解約防止の両輪は料金体系とデータ分析

KDDI(株)

3社が合併して誕生したKDDI(株)では、合併以前から各社が行っていた「長期割引サービス」や「お約束割引」などを改訂し、「長く」「多く」「大勢」で使えば使うほど割安になる、魅力的な料金体系を生み出してきた。
また、契約と同時に自動的にサービスが始まるポイント制を導入。しかもそのポイントを機種変更時にのみ使用できるようにするなど、ユニークなサービスで解約防止に努め、顧客維持を狙う。

期間と通話料に応じた料金体系

 KDDI(株)が誕生したのは2000年10月。国際電話に強いKDDと、長距離電話・携帯電話に強いDDI、および日本移動通信の3社が合併、翌2001年4月に正式に社名をKDDIと改めた。現在、「Mobile&IP(Internet Protocol)」をコンセプトに、統一ブランド「au(エーユー)」で移動体通信事業を全国展開している。2002年3月現在、au累計加入者数は1,220万人を超えた。
 同社が携帯電話事業において展開する料金サービスには、大きく分けて2つの形がある。ひとつは、auに加入すると自動的に提供されるサービスで、もうひとつは、契約者が自由に選択できるオプショナルサービスだ。
 契約すると自動的に与えられる特典には、(1)「auポイントプログラム」と(2)「au長期優待割引」がある。(1)は、①毎月の利用額100円ごとに1ポイントが加算されるマンスリーポイント、②1年間の利用ごとに与えられるアニバーサリーポイント(1年で100ポイントを加算)、③キャンペーン時などに加えられるボーナスポイントの3つから構成される。1ポイントは2円に換算され、利用に際した有効期限はない。①の利用額には基本料金も含まれるため、通話時間がゼロでもポイントは自動的にたまっていく。
 ポイントは、機種変更時の値引きによってのみ還元される。携帯電話の機種変更は「だいたい1年半に1回の割合で行われる」(au営業本部au営業企画部企画グループリーダー次長・菅隆志氏)が、これに合わせてポイントを還元することで、顧客の流出を防ぐうまいサービスと言える。
 (2)は、基本使用料を自動的に割り引くシステムで、加入2年目は5%、3~4年目は7%、5年目以降は15%の割引となる。
 このほか、さまざまなオプション契約が用意されている。「年割」「家族割」「指定割」「ガク割」の4プランと、「かなり話す」「待受がメイン」「夜・休日に話す」など、使用頻度や利用時間帯に応じた6カテゴリーがあり、それぞれを組み合わせて利用することが可能だ。ただし、年割と、契約時に自動適用されるau長期優待割引を同時に利用することはできない。また、年割、ガク割を途中解約した場合には加入1年目、2年目のみ契約解除料が発生する。
 料金割引メニューは各通信事業体ともにそろえているが、au独自のメニューとして特に同社が力を入れているのが、家族割である。単に家族間の通話料を割り引くだけでなく、家族内で無料通話枠を融通できる柔軟な料金体系を取った。例えば、1人当たりの無料通話枠が月50分で、父親が30分しか使わず、息子が1時間10分使用した場合、父親の無料枠で息子の超過料金を相殺することができる。無料枠が一人ひとりに割り当てられる、というよりは、家族全体にトータルとしての無料枠が適用されると考えた方が分かりやすいかもしれない。
 「長く」「多く」「大人数で」使うほど割安になる料金体系だが、地域によってサービス内容にばらつきがある。現在、au事業は9支社1法人(沖縄のみ別法人)によって運営されている。全ユーザーに自動適用される「auポイントプログラム」を導入しているのは5支部にとどまり、 2000年11月にスタートしたガク割についても、関東・中部地域のみ同年12月からのスタートとなった。
 合併前の料金体系があるため、なかなか全国同一の料金体系へ持っていくのは難しいという。今後も統一に向けて調整が続くことになるだろう。

KDDI

4月に市場投入されたau初のデジタルカメラ内蔵型の携帯電話「A3012CA」

安さに頼らないサービスを模索 解約予兆者の識別に意欲

 魅力的な料金体系を提供する同社だが、「すべての顧客を料金だけで引き止めようとは考えていない。全顧客にauを使用するメリットを還元することは、収益的にもかなり厳しい。やはり収益を意識しながら、いかに良い顧客を取り込むかがカギとなる」(菅氏)。
 そのための対策として挙げられるのが、まず、ポイント制度の強化だ。年割のように通話をしてもしなくても料金が割引になるのではなく、使用料に応じてポイントが還元される手法を強化したい考えだ。しかし、ポイント制も一度導入すると収益にかなりの影響が出るので、慎重に進める必要があると言う。
 次に、優良顧客に対する能動的なアプローチが考えられる。例えば、現在は全顧客に一律に行っているアフターサービスを、優良顧客にはよりグレードアップして提供する、などの方法が考えられる。これまでのコールセンターにおける業務は、インバウンドでは料金や故障に関する問い合わせが多く、アウトバウンドでは主に支払い請求などを行ってきた。今後はアウトバウンド業務に、優良顧客向けの料金体系のコンサルタント的な提案を付け加えることを検討中だ。
 また、忘れてならないのは同社の代理店である「auショップ」の強化だろう。実際に顧客がコンタクトするのは、コールセンターよりもショップの方が多い。そういう意味では、ショップは代理店ではあるけれども、auの顔そのものでもある。最近は端末の機能が多様化し、ショップ店員に求められる知識の量は並大抵ではない。また、各店スタッフの知識レベルを平準化する必要もある。同社では、ショップの店長・店員を対象にした研修会を年間数百回開催し、知識レベル・サービスレベルの向上に努めている。また、優良店に対して何らかのインセンティブを付与する方向も探っている。
 さらに、顧客を維持するためには解約の防止が欠かせない。解約時のアンケート調査では、解約の理由に「携帯電話が必要でなくなったから」との回答も含まれているが、同社では、「契約を他社へ切り替えている例もあると見ている」(菅氏)。そこで、1年半ほど前から、データマイニングを用いて解約予兆者の予測を開始した。まずは解約予兆者を、アウトバウンド・コールとダイレクトメール(DM)を併用した防止策を講じるグループと、何ら手立てを打たないグループに分けて、解約率の追跡調査を実施。その結果、アウトバウンドコールやDMが解約防止に効力を発揮していることを確認できたという。今後はさらにマイニング精度を高め、より効率的で効果的な解約防止に努めたい考えだ。

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月刊『アイ・エム・プレス』2002年6月号の記事