個人情報を利用した円滑な対応で会員数も急伸

全日本空輸(株)

ビジネス・ユースの会員が中心

 全日本空輸(株)の「ANAマイレージクラブ」は97年4月に、国際線向けの旧「プログラムA」会員と、国内線向けの「ANAカード」会員を合わせた合計65万人でスタートした。その後、会員数の伸長は順調で、本年3月末には500万人を見込んでいる。
 メディア戦略においても、昨年は俳優の織田雄二を会員獲得のキャンペーン・キャラクターに起用。月ベースで7万〜8万人で推移していた新規入会者数は、現在でも月ベースで10万人単位で増加している。
 ANAマイレージクラブは全日空・エアーニッポン、および提携航空会社便の搭乗などでマイルが貯まり、貯めたマイル数に応じて、全日空の国内線無料航空券、国際線無料航空券、提携航空会社無料航空券などの特典と交換ができるシステム。入会は空港内などに配置、あるいは雑誌広告などに添付している申込用紙、もしくはインターネットからも申し込める。また、クレジット機能を有するANAカードは入会金と初年度の年会費は無料。VISA、MASTER、JCB、ダイナースと提携している(年会費は2年度から1,750円、ワイドカード8,000円、ワイドゴールドカード、およびダイナースカード1万5,000円が必要)。
 会員構成は6対4で男性が中心であり、年代別では30〜50代のビジネスマンが多いのが特徴。最近は、20代に関しては女性会員も急増しているが、これは99年1月より包括旅行運賃が積算対象となったことにともない、ツアー利用者もマイルが貯まるようになったことや、飛行機を利用しなくてもマイルを貯めることができる提携先(たとえばレストランやインターネットのプロバイダーなど)を拡大した結果だと言える。

柔軟なオペレータ配置を実現

 “AMC(ANAマイレージクラブ)サービスセンター”は97年4月、当時、海外航空会社では既に導入されていたF.F.P.(Frequent Flyers Program)の本格的導入をきっかけに開設。全日空の国際線「プログラムA」のF.F.P.プログラムと、国内線ANAカード会員向けの「スカイレコード・サービス・キャンペーン」プログラムの2つのスキームを統一し、装いも新たにAMCを立ち上げ、AMCサービスセンターを開設した。
 センターの総勢は現在160名を数えており、電話オペレータと会員のデータ処理などのバックオフィス業務を担当している。時間や季節によってお客様からのコール数が変わるため、スタッフは状況に応じて臨機応変に配置している。
 コール数は、1日当たり約8,000件(平均)で、このうちオペレータによる受信数は2,000〜3,000件、オペレータ1人当たりでは50件強になる。平均通話時間は約3分で、コール内容のほとんどは、AMCのプログラム案内やマイルポイントの積算情報である。
 会員がフリーダイヤルに電話をかけて会員番号を入力、オペレータを選択するとセンターに電話が接続され、これと同時にオペレータの画面にその会員データがポップ・アップされる仕組みだ。なお、オペレータにはお客様からの電話が、何件待ちかが分かるようにしている。
 また、コールの約30%はIVR(音声自動応答装置、97年4月導入)によって対応される。IVRでは24時間体制でメッセージを流しており、顧客がデータベースから必要な情報をインタラクティブに取り出すことができる。
 昨年末には、マイルの有効期限切れによりコール数が増大したため、電話の回線数を増やし、よりスムーズな対応ができるように改善している。このほか同クラブでは、1月、4月、7月、10月の四半期ごとに会員のマイル実績報告書を送付しているため、この時期に問い合わせが殺到する傾向がある。そこでこの時期にはオペレータを増員することで、これに対応している。
 オペレータによる受付時間は平日の午前9:30〜午後5:00までで、それ以外の時間と土日・祝日はIVRによる音声対応となる。原則的にシステムの更新時以外は、フリーダイヤル62回線により、年中無休体制で問い合わせに対応。また、地方からの問い合わせに対しても、大阪、札幌、福岡にゲートウェーを設置し、そこを経由したお客様からの問い合わせが、東京のAMCサービスセンターに入るシステムを採用している。現在、コールセンターの電話番号は、会員にのみ開放されているが、新規加入希望者からの問い合わせにも、別番号で答えている。
 コールセンター・システムとしては、CTIパッケージで実績のある日本ルーセント・テクノロジー社のソリューションを使い、デジタル交換機の「DEFINITY」とIVRを使ったシステムを採り入れている。(「DEFINITY」は高度ACD〈自動着信呼分配装置〉機能、コールベクター機能、マルチログイン機能を装備したデジタルPBX〈構内電話交換機〉)。

AMCサービスセンター

AMCサービスセンター

インターネットやEメールのさらなる活用の検討

 「ANAマイレージクラブ」は、従来、搭乗者向けのサービスという印象が強かったが、最近は加盟店がホテルやレストランにまで拡大しているため、極端な例を挙げれば、飛行機に一度も乗らずに特典を受けるというケースもある。カードを使って買い物や食事をすればポイントが貯まるので、クレジットカードを利用してマイルを貯めている会員も多く、一般生活者にも広く認知されつつある。同社においても、同クラブは飛行機に搭乗してもらうための販促策としての位置付けは基より、マイルの販売という観点から、本業とは別の付帯事業としても期待されている。
 今後の課題は、CTIシステムの能力を最大限に発揮させることだが、それにはオペレータのレベルアップが重要なポイントになる。応答時間の短縮、呼棄個数削減問題の早期解決を図るために日本ルーセント・テクノロジー社のCMS(コール・マネンジメント・システム)という管理支援ソフトを活用。各種パフォーマンスレポートに基づき、オペレータのスキルアップのための的確な指導を行うなど、インバウンド業務に対する教育や社内フォロー体制を採っている。
 また、運営面で苦労しているのは、IVRによる応答に関して、お客様からオペレータと直接話したいという要望が多いことだ。ひとりでも多くのお客様のコールを受けるため、IVRを採用したが、音声による指示に不馴れな日本人には、抵抗感をもつ人もいる。音声応答を理解してプッシュボタンを押すのが面倒だという声もあるが、何万人という会員からのアクセスを24時間体制で受け付けるとなると、100%オペレータによる対応に切りかえるのは困難であることから、現状ではIVRの利用は不可欠となっている。
 このような状況から、4月からはインターネットを利用したサービス拡大を予定しており、現在取得しているEメールアドレスなどを有効活用しつつ、コミニュケーション手段の拡大を目指していく。また今後は、F.F.P.時代が本格化するなかで、CTIの有効活用に加え、さまざまなコミニュケーション手段を利用し、スタッフ配置の見直しやセンター業務の効率化を積み重ねて、よりステップアップしたサービス展開を推進していく意向だ。

「ANAマイレージクラフ」サービスセンターのCTIシステム


月刊『アイ・エム・プレス』2000年4月号の記事