(株)NTTドコモでは、2004年4月から「プレミアクラブ」のサービスを開始。毎月の利用金額によりステージ分けをし、ステージごとにサービス提供メニューを用意。ユーザーの納得感と満足感を高めるとともに、顧客への情報提供を積極的に展開し、個々にあったサービスを提供する仕組みを整備。使い続けることのメリットを鮮明に打ち出している。
全契約者約5,000万人の3分の2が「ドコモプレミアクラブ」会員
(株)NTTドコモが「ドコモプレミアクラブ」を開始したのは2004年の4月。1年2カ月を経た現在、5,000万弱の契約者の3分の2に当たる3,300万人超が入会している。プレミアクラブは、前身の「クラブドコモ」が抱える課題を解消し、発足したもの。同社営業本部マーケティング部の岩本和久氏は、開設の理由をこう説明する。「一般的に2:8(ニハチ)の法則と言いますが、通信業界ではそのバランスが違います。携帯電話の契約上、基本料金をいただきますので、われわれにとってはすべてのお客様がロイヤルカスタマーですが、クラブドコモでは2カ月連続で8,000円以上の利用実績がある方を対象に特典を提供していました。また、携帯電話はもはや家計費の枠組みでとらえられていると思います。電気代を数千円以上使えばポイントが倍になるからといって、誰ももっと電気を使おうとは思わないですよね。そうした観点から、プレミアクラブを開始しました」(岩本氏)
大きく変えたのは、利用金額にかかわらず、申し込みがあれば誰でも入会できる点。当時のクラブドコモ会員1,500万人にDMを送付し、プレミアクラブへの移行希望をオプト・アウトで聞いた結果、ほとんどの会員がプレミアクラブへ移行したという。
生活シーンの多岐に渡りサービスとコミュニケーションを図る
プレミアクラブのサービスを大きく分けると、①ポイント還元、②ファーストフード店、ファミリーレストラン、百貨店、ホテル、旅行代理店などのアライアンス企業による会員優待サービス、③安心サポート、④応募型キャンペーン、⑤コミュニケーションの5つ。
①の概要は図表1の通り。ステージ別にポイント還元率を変えている。1stステージは、年間の利用額が10万円以内の範囲のユーザーで最も人数が多く、逆にプレミア、3rdは非常に少なく数%だという。②は全国約6,000カ所のアライアンス企業の店舗で、会員がクーポンを提示することにより代金の割引やプレゼントが得られるサービス。以前は、クラブドコモの会員証を郵送していたが、いつも身に付けている携帯画面でクーポンを表示する方法に変更したと言う。③では、携帯電話を購入した場合の自然故障について、通常のメーカー保証では1年間の保証期間を3年間に延長、また、2年間同じ機種を使用した場合には電池パックをプレゼントしている。④は、例えば2005年7月から8月の期間に行ったプレミアセレクション Part Ⅱで、「ルノーF1チームのパドックに入れる」という希少性の高い賞品を起用するなど、エンターテインメント性・プレミアム性の高いサービス。⑤は、個別ユーザーのニーズを満たして上手くコミュニケーションをとるため、iモード上で「プレミアクラブサイト」を展開している。プレミアクラブ入会時に、顧客情報を利用するパーミッションが得られれば、自動的にiモードの「マイボックス」に表示される仕組みだ。単なる掲示板的なお知らせではなく、顧客DBに蓄積された性別・年代などのデモグラフィック分類や、利用機種、利用状況に基づき個々のユーザーの嗜好性を分析し、ユーザーに適した「ピッタリおススメ情報」を掲示している。
このほか、プレミアアンケートも実施。これはユーザーにアンケート形式で質問をし、回答するとドコモポイントが付与されるというものだ。「90%以上の方がドコモポイントを次回の機種変更に使うので、ポイントは単なるコストではなく、リテンションのための投資ととらえています」(岩本氏)。1回のアンケートで、多いときは1晩で3万件以上の回答が寄せられる。サンプルがドコモユーザーに限られるものの、収集スピードと量には目を見張るものがある。同社では、今後、これを事業として展開することを検討中だという。
ハイエンドなプレミアステージ会員へ特別な特典を用意
最も利用金額が高い層のプレミアステージ会員には、さまざまな特典を用意している。
ひとつは、2004年10月からサービスを開始した、プレミアステージ会員専用のコールセンター「ドコモプレミアお客様デスク」だ。「一定のユーザーに優越感、納得感を得てほしい反面、対象外のお客様に不満感が生じてはいけないので、専用ダイヤルはプレミアステージ会員だけに告知しています」(岩本氏)。当然、スキルの高いオペレータが対応に当たる。今後、会員のニーズをとらえた提案が行える「コンシェルジュ」化を検討中だという。
2つ目が、2004年9月から、海外旅行や出張時に自分の国内の電話番号への着信呼が自動転送されるレンタル端末を貸し出すサービスだ。そもそもプレミアステージの会員は、海外渡航率がほかの会員よりも高く、レンタル端末の利用率も高いと言う。
3つ目は2005年春に創刊した会報誌『Do Something!』(季刊)だ。発行部数は70万部。会員の6割を占める20~30代の男性のライフスタイルを意識した誌面作りを行っている。広告には、あえて携帯電話関連は除いているとのことだ。
個別に最適な情報を提供し解約率を0.8%に抑制
このように、ステージ別のプレミアクラブをスタートしたことで、個々のユーザーそれぞれにあったお得感を鮮明に打ち出すことができたと岩本氏は言う。
「ステージ分けはユーザーの納得性、特にハイエンドユーザーの心理面を考慮していますが、キャンペーンでは長期利用者を意識しています。特に弊社の場合は、ひとつのサービスで10代から70代までカバーする必要がありますが、いろいろなサービスメニューを用意し、そのバリエーションを設けることによって、ユーザーとのマッチングが実現しつつあると思います」(岩本氏)
例えば、2005年3月、会員へキャンペーン告知DMを送付した際、属性別・ステージ別で、デザイン、文字の大きさ・種類、内容などを6種類に分けた(写真1)。また、A賞~D賞まで4つの賞を設け、利用開始から11年目を迎えるとすべての賞に、2年目ではD賞のみにエントリーできるといった具合に、継続利用期間に応じて応募可能な賞が決まる仕組みにした。関東甲信越だけで行ったこのキャンペーンでは、DMの発送数が600万通。このうち175万のユニーク応募があり、約30%の高い応募率が得られたそうだ。
【写真1】プレミアクラブ会員に送付したDM。属性別に6種類を用意した
同社の携帯電話の解約率は、1年前の1.07%から2005年7月末時点で0.8%にまで下がっていると言う。2005年11月には料金を見直し、従来の最長期利用で15%割引のところを、最大で25%割引にする。顧客獲得の競争が激化する中、こうした長期利用者への優遇策がひとつの着目点と同社では見ている。