「みそ造り講習会って何?」 口コミ活用で起死回生

(株)小泉糀屋

「うちは国内最小の糀屋ですから」店主が笑って明かす昨年の年商は1,200万円。製品を売るのではなく、ノウハウを売ることで事業を成功させ、顧客の間に「食品を手造りする」ネットワークを広げていきたいと話す。無念の閉業から15年、1998年に復活ののろしを上げた小泉糀屋が培った口コミ・マーケティングに焦点を当てた。

救世主は口コミ 講習会開催に意外な効果

 横浜で100年以上続いた老舗の糀屋「小泉糀屋」が、店主の急逝によって閉業したのは1983年。まだ高校生だった4代目・小泉聡氏は大学卒業後、不動産会社の営業職に就いたが、「自分で商売がしたい」と一念発起し、1998年10月に事業再開にこぎ着けた。みそ造りは糀造りとみそ造りの2段階に分けられるが、同社は糀とみその両方を販売する。昨年度の生産量はみそが6トン、糀が3トン。合わせて1,200万円を売り上げた。うち、みそが60%弱を占める。すべて消費者向けの製造直販で、通販が80%、その他が店舗販売だ。
 父とともに糀造りに汗を流した叔父の支援を受け、何とか原料を仕入れて製造にこぎ着けたが、いかんせん、販路がない。とりあえず農協が主催する朝市に出店し、野菜や果物の隣に糀を並べたが、売り上げは伸びない。
 そこで、過去の顧客台帳を引っ張り出して、片っ端から電話をかけた。嬉しいことに、およそ8割の顧客が同社を覚えていたが、手造りであることに加え、原料と、その配合の割合に徹底的にこだわった同社のみその販売価格は1キロ1,500円。スーパーなどに出回っている製品は通常1キロ520~530円なので、かなり高額と言える。小泉糀屋と付き合いがあった世代はすでに財布の実権を次の世代に明け渡しており、即座に購入してくれる顧客はなかなか出てこない。それでも、「また開業したらしい」との噂は広まり、手に入れにくい糀を求める農家から注文が舞い込み始めた。
 販路をあれこれ考えるうち、現金収入の魅力も手伝って、「手造りみその講習会」を開催してみることにした。ボーイスカウトや料理教室などに所属する知り合いに声をかけ、1999年春に初開催を迎える。以後、毎年行うことになるが、顧客と直に接することで小泉氏はあることに気付き始めた。「どうも、新規顧客が多いようだ」。
 現在、講習会はみそ造りの繁忙期が終わった5月のみの開催だ。 毎週金・土・日曜日の午前と午後に1回ずつ行い、費用はひとり3,500円だ。だいたい3キロのみそができるので、購入するよりはかなり割安になる。1カ月で400人を集めたが、うち約半数が新規顧客だったという。「反響が薄いようだったら中止しようかとも考えていたが、これだけ新規顧客が集まるとなると、やめるわけにはいかない」と小泉氏は言う。
 主婦が圧倒的多数を占める講習会は、にぎやか、と言うよりもやかましいことこの上ない。作業はいたってシンプルだ。参加者が手にするのは、塩と糀が入った作業用の樽と、煮上がった大豆が入ったビニール袋だけ。まず、ビニール袋に入っている大豆を手でしっかりとつぶし、塩と糀が入った樽に移してさらに混ぜ合わせる。よくこねたら、テニスボールくらいの大きさに丸めて保存用の樽に入れていく。最後に樽にふたをして自宅に持ち帰り、熟成させたらあとは食べるだけ、というものだ。
 「これだけの作業でも結構、力が要る。泥遊び感覚なので童心に帰るし、人間って不思議なもので、体を使って力を入れると自然とおしゃべりになる」(小泉氏)
 食べ物を自分で造る感動と、実際に食べるときの感動。これが主婦のネットワークを伝い、口コミとなって新規顧客の獲得へつながっていったようだ。しかも、食材は食べてしまったらそれっきりなので、「もう一度食べたい」とリピーターになる顧客も多い。

小泉photo-2

手造りの楽しさに表情も生き生きとしている
写真提供:(資)小泉糀屋

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月刊『アイ・エム・プレス』2002年8月号の記事