1995年に自社サイト開設
1963年に(株)西友ストアーとして創立されたGMS(総合スーパー)、(株)西友は1999年11月23日現在、22都道府県に192店舗を構える。1999年度の営業収益は9,526億3,300万円。最近は環境マネジメント・システムの国際規格「ISO14001」の認証を取得するなど環境活動にも積極的に取り組んでいる。
同社のインターネットへの取り組みは1995年の自社サイト開設に始まる。当初は、日本におけるインターネット利用が個人と企業の両レベルで急拡大する中で、自社のドメイン名を先行取得するのが狙いだった。そして1999年11月23日、ネット通販のサイト「e-西友楽市オンラインショップ」を開設。日本の仮想商店街サイトの最大手「楽天市場」に出店することで集客力の確保を図った。開設した背景には、総合スーパー(GMS)のシェアが品ぞろえや価格、商品知識で差別化を図る専門店に侵食される中、B to C(企業—消費者間取引)分野での成長が見込まれるECの動向を把握したいとの思惑がある。
取扱商品は常時450〜500アイテム。生鮮を含む食料品、ギフト向け商品、PB(プライベート・ブランド)の衣料品や生活雑貨などを中心に、今後の需要を見越した介護用品なども扱う。店舗では扱わない健康器具などの商品の限定販売や「バイヤーのおすすめ商品」の紹介も検討中。商品構成は顧客の要望に合わせて変えるようにしている。商品の差し替えは、大規模なものは2週間に1回、単品についてはその都度行い、サイトのページの細かい更新は毎日行っている。
商品は注文後1週間前後で届く。送料は、原則として一品450円。店舗で送料が無料の商品はネットでも無料で配送している。在庫管理、および受注や発送、代金回収などは同社のグループ内企業、二光(株)が請け負い、電話受け付けは現在は1名で対応。支払いはクレジットカード、代金引換、商品配達後の振込み(郵便局、銀行、コンビニ払い)の3種類から選べる。
集客については、パソコンやギフトの売場に「ようこそ、e-西友楽市オンラインショップへ!」と書かれた名刺大のカードを置いたり、チラシにロゴを入れることで認知度の向上をめざす一方、ネット上では検索エンジンへの登録、バナー広告、Eメールなどを利用している。また、同社のデータベースに登録された顧客に対しては、ページ更新やプレゼント企画の案内、季節折々のメッセージをEメールで送信するなど、リピーターのつなぎとめも忘れていない。
顧客データは、出店先の楽天市場のサーバで管理し、分析は同社で行っている。登録顧客数は2000年1月現在約3,000人。今後は顧客の購買歴を、年齢・性・居住地・職業・家族構成などの属性別に分析することで、より細かい顧客対応をめざしている。
仮想商店街「楽天市場」に設けられた西友の「e-西友楽市オンラインショップ」(URL:http://www.rakuten.co.jp/seiyu/)
実在店舗が与える“安心感”
最近、各社が相次いでネット販売に乗り出す中、同一商品・サービスを扱う既存店舗は戦々恐々としている。だが同社は「リアル店舗はヴァーチャル店舗に比べ顧客に安心感を与える。リアル店舗をもっていることはむしろ強み」(同社E/Fプロジェクトの渡部弘之氏)ととらえ、既存店舗との相乗効果を狙っている。
ネットは店舗よりも商品の比較に適したメディアであり、情報伝達の迅速性からマーチャンダイジングの強化にも有効だと言われるが、同社は「ネット販売が単独事業ベースに乗るには時間を要する」(渡部氏)と判断、まずは商品のオリジナリティや配送などサービスの差別化で競合他社への優位性を築くことを優先課題とする。
また同社は、ネット上での売れ行きを見ることで、店舗販売での商品力を測るため、店舗で扱う前の商品をネットで先行販売している。たとえばネット販売での売り上げが第3位となった某ミネラルウォーターは、その後、既存店舗でも売れ行きは好調だという。また、GMSでは原則として同一商品を全店舗で扱わなければならないため、一定数をそろえられない商品は販売対象になりにくいが、こうした商品を拾い上げる狙いもある。
価格については、GMSでは価格変動が激しく価格の信頼性が損なわれる傾向があるため、ネット上では段階的な値引きは行わず、たとえばカシミアのセ—ターでは最初の値引き価格を維持した。
顧客は、予想外に女性や法人が多い。地域ではやはり関東が多いが、これは顧客のパソコン所有率に相関しているとみられる。また、北海道、広島なども比較的多く、長野では内陸のためか海産品を求める人が多いという。鹿児島など同社店舗のない地域からのアクセスも多い。
課題はメール返信態勢
サイトのページ閲覧総数は1日2,500〜5,000、月間約8万を数える。出店先の楽天市場の検索エンジンからのアクセスが多いという。
人気商品は昨年末現在、飲料水、クリスマスケーキ、米、セーターが上位を占め、セット物では、商品の組み合わせを選べるギフト「こころむすび」がトップ。開設が年末だったため、クリスマス・歳暮のギフト向け商品、「2000年問題」対策商品がよく売れたようだ。
開設後1ヵ月間の売り上げは500万円弱。年間1億円をめざすという。経費率は手数料を含み10数%。店舗販売に比べて、ある程度のコスト削減効果は上げている。
Eメールで寄せられる顧客からの意見・問い合わせには、土日を除き、受信当日のうちに返信するよう心がけている。ただ、顧客ごとになされる返信には時間がかかるため、今後、増大するEメールへの返信態勢の整備が緊急の課題だ。
同社は今後の課題として①配達の迅速化、② ブランディングによるアイデンティティの確立、③コンテンツの充実、④ギフト向け商品の拡充—を挙げる。また、社会の高齢化にともない需要の伸びが見込まれる介護・医療用品や生活必需品についても検討を進めている。
コンビニ業界では異業種間の提携などによって、店頭端末によるネット販売を積極的に展開しているが、店頭で商品を直接に吟味できないという制約は無店舗販売のネックとして残る。同社としては、リアル店舗を持ち総合的な生活支援ができるGMSの強みを基盤に、ネット販売での独自性を発揮していく意向だ。