コンタクトセンターの業務は営業そのものである。そんな信念を持って、コンタクトセンターの活用を進めてきたアールエスコンポーネンツ(株)では、フィールドセールスとテレセールスの担当顧客を明確に切り分け、それぞれが責任を持って営業活動を行っている。
知名度アップでTSをスタート
アールエスコンポーネンツ(株)は、英アールエスコンポーネンツ社(1937年創業)の100%出資により、1998年2月に設立、99年3月から営業を開始した工業用部品の通信販売会社である。電気関連部品、制御機器関連部品、電子関連部品、サービス用品/消耗品など、4万3,000点を扱う。主な顧客は、企業・大学・官公庁で研究開発や設備メンテナンスに従事するエンジニアだ。
商品の紹介はカタログ、CDカタログ、Webの3媒体を通して行われる。①4万3,000点に及ぶ製品を常時在庫、②1点から発注が可能、③午後6時までの受注分は即日、発送するクイックデリバリーを実現、など、顧客の利便性を追求したサービスが支持され、営業開始からわずか3年で「顧客の数は数万」(代表取締役社長・山口十一郎氏)、カタログ発行部数は8万~10万部に達した。
同社では膨大な数の顧客をカバーするため、フィールドセールス(FS)とコンタクトセンターを主軸とした営業体制を確立している。
全国に散らばるフィールドセールス(FS)は12名。内訳は、関東6名、中部2名、関西2名、中国/四国1名、九州1名で、ほかにEC担当が1名いる。2002年度末にはトータル16名に増強する予定だ。主業務は優良顧客のケアや新規顧客の開拓だが、特徴的なのは、各地に支店を持たず、FSを在宅勤務にしている点だろう。支店開設にかかるコストを抑えるだけでなく、勤務時間を顧客とのコミュニケーションにフル活用できるようにした。
さらに、今年4月からはテレセールス(TS)をスタートさせている。顧客の増加に伴い、FSだけではケアしきれなくなったことも理由のひとつだが、知名度が高まるにつれてアウトバウンドコールをかけやすくなってきたことも、TSに踏み切る大きなきっかけとなった。FS担当以外の顧客のケアや潜在顧客の開拓、そして休眠客の再開拓を担当する。
FSとTSの担当顧客の割り振りは、セールスマネジャが行う。過去のセールス内容の分析結果や、製品の種類、さらに、顧客の購買金額や今後のポテンシャルなど、まざまな面から顧客を分析し、最適な部署にアサインする。やはり、主力商品であるエレクトロニクス関連商品の取引は、FSが担当することが多いという。FSの担当顧客をTSが引き継いだり、その逆のケースもあるが、基本的に両者が同時にひとつの企業を担当することはない。
また、TSでは、新規顧客に対する「ナーサリープログラム」も重要な任務となる。これは、発注に不慣れな新規顧客を特別にアフターケアするプログラムで、発注が3回に達するまで行われる。より快適にサービスを利用してもらうと同時に、サービス内容に対する理解を深めることで顧客維持につなげている。
山口氏は、TSの任務は「営業活動そのもの」と言い切る。TSとFSは、互いに補完し合うのではなく、それぞれが独立した営業活動を行う対等の関係との認識だ。TSは今年4月に始まったばかりだが、手応えはかなり大きいようで、早くも今年度末までには現在4名のスタッフを、13名まで増やす計画という。
コンタクトセンターの役割
TS以外に、コンタクトセンターには①カスタマーサービス、 ②受注業務、③テクニカルサポートの3部門がある。①は一般的な問い合わせに対する応対を担当。現在5名の人員を、2002年度末までに10名に増やす予定で、兼務だったWeb対応についても、専属スタッフを2名投入した。②は、もともと①が兼務していた業務だが、より迅速な処理を目指して今年度から①と切り離している。 ③のスタッフは5名。本年度内に1名増員の予定だ。今後は自動音声応答装置(IVR)を導入し、さらなる効率化を図る方針という。
また、同社では、TS以外の分野も含めて、「コンタクトセンター=営業」と認識している。なぜなら、対応の良し悪しや呼損率、また、コールを適切な部署へ即座に振り分けられるかどうかが、顧客満足度、ひいては営業活動に大きく響いてくるからだ。
コンタクトセンターはインハウスの形を取っている。「企業に深くコミットメントしているスタッフでないと良い対応はできない」(山口氏)ため、エージェントをアウトソースする考えはない。会社設立時に営業担当者と同時に募集をかけ、営業開始2カ月前から商品知識などの教育が行われた。現在でも、半年に1度、カタログの内容更新に合わせて、製品選定を行う専門スタッフから研修を受ける。
ビジネスモデルが営業体制を決める
全FSを在宅勤務とする、また、TSを営業の先鋭部隊として活用するなどの営業戦略は、どこから生まれてきたのだろうか。
同社には英国での創業以来、欧州、米国、豪州、アジアと世界的なビジネス展開の過程で培われたノウハウがある。いずれの国でも営業担当者を在宅勤務で採用し、徹底した効率化と生産性の向上を実現してきた。また、国内ではまだまだ「コンタクトセンターはコストセンター」の意識が強いが、同社においては海外ですでに営業部門におけるプロフィットセンターとして成功、実績を積んでいる。日本でも当初からセールスとしての役割を期待していたが、知名度がないなどの点が障害となり、なかなかTSに踏み切ることができなかった。認知度の高まりがアウトバウンドコールをスタートさせるきっかけとなったのは、先に述べた通りである。
さらに、同社はビジネスモデルが非常に明確だ。それゆえ、営業を行う目的、意義がクリアになっている。目的が明快であれば、いかに効率的にそこへ到達するかの手法の選定基準もはっきりする。
図表1を見てほしい。工業用部品のライフサイクルは、研究開発から大量生産の段階を経て、メンテナンスの時代に入る。この中で同社がターゲットとしているのは、研究開発およびメンテナンスにおける需要だ。両者ともにスピード、広範囲の品揃え、そして小ロットの発注に対するニーズが高く、これが、サービスの特徴に見事に反映されている。今年4月からはWeb上のサービス「RSオンライン」をリニューアルし、顧客が自分で在庫確認をしたり、注文履歴を閲覧できるようにした。同サービスは顧客からの評価が高く、同社では今年度のWebにおける売上目標を、全受注額の約30%に設定している。
さらに、通信販売というビジネスモデルを、顧客に対する情報量(リッチネス/richness)と、どれだけ多くの顧客に接触できるか(リーチ/reach)の両面からとらえると図表2のようになる。通信販売はリーチは良いが、リッチネスが弱い。ここを補い顧客に提供できる情報量を引き上げるために、より効率的で効果的な営業活動が必要となるが、その一翼を担うのがコンタクトセンターなのである。
ビジネスモデルに裏打ちされた営業戦略のもとに、Face to Face、電話、Webの3チャネルを最大限に活かし、顧客満足度の向上とそれによってもたらされる売上増を狙う。