リアルタイム方式を採用するなど顧客ニーズをつかむサイト作りを展開

チケットキング

格安航空券、外貨両替・USドル、コンサートチケット、新幹線切符、高速バス、観光タクシー、カプセルホテルなどの格安チケットを扱う「チケットキング」。同店は、同業他社に先駆けて、約5年半前にインターネットによるチケット販売をスタートした。現在、Webサイトへのアクセス数は、1日平均3万件を誇る。集客アップのヒントを探る。

アクセス数は1日平均3万件 約5年間の累積件数は400万件を超える

 「チケットキング 東京本部」の名称で東京・上野に店舗を構え、格安航空券、新幹線切符、高速バス、観光タクシーといったチケット全般の販売、買い取りをはじめ、コンサートや演劇、野球・サッカーなどのスポーツといった興行チケットの売買、および委託販売のほか、USドルの売買などの事業を展開する富士興商(株)。東京・上野の本部ほか、「チケットキング 新橋サポートセンター」「チケットキング 渋谷サポートセンター」というように東京の新橋と渋谷にそれぞれ直営店舗を持つ。また、FC加盟店の募集、および経営指導も行っており、その数は200社以上に上るという。
 同社は、1996年に設立。翌1997年から、チケット販売事業に進出。今から約5年半前に、インターネットを活用してのチケット販売をスタートさせた。同社代表取締役の飯田俊宏氏は、「本事業の開始に先駆けて、ネット通販の市場動向を調べたところ、日本人は商品を手にとって確認しないと納得しない傾向があるものの、チケットについては現物を見るまでもなく機能が明確であることから、インターネットとの親和性が高いと思ったのです」と、格安チケットのネット通販ビジネスを始めるきっかけを説明する。
 同社では、ネット通販を始めるに当たって、いかに不特定多数の人たちに見ていただけるようなホームページにするかということに注力した。飯田氏によると、同業・異業種の経営者の方々と会うたびに、「ホームページを作ってもアクセス数は上がらないし、ほとんど見る人がいない」という諦めに近い話を聞いていたという。しかし、そうした企業のホームページは、会社案内や求人の募集要項がメインになっており、商品を販売するという発想では作られていなかった。そこで、同社では商品を販売するという発想のもとで、Webサイトへの集客を検討し始めたのである。
 「富士興商という会社を売り込んでも駄目。まずは店名(チケットキング 東京本部)を売り込むことが、ホームページのアクセス数を伸ばすことにつながると考えました」(飯田氏)
 同社では、宣伝費として月300万円をかけて、店名とホームページのURL(http://www.tiketking.co.jp)を大きく表示した広告を雑誌や新聞に出稿することで、集客を促進。これを約3年間続けたという。現在では、同社のWebサイトのアクセス数は、1日平均約3万件を数え、過去約5年間の累積で約433万件(2005年8月6日時点)に達している。

チケット購入者のリピート率30% 新規顧客も1,000人を数える

 同社では、Webサイトでの閲覧率を上げるために、趣向を凝らしたり、サイトの作りを変更するなど、常にWebサイトのリニューアルを心掛けている。
 一般的に、インターネットを使って、チケット販売を行っている多くの企業は、「固定方式」を採用。これは、顧客が欲しいチケットを申し込むと、24時間以内に、チケット販売会社から確認のメールが送られてくるというシステムだ。
 しかし同社では、3年前から「リアルタイム方式」を導入して、コンサートや演劇、プロ野球、サッカーといったすべての興行チケットの在庫を公開している。例えば、プロ野球の「巨人―ヤクルト」を選ぶと、開催日、開催時間、会場・場所、座席種別、座席位置、委託金額、委託単位(チケット枚数のこと)、購入( 「予約する」)という項目が記されており、必要事項を記入の上予約すると、★マークが付いて「現在予約中」ということが瞬時にわかる仕組みになっている。そして、チケットが入荷すれば、それも瞬時にWebサイト上に表示されるというわけだ。また、新幹線のチケットも「現在在庫」と記して、枚数を表示。売買状況に則して、数字が変動するようになっている。
 飯田氏は、「リアルタイムでチケットの在庫がわからなければ、(Webサイトを) お客様は見てくれません」と言い切る。その自信の表れは、チケット購入者のうち、過去にチケットを購入したことがあるリピート率が30%に達しているからだ。まさに、顧客ニーズに応えた結果だと言えるだろう。アクセスログの分析によると、Webサイトへのアクセス数は1日平均3万件で、人数ベースでは5,000人の人たちが閲覧している。さらに、そのうちの1,000人が新規顧客だという。ちなみに、ネット経由でチケットを購入する人は、1日平均50人程度だという。

スクリーン 2

「チケットのデパート」を謳い文句に、興行チケットから金券まで扱う同社ホームページ。リアルタイム方式でチケットの在庫を公開し、顧客ニーズに対応したことが集客アップの一因に

比較サイトをヒントに高速バスの比較サイトを開設

 現在、同社のWebサイトを訪れる人のうち、Yahoo!やGoogleといった検索エンジンからアクセスしてくる人は全体の40%で、直接同社のURLからアクセスしてくる人が60%に上るという。飯田氏は、「この数字を聞いた人は“あり得ない”と驚くのですが、事実なんです」と胸を張る。
 Webサイトへの集客アップのために、コンサルティング会社に委託して、SEO対策を行った時期もあったそうだが、「期待していたほどではなかった」(飯田氏)と言う。氏によると、雑誌や新聞などへの広告展開のほか、観光客などが多数訪れる上野駅やアメ横に近いという地の利を活かして、店名とホームページのURLが入ったポケットティッシュを配布したり、名刺サイズのカードを直営店頭で配布するなど、地道な宣伝活動も展開中。これらの取り組みの結果として、1度来店したお客様が次回からはWebサイト経由で、チケットを購入するケースが多いという。
 1年半前からは、Webサイト上で販売しているコンサートや演劇などの興行チケットを「Yahoo!オークション」にも出品できるようにシステムをリニューアルした。飯田氏は、「オークションで落札した人が、次からは直接当社のWebサイト経由でチケットを購入したり、または当店で扱っていないチケットがYahoo!オークションにあることをお知らせすることで、相乗効果となって集客アップにつながっています」と話す。
 同社は、Webサイトへの集客アップのため、常に顧客を飽きさせないサイト作りを心掛けてきた。例えば、トップページにチケットや金券に関するニュースを載せ、最低でも10日に1回の割合で更新しているという。携帯電話の可能性にもいち早く目を付けて、同社のWebサイトをNTTドコモ、ボーダフォン、auといった3キャリアに対応できるようにした。現在では、携帯電話経由のアクセス数も伸びている。
 さらに同社では、最近増えてきた保険や証券などの「同一業種の比較サイト」をヒントに、高速バスのチケット料金を比較できるサイトを立ち上げた。例えば、「新宿―名古屋」間の場合、「ハーヴェストライナー、4,200円」「キラキラバス、3,500円」と、各バス会社の価格を掲載し、乗車するバスの特徴も記載して、利用者が価格重視なのか、乗り心地重視なのかに応じて最適なバス会社を選べるようにしている。
 同社の取扱商品は、インターネットとの親和性の高いチケットという特殊分野ではあるが、そのWebサイトへの集客策は業種業態を問わず注目に値すると言えるだろう。


月刊『アイ・エム・プレス』2005年9月号の記事