、②雑誌や新聞からのサンプル応募を通じ、広告媒体と商品とのマッチングを測定する、③サンプルでケータイサイトを告知して誘導し、使用方法など啓蒙的なコミュニケーションを図る、④商品パッケージからブランドサイトへ誘導し、会員化を図る。
 同社では、ケータイ・マーケティングのノウハウをブランドに限定せず、全社的に蓄積。実績や知見を次のキャンペーンに活かしている。特に、イベントを通したトータルなコミュニケーションの中でケータイをどのように活用するかという視点から、ターゲットに合わせた戦略的コミュニケーションを企画している。
 ここでは、女性用ヘアメイクブランドの「ルシードエル」で展開した2つのイベント、2004年10月の「渋谷ジャック」と2005年、2006年春の「神戸コレクション」において、ケータイをどのように活用したのかを紹介する。

イベント応募受付→当選発表までケータイで対応

 2004年10月10日、同社は「ルシードエル 4つの質感キャンペーン」を実施した。キャンペーンの核となったのは、前出のイベント「渋谷ジャック」。イメージキャラクターの安室奈美恵をフィーチャーすると同時に、若者が集まる渋谷という立地を最大限活かし、ファッションビルの109とCD&DVDショップのHMVを拠点に、周辺のドラッグストアを巻き込んで展開された。
 フックとして、安室奈美恵のファンをコアターゲットとした体感型イベントへの参加券を用意。イベントは、ファッション雑誌( 『ViVi』)との協力により、109のイベントブースで開催した「Be AMURO」(アムロになれる)コンテストと、HMV渋谷店にて行った同ブランドの新CMソングの記者発表会(抽選)の2つだ。
 さらに、キャンペーンの応募者全員に、CMソングの着メロ配信や、オリジナル待ち受け画面などのデジタルコンテンツをプレゼント。これらキャンペーンの応募受け付けから当選発表、参加券配信までをケータイで行ったのだ。
 キャンペーンのそもそもの目的は、ルシードエルの商品コンセプトである「4つの質感」(水質感、光質感、空気質感、風質感)訴求にあった。しかし、星の数ほど競合製品があるヘアメイク市場において、頭ひとつ出るのは至難の技。そこで、街頭でのサンプリングに、全国的に効果が波及するような話題性の高いイベントを組み合わせ、イベント参加応募をマストバイ企画にすることで、“必ず売れる仕組み”を企画したのだ。同時に、イベント後の優位陳列も目論んだ。そして、ケータイからキャンペーンに参加することで、ターゲット層のケータイ会員化を図った。
 キャンペーン告知は、渋谷のドラッグストア店頭、サンプル配布、安室奈美恵のファンクラブ限定コンサート、安室奈美恵のファンサイト、ルシードエルのブランドサイト(PC、ケータイ)、着メロサイト、自社メールマガジンなどで行った。
 イベントへの参加応募資格は、店頭で対象商品を購入し、ケータイで空メールを送信。返信メールに掲載されたサイトURLにアクセスし、商品に記載されたシリアルナンバーを入力することで得られる仕組みとした。
 イベント当日の渋谷は、翌日のスポーツ紙1面を賑わせるほどの盛況ぶりで、「渋谷ジャック」という名称通りの大成功を収めた。
 応募者数は非公開だが、応募者のうち、「ルシードエル」のターゲット層である15~29歳の構成比は90.5%。情報入手先については、約62%がPCやケータイサイトなどの同社媒体で知ったということがわかった。イベント当日、店頭で初めて知ったのはわずか2%。また、キャンペーンへの応募理由としては「安室さんがCMキャラクターだから」と答えた人が約58%に上り、コアターゲット層が反応したことも確認されたという。

神戸コレクションではケータイ会員のみを参加条件とする

 直近では、2005年春に続き、2006年に神戸および新しく横浜で行われた毎日放送主催のファッションイベント「神戸コレクション」への特別協賛における事例がある。目的は、同イベントに集まるコアターゲットに対して、“質感/ルシードエル”をファッション性の高い空間で効果的にPR、体感させることで、ひとりでも多くのファンを作ること。このため、会場だけでアクセスできる専用のサイトページを設けた。ルシードエルが提供する企画には、ケータイでその場で会員登録を行って、サイトの最終画面を見せることで参加できるようにした。参加者は、神戸・横浜合わせて約1万人。
 会場でのサンプルプレゼントや、ブースで人気サロンのスタイリストにスタイリングをしてもらう特典を用意。さらに、イメージキャラクター(押切もえ)の撮影会の抽選も用意した。ヘアメイクコーナーは好評で、3時間半待ちの行列ができるほどだったという。
 イベント参加者には、終了後当日、帰宅中の時間を狙って、アンケートへの協力を依頼するeメールを送信。性別、年齢、居住地(都道府県)などの属性に加え、「ルシードエルのブランド認知」「神戸コレクションを通じてルシードエルで印象に残ったこと」「ルシードエルが提案する4つのイメージスタイルでどれが好きか」などの設問への回答を募った。
 現在の会員数は非公開。会員との継続的なコミュニケーションとしては、メールマガジンを配信し、新商品情報やプレゼント情報の告知、アンケートによる情報収集などに利用。ファンの囲い込みとロイヤルユーザー化を目指しているという。
 同社では2004年から、CMのケータイでのストリーミングも試験的に行っている。今後も、イベントを核にしたトータルなコミュニケーションを図るツールとしてケータイをフル活用していくとする同社の取り組みに、引き続き注目したい。

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神戸コレクションのイベント会場内(写真左)/ブース前でなりたい髪形の「カルテ」に回答する来場客(写真右)


月刊『アイ・エム・プレス』2006年5月号の記事