何が売れるかより、何が必要かを優先

(株)am/pmジャパン

企業理念は「E志向」

 第1号店のオープンが1989年と、大手コンビニの中では最も後発の(株)am/pmジャパン(以下am/pm)。  
 コンビニには珍しく石油業界(共同石油:現ジャパンエナジー)の出身であり、今回取材した中ではかなり異色な存在だ。石油会社が母体ということで、創業時から地球環境に対する問題意識をもっており、Ecology、Earth、Effortの頭文字である“E”を冠した「E志向」を企業理念としている。
 そうした中、同社の特長のひとつが、「とれたて弁当」をはじめとする保存料不使用のオリジナル商品だ。1994年に「とれたて弁当」が開発され、販売が開始されたが、この時までこのような食品を1,000店規模で扱う店はほかにはなかったという。小売業は「きれいに見えるものを売ること」が基本と言われ、そのために防腐剤が使用されることもあるが、am/pmでは、保存料が入っていない、安全で自分たちが納得して食べることができる商品を売っていきたい、という想いがまず根底にあるのだ。また、独自のフローズン技術により、食べる直前まで無菌状態にしておくことで、防腐剤を使用せずに、しかも食品を極力無駄にしなくて済むという、まさに「E志向」が実践されている。
 同社のもうひとつの特長は都心部中心の出店。都心6区(千代田・中央・港・品川・新宿・渋谷)にあるコンビニの45%はam/pm。他社が進出していないエリアを狙った結果だという。有利にビジネスが展開できるところをうまく探し出し、伸ばしていくことは、今後の事業展開において、大きなポイントのひとつだろう。

本当に必要とされていなければやらない

 同社のデリバリーサービス「デリス便」は、1996年7月に試験的に1店鋪で開始され、同年の9月に本格化したものであるが、このサービスを開始したそもそものきっかけも、郊外に同社のオリジナル商品を届ける、という発想であったという。OL時代に都内でam/pmの「とれたて弁当」を利用していて、現在は結婚して郊外に住んでいる主婦などから「郊外にもam/pmができないのか」といった問い合わせが多数あり、こういった声に応えるかたちで開始されたわけだ。
 「デリス便メニューカタログ」というカタログを月1回発行しており、実績客へのDM送付、新聞の折り込み広告、ポスティング、店頭での配付を行っている。配達エリアは東京23区で7割以上、首都圏でも半分以上のエリアをカバーしている。利用料は1回200円。配送は基本的に各店鋪が担っているが、都心部を中心に配送機能の集約化が進められている。デリス便の会員数は約50万人、うち月に2回以上利用するリピーターが20万人程度。客単価は2,000円強と同社の店頭での平均単価500円に比べ高めだが、配送の手間がかかるため、現状採算がとれている店は50%だという。単品の日用品を含んだ即時性のあるこうした宅配サービスは、現在、ほかには見あたらないということだ。
 現在、関東360店鋪で実施されているが、テリトリーの調整をしながら、さらに拡大する予定。受発注をデジタル化することでコストを軽減し、効率のアップを図る実験も300世帯を対象に実施した。これは、郵政省(現 総務省郵政事業庁)から支援事業の認定を受けており、将来的には23区全域に広げられる見通しだ。

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電気自動車のデリス便(写真左)/デリスタウン1号店(東戸塚店)全景(写真右)

親会社の経営資源を活かしたビジネス展開

 前述のとおり、同社は石油業界の出身。かつてS.S.の敷地内にCVSを設置する動きが活発化したことがあるが、大半の企業は失敗をよぎなくされた。失敗の要因は単にS.S.にコンビニを併設しようとした売り手本意の発想にある。こうした教訓を踏まえて同社は、1999年にガソリンのセルフ給油が認められたことにともない、郊外を中心とした「デリスタウン」事業にも乗り出した。
 これは、従来のam/pmの店鋪に、レストラン、くすりコーナー、デリス便、セルフ給油式の燃料油コーナー、ATM、地域情報スペースを加えた、広域対応型の複合店鋪だ。過去の失敗事例に学び、ドライブインの要素をもち、レストランやコンビニの駐車場で給油もできるというシステム作りに努めている。1コインでガソリンを好きな量だけ入れられるという自動販売機システムは、生活者のニーズに合致していたようで、売り上げはかなり伸びた。石油業界出身のam/pmならではの業態と言えるだろう。今後、この分野でのますますの活躍が期待される。

Eコマースに対する姿勢

 am/pmの店内には店頭端末が設置されているが、これは他社とは異なるアナログ方式のもの。コールセンターに直接通じていて、そこからそれぞれのチケットや旅行・宿泊サービスなどの窓口にアクセスができる仕組みになっている。現状ではオペレーターと直接話をするアナログ方式の方が便利で、生活者にとってもストレスが少ないというのが同社の考え。今後もマルチメディア端末設置の予定はない。ブロード・バンドの普及が2〜3年後には見込まれる中で、生活者が端末操作のためにわざわざコンビニまで出向くとは思えないというわけだ。なお、チケットには、am/pm以外では手に入らないオリジナルのものもある。
 同様に同社では、同業他社に見られるようなEコマースへの参加も考えていない。これはコンビニの特色はリアルなチャネルで生活者の身近にいることがまず第一であるという考えに基づくものだ。またネットで優位性を発揮するのは、ほかにないコンテンツをもっているところ。競合他社との品揃えが差別化に乏しいコンビニにおいては、参入の意味がまだ見えないという。
 一方で、通販会社やEコマースへの支援事業については、前向きな取り組みを示しており、すでに一部の企業の収納代行に着手。将来的には商品の引き渡しも開始する意向である。
 金融関係では、さくら銀行と提携した金融サービスを開始し、ATMや個人ローンの端末を導入している。また、ソニーとさくら銀行との提携により、非接触ICカードの実験を都心3店舗で実施中。
 コンビニが提供する商品・サービスは、今後ますます多様化していくだろう。しかし同社では、いかなる分野においても、単に「売れるから」という発想よりも「何が必要なのか」を優先すると同時に、自分たちのポリシーと持ち味に基づき、顧客にとっての価値を明確に打ち出していく考えだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2001年4月号の記事