新たなアイデアを生み出す素地となる統一された基本コンセプト

マイクロソフト(株)

全世界にユーザーを抱えるPCのディファクト・スタンダード

 マイクロソフト(株)は“指先から情報”を目標にソフトウェア開発を続けてきた、世界を代表するコンピュータ・ソフトウェア企業である。1980年のBASICやMS‐DOSの登場からはじまった同社製品の成長は、90年代に急速な進歩を遂げ、現在ではパーソナル・コンピューティングのディファクト・スタンダードとして、全世界にユーザーを抱えている。
 マイクロソフトの最大のイメージ・キャラクターは、やはり同社の会長兼最高ソフトウェア開発責任者ビル・ゲイツ氏である。ゲイツ氏は世界を代表する経営者であり、パソコンやIT、ビジネスに興味のない人でも名前だけは知っている有名人である。そしてもうひとつ、ゲイツ氏とともに同社を象徴する商品が「Windows」である。パソコンのオペレーティング・システムとして、世界で圧倒的なシェアを誇る「Windows」は、パソコンのある家庭や職場、学校で日常的に使われているソフトウェアであり、「Windows」新バージョンの発売は世界的なニュースとなる。「ビル・ゲイツ」と「Windows」は、同社のマーケティング戦略にとっても重要な要素であり、これまでも企業イメージとして宣伝広告などに活用されてきた。

宣伝企画グループがイベントPRを統括

 IMC(統合型マーケティング・コミュニケーション)とは、組織を統合することで、情報を共有化し、ブランディングに反映させるマーケティング戦略をいう。同社は、ひとりひとりのアイデアを尊重し、自由な発想の中から最先端ソフトウェアを開発することで成功をおさめた企業であり、企業全体を統合した組織的なマーケティングは展開していない。しかし、部門ごとバラバラにマーケティング戦略を立案しているわけではないのだ。
 同社では、コーポレートマーケティング本部が宣伝グループ、広報グループ、イベントグループを統合。これまで、別々に仕事をしてきた各グループを連携させることで、顧客に対してより効果的なコミュニケーションを図っている。
 たとえば、「Windows」の新バージョンの発売を控えていれば、コーポレートマーケティング本部内で宣伝手段としてTVCMがいいのか、イベントがいいのかを検討し、顧客との最適なコミュニケーション手段を提案している。その決定にしたがって、宣伝、広報、イベントの各グループが具体的なコミュニケーション活動を実施し、宣伝効果を上げているのだ。
 手段だけではなくターゲットによってコミュニケーションの内容を変え、統一したコンセプトに則ってコンシューマ向け、ビジネスユーザー向けなど各カテゴリーに合わせた提案を行っているという。

ソフトウェア企業から多角経営へ

 現在、同社の事業は単なるパソコンのソフトウェアという範疇を超えている。ソフトウェアを提供しているパートナー企業やエンドユーザーへのコンサルティングやサポートサービス、ビジネスユーザー向けの企業情報システム、ポータルサイト「MSN」、さらに家庭用ゲーム機「X-box」(開発中)など事業は多角化している。その背景には、これまで企業イメージとして築き上げてきた「ビル・ゲイツ」、「Windows」以外の顔を作り、多角化を進めたいという意向もある。
 「マイクロソフトの顔として核となるのは、あくまで『Windows』です。しかし、それだけでは通用しない時期がくるかもしれません。事業の多角化を進めているのは、ある意味では、マイクロソフトの別のイメージを確立するためです」とコーポレートマーケティング本部宣伝グループ部長の岡安則和氏は言う。

ビジネスの明日をテーマにマイクロソフトのメッセージを村上龍氏がコメント

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時や場所、機器を選ばない優れたソフトウェア

 ゲイツ氏がかつて提唱した「すべての家庭にパソコンを」という創業当初の企業コンセプトはすでに現実のものとなった。現在は、新たな企業コンセプトとして「時や場所、機器を選ばない優れたソフトウェア」を掲げ、人々が時間を気にせず、どこからでも「Windows」をはじめとするソフトウェアを利用できるようにすることを目標としている。そして同社も世界的な企業に成長し、「ビル・ゲイツ」あるいは「Windows」というイメージをさらに世界に定着させていくという。
 「この業界は競争が激しく、その競争に勝つために、これまで我々は新製品開発に終始してきました。しかし今後は次々に新製品を投入するだけではなく、息の長いブランドを提供していきたいと思います。そのためのキャンペーンやPR活動を展開していきます」と岡安氏は語る。

思考の速さをアピールしたマイクロソフト「Visio2000」

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月刊『アイ・エム・プレス』2000年10月号の記事