日本古来の「伝承自然力」を取り入れた化粧品で将来性の高い通販市場に参入

(株)キナリ

化粧品業界の販売チャネルは細分化され、競合環境は複雑化している。そんな中、「草花木果」は、日本古来の美容法「薬湯」のブランドコンセプトに基づいたコラムや、きめ細かい商品説明で顧客の共感を呼んでいる。

多様化する化粧品販売チャネル

 (株)キナリが、通販にチャネルを限定して、化粧品ブランド「草花木果(そうかもっか)」の販売をスタートしたのは2001年10月。その背景には、化粧品業界全体のパラダイムシフトがあった。市場は、百貨店等で販売される制度品と比べ、セルフ化粧品と呼ばれる低価格商品の出荷量が伸びていた。ドラッグストアや、セフォラ、ブーツといった外資系セルフ化粧品の店舗が台頭していく一方で、化粧品通販の市場も拡大の傾向にあった。また、DHCやオルビス、ファンケルといった、通販専門だった化粧品会社が店舗展開をはじめるなど、競合環境は複雑化。そんな中、(株)キナリが注目したのは通販の市場だった。通販ユーザーは働いている女性や主婦が多いため、25~35歳の有職者・主婦がターゲットの市場参入を計画したのである。
 忙しい現代人が自然やリラクゼーションに目を向けはじめたという時代背景から、取り扱う商品は昔から伝わる知恵に学んだ自然派スキンケア化粧品とした。中でも着目したのが、“薬湯”という健康法だ。薬草植物を湯に入れるという日本古来の習慣の中から、美肌効果の高い植物4つを選択。よもぎ=草、どくだみ=花、緑茶=木、ゆず=果から「草花木果」と名付けたブランドを開発した。現代人の複雑な肌悩みに対し、自然の恵みで肌をいたわりながらケアをし、トラブル知らずの美しい肌状態に導く。“天然植物成分”とミネラルバランスが体液の浸透圧に近く肌なじみのいい“男鹿の温泉水”を配合。「シンプルなケアで最大の効果」を上げる商品が誕生した。天然成分を使った化粧品は鮮度のよい状態でお客さまに届けたい。通販は、草花木果というブランドにまさにぴったりの販売チャネルであった。

手厚い間接カウンセリングでトライアルをフォローし、セグメント化した顧客サービスを提供

 店頭でのカウンセリング販売が当たり前だった化粧品。それを通販で売るためには、手軽に試せる仕組みを作る必要がある。そこで、店頭のテスターの役目を果たすものとして、洗顔オイル、洗顔石けん、化粧水の3点で1,260円(税込)のトライアルセットを用意。しっかり効果を実感してもらえるように、たっぷり2週間使える量にしている。商品とともに、カタログとオーダーフォームだけでなく、使い方についての細かな説明を盛り込んだお手入れブックをお届け。肌質別のカウンセリングや自然成分についての読み物など、カタログの内容は充実している。「店頭の美容部員、ドラッグストアのスタッフの代わりをするのがカタログです。実物よりも限定された世界で、商品をどう表現するか。イメージをどう伝えるか。他社のカタログを参考にし、試行錯誤しながらカタログを制作しました」(同社 千葉雅子氏)。
 一度でも購入したことのある方は草花木果メンバーズとして登録され、希望者にはメールマガジンを配信している。内容はキャンペーンの紹介やWebサイトのコンテンツアップの案内と、千葉氏が日頃感じていることや女性たちへのメッセージをつづる編集後記である。並行して、過去1年間の購入者約10万人を対象に、年7回、会報誌を発行している。また、顧客の定着化を狙いに、注文金額の5%をポイントとして積立てるポイントサービスを実施。さらに2003年からは、年間購入額により顧客を「桜」「藤」「蘭」の3クラスに分け、クラス別に送料無料やポイント率アップなどのサービスを提供する「メンバーズ・クラスサービス」を行っている。
 キナリお客さまセンターでは、オペレーター10名体制でお客さまからの電話やメールによる問い合わせに対応。eメールに対しては必ず24時間以内になんらかのレスポンスをし、また、対面ではないだけに、お客さまの情報に基づいたOne to Oneの対応で「顔の見えるサービス」を心がけている。
 新規顧客の開拓は、主に『サンキュ!』などの生活情報誌や女性誌への広告、タイアップ記事の掲載、新聞折込チラシおよび通販会社のカタログへのチラシ同梱で行っている。現在、媒体別売上構成比は、雑誌15%、チラシ6%、会報誌70%、インターネット9%。受注チャネル別売上構成比では、インターネットは20%を超えている。リピート促進の施策としては、会報誌などを通じて、購入者にタオルや小物入れなどの草花木果オリジナルグッズをプレゼントするキャンペーンを展開。効果を上げている。

Webサイトで“おもてなし”

 化粧品では、店頭の美容部員や友人知人からの口コミなど、人から伝わる情報が購入に大きく影響するが、通販では直接“人”が介入できない。そこで、Webサイトの構築に当たっては、「お話をするサイト」を目指すことで、それを少しでも補いたいと考えた。
 「インターネットはショッピングのツールである前に情報検索の場です。ですから、トップページには商品カタログは載せず、ブランドコンセプトを伝える玄関としました」(千葉氏)。Webサイト作成の際にキーワードとしたのは「おもてなし」だ。「こんにちは、草花木果です」という挨拶からはじまり、商品の特徴や成分を十分に説明した上で、お客さまが納得して買っていただけるようなサイト作りを心掛けている。また、仕事や子育てで忙しい日々を送る女性に、日々のゆとりを感じてもらいたいというのが草花木果にこめられた願い。そこで、日本の四季を感じてもらえるようなコラムや、4種類の植物を使ったレシピなども掲載し、人気を呼んでいる。
 販促メディアとしてのインターネットの活用は、発売当初は、商品認知を第一の目的としていたため、各女性サイトとのタイアップによる記事広告の体裁での商品紹介が主だった。現在のインターネットでの広告戦略としては、草花木果のHPに呼び込むことを目的とした、大手サイト上のバナーやリスティング広告である。Yahoo、MSNといった集客力が大きい2大ポータルサイトをはじめ、女性に人気のサイトとの連携を図っている。インターネットの世界は動きが速い。そのため同社では、日々、動向を見ながらプロモーションの方法を検討しているという。
 草花木果ブランドの認知が進み、現在では顧客の60%に当たるリピーターが売上高の70%を占める。リピーターはブランドのコンセプトをすでに認知し、それに共感した上で購入している。そこで同社では、リピーターが次に知りたいこと、求めていることを探り、提供する場へとWebサイトを発展させる時期に来ていると考えている。今後は美容情報の充実を図るとともに、サイト上にお客さまとのインタラクティブな仕掛けを作る予定だ。

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「草花木果」のHP。すっきりとしたゆとりのあるつくりになっている。


月刊『アイ・エム・プレス』2004年7月号の記事