先行者利益を強みに会員とのダイレクトなコミュニケーションを展開

(株)三愛・ギガネットワークスカンパニー 

携帯電話の新機種登場や料金定額制の波に乗り、携帯コンテンツビジネスの多様化は必至だ。そんな中、会員制着メロサービスの草分け、(株)三愛・ギガネットワークスカンパニーは、他のエンタテインメントビジネスと提携することで、ビジネスの根幹である楽曲の品揃えと会員とのコミュニケーションを強化している。

NTTドコモとの提携で初期から着信メロディビジネスに着手

 今や携帯コンテンツ市場規模は2,000億円(2003年度)といわれ、音楽系コンテンツがそのうち約半分の1,000億円を占めている。同市場の草分けである(株)三愛・ギガネットワークスカンパニーの前身、ギガネットワークス(株)は、(株)リコーの通信関係の新規事業部門から1991年に独立、主に通信カラオケのサービスを展開してきた。その後、テスト・マーケティングを経て、1999年9月にNTTドコモのiモード公式サイトとして音楽コンテンツサービスを開始。開始から2年間で会員は450万人と急激な伸びを見せた。こうした実績から、2002年、「モバイル・プロジェクト・アワード2002」の「モバイコンテンツ部門」で最優秀賞を受賞した。2003年度の売り上げは74億円を計上しており、2004年9月現在、約500万人の会員数を擁する。
 音楽コンテンツサービスを開始して今年で5年目を迎える同社の会員は、入会してから数年経つ方が多く、年齢は20代後半~30代が中心となっている。男女比はほぼ半々で、会員の半数以上は社会人だ。
 この5年間の進展には、以前から通信カラオケ事業を展開していた同社ならではの強みがあった。MIDI(MusicalInstruments Digital Interface)を持っており、いち早く楽曲が提供できたこと、ドコモの携帯市場拡大に合わせてタイムリーなサービスが可能だったことに加え、背景には、ワンコインビジネスが受け入れられたということがある。

今秋、新サービスを拡張 コミュニケーションに注力

 ここで、同社のサービスを見てみよう。iモードサイトで、月額105円で7曲、210円で15曲着メロがとれる「着信メロディGIGA」、着メロにiアプリを付加した「聴ケル遊メロGIGA」、音声合成技術を活用し、着信ボイスが作成できる「メロディ遊園地」、お笑い芸人の着ボイスである「吉本笑ROOM」。この7月には月額315円で着メロ25曲に加え、着うた・着ムービーが楽しめるドコモ900i専用の「GIGAレインボー300」、また、9月には顧客からの要望により開始した、月額52円で楽曲の歌詞をダウンロードできる「歌詞ホーダイ」など、顧客の利用状況に合わせてさまざまなサービスを提供している。アクセス方法は、iモードのiMenuから「メニューリスト」→「着信メロディカラオケ」→「J-POP」→「着信メロディGIGA」という流れだ。「われわれのビジネスは週刊誌のようなもの。情報鮮度を維持していくことが非常に重要ですので、お客様の利用状況を毎月細かく分析して、サイト運営スタッフにフィードバックしています」(塙氏)
 同社では、総合着メロサイトとしてのサービスを強化するとともに、サイト内でのキャンペーンを充実させ、他社との差別化を図る。単なる一方向の楽曲提供ではなく、5人の有名アレンジャーが毎月「お題」の楽曲を独自にアレンジし、会員の投票によって格付けを行うコーナー「アレンジ職人」や、環境音楽家がアレンジするリラクゼーション・メロディのコーナー「癒しの小箱」といったコンテンツを提供。お客様に楽しんでいただき、かつコミュニケーションを活性化できるサイトを構築しているのだ。
 こうした取り組みが功を奏し、同社のサイトは、月間ページビューが1億数千万強に上る。サイト来訪者数は、月間800万人以上。同社は、あくまでサイト内でのコミュニケーションに注力しており、メールマガジンなどの一方向の情報提供はしていない。逆に、サイトに寄せられる顧客からの問い合わせや楽曲のリクエストには運営メンバー全員が目を通し、デイリーでサイトに反映している。

会員に対する無料サービスと販促支援ビジネスを両立

 同社のサービスは着メロコンテンツ配信にとどまらない。会員ネットワークをベースに、携帯電話を最大限に活用して企業の販促支援を行っている。この販促支援ビジネスは、エンタテインメント領域の企業を主対象としていることから、会員サイドでは映画や音楽などの最新情報が無料で入手できることを意味する。
 この10月に、会員向けの無料サービスとしてオープンした「CLUB GIGA」は、総合エンタテインメントサイトとして積極的に情報提供を行っている。会員はTVCM曲を先行ダウンロードしたり、毎月展開しているプレゼントキャンペーンに応募することができる。また、コンサート・イベント会社の(株)ディスクガレージが発行しているミュージックフリーペーパー「DI ▲GA」と連動し、アーティストのインタビューやイベント情報などのコンテンツをサイト内に取り込んでいる。
 ほかに、映画配給会社とのタイアップによるユーザーサービス「GIGA特別試写会」がある。全国5カ所で、封切り前の映画作品を会員に無料で観てもらい、協賛スポンサーのおみやげを持ち帰っていただくというものだ。今回も、11月下旬から約1カ月間かけて行う第9回試写会『ターミナル』に、総勢7,000名を招待するという。2000年より定期的に開催している同サービスは、アンケートでの顧客満足度が非常に高い。
 同社は、自社の広告・宣伝にはさほど力を入れていない。「広告宣伝に費用を使うよりもお客様に還元したほうが良い」というポリシーのもと、イベントの開催やプレゼントキャンペーンで顧客満足度の向上を推進しているのだ。
 会員は、一度入会したら退会手続きをとるまでは会員扱いとなる。退会する場合、退会の理由を尋ねている。「料金が高い」など不満点を理由に挙げる人はわずか数%で、約8割は満足しているが退会する人だという。「欲しい曲を全部ダウンロードしたから」「コース変更」「もう着メロを使わない/ケータイを解約するから」「またくるよ」などの中で、「またくるよ」と答える人が約4割いる。実際に、入会・退会を繰り返す顧客層が存在することは確か。しかし同社では、流動性の高さはワンコインビジネスの簡易性のひとつ、とポジティブなとらえ方をしており、先に述べたようなお客様サービスの強化を図っている。

ギガ-2

「CLUB GIGA」のWebサイト。TV/CM、ゲーム、映画、音楽、写真、占い、プレゼントと盛り沢山の内容となっている。

新コンテンツ提供と新規顧客獲得がカギ

 携帯電話の新機種・新機能の開発や、料金定額制の波に乗り、携帯コンテンツビジネスの多様化は必至だ。市場のパイの椅子取りゲームはほぼ終了し、今後は、新コンテンツによる競争の激化、若年層の獲得激化が予想される。特にゲーム系の伸びが見込まれるが、同社ではあくまで自社の強みを生かした戦略展開を考えているという。課金サービスと無料サービスの提供のバランスと、今のお客様をいかに維持するか、この2つが大きな課題だ。


月刊『アイ・エム・プレス』2004年12月号の記事