店頭端末「Loppi」の改善
全国47都道府県におよそ7,600店舗を展開するナショナル・チェーン、(株)ローソン(以下、ローソン)。
同社では1997年から、マルチメディア端末「Loppi」の全国導入を進め、98年から本格的な稼動をはじめている。「Loppi」で取り扱う商品は、「通常では手に入りにくいもの」や「限定販売の品」。(株)日本交通公社(以下、JTB)との提携による旅行・航空券をはじめ、書籍、CD/DVD、ゲームソフトの書き換え、各種申込サービス等がその主なところである。中でも「お気楽トンボ」というJTBの当日宿泊プランは高い人気を博している。これはJTBの支店店頭では手に入らない「Loppi」だけのオリジナル商品であり、後述の「@LAWSON」のコンテンツ同様、ローソンのこだわりである「ここでしか手に入らないものの提供」を具現化しているひとつの例である。導入当初からの、関連企業であるローソンチケットが取り扱う興業チケットの新たな流通システムを構築するという狙いもあって、現状、「Loppi」取扱高の6〜7割はチケットが占めている。
従来のサービスに加え、今年1月末からは住友クレジットサービス(株)の、2月5日からはアコム(株)、(株)武富士の随時返済サービスを開始しており、24時間いつでも返済が可能とあって、着実に実績を上げている。「Loppi」は店頭端末としては他社と比べて導入時期が早かっただけに、現在、反応のスピードなどの課題も浮上している。しかし、年内には機能を改善したサーバーを導入することにより、処理速度のアップはもちろん、音楽配信やプリントといった新サービスの提供を実現する。また同時に、店頭でのサービスも拡大し、 後述するiモードや次期java搭載機種に対応した、携帯電話を使用してのサービスなどが追加される予定。
@LAWSONのGIRL’S@Lのコーナー(http://www.at-lawson.com/)
より汎用性をもたせたシステムの構築
「Loppi」の機能をEコマースに活用した、ローソンのホームページ内にあるコーナーのひとつ、インターネット・ショッピングサイト「@LAWSON」も昨年の12月24日にリニューアルした。今年度よりチケットサービス、旅行・宿泊サービス等を本格化する。ローソンは、「百貨店型」ではなく、GIRL’S@Lやtanomi.com(企画段階の商品案を提示し、注文数が一定数をこえると生産・販売する限定受注生産システム)に象徴されるように、コンビニの顧客の大きなパ−センテージを占める若者に的を絞ったコンテツで他社との差別化を図っているのが特徴。「何でもある」というよりは、「ここでしか手に入らない」ものを提供していこうという考えだ。
また2000年9月にスタートした、同社の「e-context」は、全国のローソンの店舗ネットワークを利用した、電子商取引の「代金決済」と「店舗への商品配送・店舗での受け渡し」を実現するためのオープン・プラットフォームであり、「@LAWSON」の代金決済・商品受け渡しの仕組みを支えてもいる。「@LAWSON」の場合、決済には店頭払い、クレジットカードによるインターネット上での支払い、宅配の際の代引といった方法があるが、店頭払いの場合がほとんど。商品の引き渡し方法には、店頭渡しと宅配があるが、店頭渡しが70%を占めている。やはり店頭の方が顧客にとって安心感があるのだろうと同社は見ている。
「e-context」はオープン・プラットフォームであるため、電子商取引業者は「@LAWSON」のショッピングモールに出店しなくても、自社サイトの「決済」、「商品引き渡し」手段としてこれを有料で利用できる。現在の利用企業は通販会社、Eコマース企業など約40社。今後もさらに提携企業を増やしていく計画である。同社では「e-context」の拠点を、同業他社やS.S.などへも広げていく予定で、将来的には、より汎用性のあるシステムになることが期待される。
しかし、ローソンでは、これらのEコマースサービスの位置付けを、あくまでも既存の(リアルな)店舗の他社との差別化や集客のための手段としている。
@LAWSONのtanomi.comのコーナー (http://www.tanomi.com/lawson/)
新しいサービスの提供
ローソンでは、自社の特徴的なサービスとして、「Loppi」を介した公共サービスを充実させていきたい考え。現在は千葉県市川市、世田谷区、岡山県の岡山市で各自治体の情報が「Loppi」で入手できる。また、97年から市川市で開始した住民票を店頭でお渡しするサービスは、地元自治体の協力で実現したものであるが、ローソンの各自治体への呼び掛けにより、東京都の北区でも2001年度にスタートする。全国47都道府県に店舗を持つローソンだけに、地域住民に大きな利便性を提供できると期待される。
2000年には、松下電器産業(株)、(株)NTTドコモ、三菱商事(株)との提携により(株)アイコンビニエンスが設立された。これは現行のiモードや次期java搭載機種と、「Loppi」とPOSで情報装備したローソンの全国の店舗網を連携、携帯電話でEコマースを利用できるようにするものである。旅行、CD、チケット等のエンターテインメント系サービスの販売、物販、ギフトサービス、各種情報のプリントサービス、音楽配信等の新しいサービスに加え、今後、iモードに“電子財布”機能が搭載されることを視野に入れ、クーポン利用、ポイント利用、プリペイドといったサービスも検討中。この春から順次スタートする予定だ。
ローソン・ネットステーションのLoppiニュースのコーナー(http://www.lawson.co.jp/loppi/loppi_top.html)
「Loppi」
「コンビニ」ならではの価値の見直し
コンビニ各社の既存店の売り上げは、概ね前年の100%前後、「コンビニの飽和」が叫ばれている中、新しい試みとして、「介護」という切り口で、病院の中にローソンの店舗を設置する計画を、三菱商事の関連会社とともに進めている。
同社は出店の余地はまだまだあるという認識をもっており、決して将来を悲観してはいない。規制緩和により、医薬品など取り扱う商品・サービスの幅も広がり、これにともない新たな顧客層の取り込みも可能になるだろうと見る。今年の秋口にはATMの設置も予定されている。
平日半額のハンバーガーや、290円の牛丼の出現、スーパーの営業の長時間化などといった異業種の動きは、ローソンでもやはり意識しているという。「コンビニ」という業態ならではの価値、特有の利便性を再び考え直す時期にきていると見ており、前述のようなサービスの提供を中心に新たな展開を模索している。