新システム導入で顧客を適切にサポート

(株)ツーカーセルラー東京

コールセンターでリテンションを

  1994年4月の開業以来、関東甲信越地方1都8県を対象に、携帯電話事業を展開している(株)ツーカーセルラー東京。2002年3月現在の加入者数は168万名に上る。
 同社は従来の電話対応を主体とした「コールセンター機能」にホームページや携帯インターネット(EZweb)を活用した「カスタマーケア機能」を統合し、Webやeメールの対応もコールセンターの機能に加えている。
 同社のコールセンター設置には次のような背景がある。
① 取扱商品が「携帯電話(回線サービス)」であるため、加入後、顧客からのコンタクトニーズが高いこと。
②顧客の快適な携帯ライフをサポートする情報提供窓口とツールが必要であること。
 ①に関しては、加入時には必ずしも携帯電話のオペレーション(機能、操作、サービスなど)について十分な説明ができているとは言えないこと。加入後に、電話機の操作方法やネットワークサービス、料金について分からないことや、契約内容の変更など各種手続きが必要なケースが発生すること。新機種の発売、料金プランの追加・改定、基地局の増設などがあり、加入時の情報がすぐに陳腐化することなどが挙げられる。
 ②に関しては、電話機に同梱の取扱説明書や加入時のお礼状送付に加え、以下の情報提供窓口とツールを用意している。
・オペレータによる一般、料金、故障、各種変更手続きなどのお問合せ窓口
・自動音声応答によるインフォメーション、各種変更、料金照会、通話料案内などの24時間受付
・ホームページによるインフォメーション、販売、各種変更、料金照会、通話料案内、請求書配信サービスなどの24時間受付
・EZwebによるインフォメーション、各種変更、料金照会、通話料案内などの24時間受付
・FAXインフォメーションの24時間受付
・毎月の請求書に同封の情報誌を送付
 同社は、アウトバウンドに関しては、電話やショートメッセージを活用し、新規顧客の獲得を狙うより、顧客の立場に立った的確な対応とタイムリーな情報提供による既存顧客の維持を心掛けているという。

自動化と顧客満足は反比例?

 携帯電話という回線サービスゆえ、「メーカーや物販など他業種と比べ問い合わせ内容が多岐にわたるのが特徴で、これが電話会社のコールセンター運営を難しくするポイントである」と、カスタマーセンター一課長の佐藤氏は語る。問い合わせの内容では、料金やネットワークサービス、電話機の機能、操作、故障、契約変更に関するものが特に多いが、新しい料金プランやサービス、ショートメッセージやEZwebの新たなオプションも続々と登場する中、コールセンターは最新の情報に基づき顧客にリアルタイムな情報を提供しなくてはならない。 コールセンターに求められる作業は複雑になり、オペレータの増員が必要な場合などもすぐに効果をあらわすことは難しい。
 このような理由から同社では、開業当初より自動応答システム導入の必要性を感じ、IVRなどのシステムを随時導入してきた。その結果、IVRでの対応率は全体の70%強を占めるようになり(図表2)、同業他社と比べても、かなり高い自動化率を実現していた。しかし、このシステムは、用件の完了・不完了にかかわらず、IVRによる自動対応のみで終了してしまい、結果として不完了呼/迷い呼が増加するという難点を抱えていた。特に高齢者などは途中でコンタクトを諦めてしまうようなこともある。

0205-cs2図2

コールセンターとIVRの統合を実現

 このような反省点を踏まえて、同社は日本アスペクト・コミュニケーションズ社のIVRシステム「CSS」の採用を決定、2002年初頭までに、本格的なシステムの構築を完了した。
 同システムの仕組みは、IVR内で迷っている顧客からの呼をオペレータに接続し、適切なサポートを行うというもの。もちろん、誰彼構わずつなぐという訳ではなく、システム内に一定のルールを設定し、そのルールに基づいたオペレータ接続を行うのだ。例えば、最初にパスワードを入力する時に、パスワード・エラーが2回以上起きた場合には、「顧客がパスワードを忘れた(あるいは知らない)」と判断するというルールを設定する。すると自動応答はそこで中断され、通話がオペレータに転送される、といった具合だ。これにより前述のような不完了呼/迷い呼の増加を防ぐことができる。
 また、同システムは、顧客情報に応じたクロスセリングにおいても威力を発揮している。

顧客へのリアルタイムな情報提供

 「コールセンターではリアルタイムな情報提供の徹底が必要」(佐藤氏)。セルフ化することでリアルタイム性が損なわれることがあっては意味がなく、コールセンターから最新情報を提供できなくなる。このため、コールセンターのセルフ化の際に重点を置いたのは、容易に情報を更新できるかどうかであった。この点「CSS」は音声録音やフロー変更が容易であることなど、GUIベースでのメンテナンス性に優れていた。
 現状では、顧客からのコールのうちセルフでの対応が約7割、オペレータによる対応が約3割となっている。セルフで受け付ける問い合せの25%は、当月の通話料案内といった状況にある。
 同社のセルフ・サービスには、IVR以外に、EZwewbや同社ホームページを介したものがあり、セルフの間口を広げている。
 現在、同社のコールセンターにおいては、電話やeメールといったチャネルごとにオペレータ・グループを分けている。1回のアクセスで用件を終わらせるというのがその理由だが、アスペクトのチャネル・ミックスのソフトウェアである「Aspect Enterprise Contact Server」を利用すれば、機能的には同一グループでのマルチチャンネル対応もできる。そこで将来的に実施するキャンペーンの内容や、顧客からの要望に応じては、これを導入することも可能である。先ほどのセルフによる通話料金案内も顧客からの要望が多かったために実現したもの。同社では、今後とも、顧客の声を積極的に受け止めることで顧客満足度の向上に努めていきたい考えだ。

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当月通話料などが確認できる「eステーション」トップ画面


月刊『アイ・エム・プレス』2002年5月号の記事