「商品力」と「エンターテインメント性」が鍵

ジュピターショップチャンネル(株)

国内初の本格的なテレビショッピング専門チャンネル、「ショップチャンネル」を手掛けるジュピターショップチャンネル(株)は、既存顧客の維持、新規顧客の獲得の双方に力を入れている。人を引き付けるための「ショップチャンネル」の戦略を探った。

「エンターテインメント性」を意識

 ジュピターショップチャンネル(株)は1996年の設立。アメリカで成功を収めているテレビショッピングのビジネスモデルに倣った、電子メディアによるダイレクトマーケティングのリーディング・カンパニーだ。
 “視聴者にショッピングの喜びを提供する”をモットーに、設立とほぼ同時に、生放送を取り入れた24時間365日放送のテレビショッピング専門チャンネル、「ショップチャンネル」をスタートさせた。
 取扱商品は、ジュエリー、コスメ&ヘルス、ファッションや、キッチン、掃除用品をはじめとするホームグッズ、さらに「ショップチャンネル」のみでしか購入することができないコレクターズアイテムなど多岐にわたっており(図表)、「ユニークであること」「デモンストレーション向きであること」「商品価値が明確であること」などを考慮して選定している。商品は国内のものと海外のものが半々で、平均価格は約7,000円(2001年12月現在)。

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 また、より充実した番組を提供するために、自社スタジオを保有。スタジオ内にはコンピュータで制御されたロボットカメラ・システムが配備されており、高品質な番組制作を実現している。
 「ショップチャンネル」は現在、デジタル衛星放送の「スカイパーフェクTV!」の無料チャンネルのほか、270局のケーブルテレビ局を通じて全国で放送されており、放送時間は週100時間を超えている。視聴世帯数は2002年6月末現在で、延べ約1,364万世帯に上る。
 同社では、顧客および番組視聴者を「ショップチャネラー」と呼ぶ。その定義は“ショッピングを楽しみ、さらに番組のエンターテインメント性を楽しむ方々”である。このことからも分かるように、「エンターテインメント性」を意識した番組作りが同社の特徴のひとつ。「ショップチャネラー」は85%が女性で、かつ30代~50代が中心だ。

「グレーな部分を残さない」プレゼンテーション

 同社は業績が好調である理由を、「日々の新しい経験と価値の提供を目指している」ことによると分析している(代表取締役COO 大橋茂氏)。毎週投入されるおよそ700アイテムのうち、半分は新商品であり、その商品の多様性には圧倒されるものがある。
 こうした商品の充実度に加え、番組内でのプレゼンテーションも実に巧み。また、商品の紹介から、受注、配送、決済といったフルフィルメントの一切を徹底的に整備している。これらのどの部分が欠けても「顧客満足は得られない」(大橋氏)という。
 テレビ通販に限らず、商品そのものの品質の高さは最も重要なポイント。「ショップチャンネル」では、プレゼンテーションの際に、努めて押さえたトーンで“過大な表現をしない”ことを徹底している。これは、商品そのものの性質、持ち味をストレートに伝えることにより、「グレーな部分を残さない」ためだ。
 さらに、顧客に安心感を与え、信頼を得て、固定客を維持していくために、インハウスのコールセンターを設置。顧客からの注文および問い合わせに一括して対応できる仕組みを作り上げている。センターには2002年7月現在で、200のオペレータ席が設けられ、番組同様24時間365日体制で稼動している(オペレータ席は順次増設予定)。センター内には、IBM社のカスタマーサービス・システムをベースに、「ショップチャンネル」用にカスタマイズした国内最新鋭のシステムが導入されている。また、2002年2月にはIVR(音声自動応答システム)を大幅にリニューアルした。これにより、配送状況の確認、新規顧客への対応等も可能となった。常に顧客にとっての利便性を追求し、顧客サービスの向上を目指している。

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「ジュピターショップチャンネル」番組風景

優良顧客の会員組織で顧客のロイヤルティを向上

 同社では創業当初より、いかに顧客との密接な関係を築き、優良顧客として定着させるかを重要課題としてきた。
 まだ規模が現在ほど大きくなかった1998年頃より、最優良顧客を対象とした特販会やパーティーを各地で開催。これらの催しには、番組で活躍しているキャスト(番組進行を担当するスタッフ)やゲスト(商品のメーカー担当者やデザイナー)などが出席し、参加者は彼らと直接触れ合うことができる。こうした場を設けることで、ツーウェイ・コミュニケーションを図って、同社に対する親近感、信頼感を高めてもらおうというわけだ。
 さらに2001年には、最優良顧客を対象とした会員組織「プレジデントクラブ」を設立し、年間の購入金額に応じたプレゼント・プログラム、特別イベントや食事会の開催、特別規格品の限定販売などのサービスを提供している。

「One to Oneマーケティング・システム」を導入

 同社は、既存顧客の維持、新規顧客の獲得の双方に同等の重要性を感じているが、テレビ通販市場にはまだまだ開拓の余地があるとの判断から、現在では新規顧客の獲得によりウエートを置いている。具体的な施策としては、「お友達紹介キャンペーン」を展開。これは既存顧客に向けたキャンペーンで、友人・知人を紹介し、彼らが同社から商品を購入すると、紹介者にプレゼントが贈られる仕組みであり、多大な成果を上げている。
 また、同社の調査から、初回の利用から3カ月以内に再購入した顧客は、その後の定着率が非常に高いことが分かった。そこで再購入の促進に向けて、2001年より、初回購入者に向けて「ウェルカム・キット」の送付を開始。これには「ショップチャンネル」の手引きやクーポン券が含まれており、再購入を促すツールとなっている。
 これに対し、一定期間買い上げのない既存顧客には、番組紹介やクーポン券を同封したDMを送付することで、再購入につなげている。また、創業当初より、「バースデー・カード」の送付も行っている。
 これらに加え、2002年5月には「One to Oneマーケティング・システム」を導入。既存顧客のプロフィールや販売履歴など、より細分化されたセグメンテーションに基づいたマーケティング施策が可能となった。現在、顧客に送付する請求書にパーソナルなメッセージを盛り込むといった販促活動を段階的に始動させている。
 「ショップチャンネル」をさらにしっかりしたチャネルとして確立していくために、今後は顧客のニーズの先取り、ブランディングの強化を図りたい考えだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2002年9月号の記事