ネット予約システムの改良と提携先ECサイトの拡大で利便性を向上

ジェイアール東日本ネットステーション(株)

JR各線の新幹線・特急のインターネット予約に、ポイントサービス機能を加えた、ジェイアール東日本ネットステーション(株)。同社が運営する「えきねっと」は、提携先の拡大とネット予約のしやすさにより、2005年12月に会員数150万人を突破。同社のポイントサービスの仕組みを取材した。

JR指定席インターネット予約にポイントサービスを追加

 JR東日本のインターネットサービスポータルサイト「えきねっと」を運営する、ジェイアール東日本ネットステーション(株)。
 同社が運営するサービスの基盤は、2001年4月、旅の総合サイト「えきねっとTravel」開設にさかのぼる。「えきねっとTravel」とは、東日本旅客鉄道(株)、日本航空(株)、(株)ジェイティービーの3社が供給する、JR指定券、JAL航空券、旅館・ホテル、レンタカーなどのチケット・クーポンや各種旅行商品の予約まで“旅のことなら何でも揃う”サイト。以降、JRの指定席予約という、ほかにはできない独自のサービスを軸に、顧客の利便性を追求して改良を重ねてきた。
 その一環として、 2002年7月より、 旅館・ホテル予約を対象に「えきねっとポイント」サービスを開始。同年12月には、JR指定席予約も対象に加えた。
 まず、えきねっとサイト上で必要事項を入力し、会員登録(無料)をする。登録にはクレジットカードが必要だ。JR東日本のビューカードのほか、JCB、VISA、Mastercard、AMEX、Dinersのいずれかから、カードを選択する。ビューカードの会員には、後述する特典を用意している。
 JR指定券申し込みの場合、ネット上でJR指定券の予約を完了した後、JR東日本のみどりの窓口のほか主な駅に設置された指定席券売機に登録したクレジットカードを挿入し、内容を確認の上、クレジットカードの暗証番号を入力して指定券を受け取る。
 「えきねっとポイント」は、以下のサービスを利用すると貯まる仕組み。JR指定席予約では、購入金額ではなく指定券1枚に対して20ポイント(グリーン席は40ポイント)を付与。旅館・ホテル予約やJAL国内航空券予約・レンタカー予約などでは、それぞれ基準金額ごとに1ポイントが付与される。

ビューカードでの登録者限定の特典やポイント面での優位性を活かしグループ企業として相乗効果を狙う

 現在の会員数は、150万人超。会員は、ビューカードでの登録者と、それ以外のカードでの登録者に大別できる。会員の比率は、後者のほうが多い。
 しかし、グループ企業の特性を活かして、ビューカードの登録会員限定の各種特典を用意している。
 ひとつは、携帯電話からの中央ライナーや、下り青梅ライナー券の予約。ポイント加算については、ビューカードの通常のポイント「ビューサンクスポイント」に加えて、えきねっとのポイントが付き、後者のポイントは前者に自動移行することもできる。
 JR指定券の購入などで3倍のポイントが付く「VIEWプラス」に、えきねっとの利用が加わると、えきねっとポイントがこれに加算される。こうして、えきねっとポイントとビューカードのポイントの双方でおトク、というわけだ。
 さらに、登録クレジットカードが「ビュー・スイカ」カードの場合は、Suica部分へのチャージができる。ポイントは自動的に、あるいはいったんえきねっとポイントとして加算後に、「ビュー・スイカ」カードに移行できるので、蓄積したポイントは電子マネーとして使うこともできる。引き換えという手続きや媒介するハードそのものが不要となるメリットは、顧客・企業の双方にとって大きいだろう。
 同サイトでは、えきねっと入会後も、登録カードの変更を受け付けている。また、JR東日本では、ビューカード会員向けの会員誌でも、えきねっとの告知ならびにえきねっとへの入会促進を図っている。

顧客の利便性を追求し、指定券予約のシステムを改良

 言うまでもないが、同サイトのサービスの根幹は、ポイントサービスではなく、JR指定券のネット予約の簡潔性・利便性にある。この点から、システム面の整備を進め、2006年2月1日より、「JR券申込サービス」を刷新した。
 全国のJR新幹線、特急の予約に関して、従来の指定席券のみの予約に加えて自由席券も申し込めるようにしたほか、空席状況を確認しながらの申し込みができるようになり、即時に結果も確認できるようにした。さらに、PC、携帯電話からの申し込みが、従来は列車出発時刻の1時間前(PC)、30分前(携帯電話)だったものを6分前までに改変。会員特典としては、利用区間がJR東日本エリア内の指定席予約の場合、受け取り前は何度でも変更可能とした。
 これらは、ネットで極限までリアルタイムの対応を進めたサービスと言えよう。

えきねっと1 えきねっと2

「えきねっと」の会員登録の案内ページ。予約サービスにプラスして会員ポイントや割り引きがあることを明記している(写真左)。/現在、提携ECサイトが20社の「えきねっとポイントモール」(写真右)

ポイントの蓄積機会の増大を目指す「えきねっとポイントモール」を展開

 一方、「ポイントを効率よく貯め、有効活用していただくという面では、まだまだ課題がある」と同社インターネットマーケティング部長 中山氏は語る。
 蓄積したポイントは、400ポイントで1,000円相当のびゅう商品券かオレンジカード、800ポイントでSuicaイオカード2,000円相当と引き換えることができる。前述したポイント還元率をふまえると、例えば、JR指定券を20回利用して400ポイントが貯まるという計算。なかなかポイントを貯めづらい点が課題だった。さらに、ポイント引き換え期間が以前は年1回の更新時のみだった。この期間に有効ポイントを交換しなかった場合、そのままポイントは失効となっていたのだ。
 そこで、2005年4月から、ポイントの引き換え期間を改善。毎月10日から末日まで引き換え可能とした。また、交換可能なポイントがある場合、サイト画面上にボタンを表示。ポイントを常に意識してもらえるよう工夫している。
 ポイントは、同社Webサイトでのオンライン通販「えきねっとショッピング」で商品を購入して貯めることもできる。2005年10月、「えきねっとポイントモール」サービスを開始。アフィリエイトプログラム運用会社の大手であるバリューコマース(株)、(株)トラフィックゲートと提携し、「ファミマドットコム」や「無印良品ネットストア」など、モール内の大手ECサイトに会員を誘導。会員がモール経由でサイトの商品を購入した場合、利用金額に応じてポイントが貯まる仕組みだ。ECサイトごとに、期間限定でポイント5倍、3倍などのキャンペーンでおトク感をPRしている。現在、提携企業は20社を数える。今後も、会員のポイント蓄積機会を増大するとともに、えきねっとの利用促進のために、提携先の拡大は欠かせないと見ている。
 同社では、2006年度の早い時期に会員数200万人を目指すべく、拡張性の高いシステムを整備済みだ。同社のサービスがどのように受け入れられるか、引き続き注目したい。


月刊『アイ・エム・プレス』2006年4月号の記事