利用頻度の高い顧客をポイントカードで維持

ファーストキッチン(株)

価格ではなく、商品とサービスで差別化を図る

 ファーストキッチン(株)は首都圏と関西地区でファーストフード・チェーン店を展開する、サントリー(株)100%出資のグループ会社である。1977年9月に設立され、1999年7月末現在の店舗数は104店。1998年12月期の売上高は119億円。ポイントカード「CLUB-FK」を発行し、会員の組織化を推進している。
 “ファーストフードの新しい価値を創造する”“都市生活者のニーズに対応する”を企業理念に、同社は価格ではなく、創業当初から人気NO.1のベーコンエッグバーガーなど、食材にこだわった新商品を次々と登場させることで、数あるファーストフードの中で独自性を打ち出している。実際、同社では毎月、少なくとも2?3品の新商品を投入し、人気のない商品をどんどん新製品に差し替えている。最近ではフレーバー・ポテトが人気で、ポテトの売り上げが、全売り上げの4分の1を占めるほどにまで伸びている。3年ほど前には、注文カウンターで顧客の注文を聞いてからコーヒー豆を挽き、香りの良いコーヒーを素早く提供できる機械を導入し、コーヒーの売り上げを伸ばした実績もある。また、ファーストフード店としてははじめてコーヒー回数券を発行。ここ2?3年で急速な売り上げの伸びを見せている。フレーバー・ソースバーを設置し、顧客が自由にソースを選んで、好きなだけかけられるようにしてあるのも同社のサービスの特徴のひとつだ。
 店内は木目調の内装にしたり、本物の絵を飾るなど、都会のオアシスをイメージ。また、多くの女性が外で仕事をする時代に合わせて、化粧室のパウダー・ルームを広くとるなど、店作りにも常に新しい工夫を凝らしてきた。
 中心顧客層は20代のOLやサラリーマン。ほかのファーストフード・ショップより、やや年齢が高めである。
 同社が会員組織を発足させたのは1992年。ファーストフード業界の中でもいち早く取り組みを開始した。当時、ファーストフードの販促キャンペーンの主流は、路上でクーポン券を配布し、普段は店に足を運ばない顧客の来店を促すというものだった。しかし、同社は、めったに店に来ない顧客ではなく、いつも来店してくれる顧客にこそより良いサービスを提供したいと考え、会員制度をスタートさせたのである。
 当初の会員組織の名称は「FKメンバーズ」。入会者にはプラスチック製のメンバーズカードを発行し、購入の際にカードを提示すれば、どの商品でも10%の割り引きが受けられる特典と、年3回、DMによる新製品の無料お試し券を配布するという特典を付けた。入会金、会費は無料。1995年頃から徐々に会員が増加傾向を示しはじめたという。

「CLUB-FK」の申込書。短い募集期間にだけ店頭に置かれてる(左) 1998年から導入したリライダブルカード(右)

「CLUB-FK」の申込書。短い募集期間にだけ店頭に置かれている(左)
1998年から導入したリライタブルカード(右)

ポイントとの交換品は店頭商品、オリジナル・グッズと生活グッズの中から選ぶことができる

ポイントとの交換品は店頭商品、オリジナル・グッズと生活グッズの中から選ぶことができる

 さらに同社では、この制度では会員の来店回数にかかわらず一律10%の割り引きであったことから、利用顧客の中でも特に利用頻度の高い顧客により一層のサービスを提供するために、「FKメンバーズ」を改善した。1997年12月からテストを実施し、1998年1月5日から、従来の特典に加えて、新たにポイント機能が付いた“使えば使うほとお得”感のあるカードの導入に踏み切ったのである。同時に名称も「CLUB-FK」に変更。従来のカードからの継続客はそのまま無料で移行したが、この時点から新規申し込みについては、カード発行代金と、データ更新手数料として、入会金100円を徴収することにした。また、フリーダイヤルによる会員専用の電話窓口を開設し、祝日を除いた月曜から金曜日の午前10時から午後5時まで問い合わせを受け付ける体制を整えた。会員データの入力や更新、管理、電話応対は、すべて同系列の(株)サントリーショッピングクラブにアウトソーシングしている。
 「CLUB-FK」の会員カードは、使用ごとにカードの表面に獲得ポイントが表示されるリライタブルカード。購入金額100円ごとに1ポイントが加算され、合計ポイントに見合った商品と交換できる。
 当初の交換品は、同社のポテト、デザート、ハンバーガーといった店頭商品と特別に作成したオリジナル・グッズとしたが、1年実施した結果、オリジナル・グッズとの交換率が低かったため、1999年からは中心顧客層のニーズに合わせて、生活グッズを景品に加えた。景品ではクッキング・チョッパー、ハンディー・クリーナー、体脂肪計など、買うほどではないがあると便利な実用品の人気が高い。同社では、今後、人気のあるものは据え置きつつ、景品の種類を定期的に換えていく予定。もっとも、現在でも交換率が高いのは、やはり店頭商品である。
 現在、「CLUB-FK」の会員数は約12万人。女性の比率が高く、1999年3月末時点では約77%が女性であった。平均来店数は月1.6回となっている。

会員には新製品の無料お試し券や年賀状などのハガキによるDMを送付。無料お試し券のレスポンス率は高い

会員には新製品の無料お試し券や年賀状などのハガキによるDMを送付。無料お試し券のレスポンス率は高い

利用頻度の高い顧客を組織化

 会員維持のコストも踏まえて、だだ入会しているだけでその後の利用のない非稼働会員を増やさないために、同社ではいくつかの方法を採り入れている。そのひとつが会員募集期間の限定である。会員募集は、毎年、年始と春休み、6月初旬の時期にそれぞれ約2週間ずつ各店舗の店頭で実施。それ以外の期間にはいっさい行わず、また告知もしない。しょっちゅう同店を訪れる顧客でなければ会員募集の申し込み用紙を目にすることもないというわけだ。ただし、新規店舗オープン時にはイレギュラーにその店でのみ会員を募集する。誰もが入れるわけではないという特別感を演出して、入会意欲をかきたてている。
 カードの有効期限は最終利用日より6カ月間と設定。使わなければ期限が切れ、非稼働会員を落としていく仕組みとなっている。
 同社では1年に1度、更新の案内を会員に送付し、継続の場合には、その旨を記入して各店舗のカウンターに提出してもらうという方法で、会員データのメンテナンスを実施。会員の継続率は約50%である。継続しない会員のデータはすべて削除することで、あくまでもアクティブな会員の濃度を高めている。
 会員組織の構築開始から7年。同社ではようやくその効果が見えはじめたと言う。現在、売り上げに占める会員の比率は9.5%。約10%近くが会員による売り上げに支えられているわけだ。同業他社が軒並み売り上げを落とす中、同社が売り上げ目標を達成し続けていられるのは、会員のおかげ。ポイントカードを導入した効果だと同社では評価している。
 中でも同社が効果を実感しているのが、会員に向けて年2?3回発送している、新商品のお試し券。このお試し券の回収率は非常に高く、今年の春に登場した“チーズキムチポテト”などは50%を超える回収率を上げた。新製品のお試し時には、会員は必ず来店し、ほかの商品をいっしょに注文、あるいは友人をともなって来店するため、回収期間には確実に売り上げが伸びる。現在、夏のキャンペーンとして、新商品のお試し無料券の案内とともに、親会社のサントリーの協賛を得て、ペプシコーラとタイアップしたグッズのプレゼント・キャンペーンを展開している。開始したばかりだが、おそらくこれも50%以上の回収率となるものと、同社ではすでに確かな手応えを感じている。
 ポイントカードの効果を評価している一方、同社ではポイントカード自体が外食産業に浸透しつつある中、すでに他店との徹底的な差別化の手段ではなくなっていると見ている。そのため、現在、ポイントカードに変わる手法を模索している最中だ。加えて、1999年10月にはホームページを開設予定であり、今後は、会員組織の活性化にホームページを活用していきたいとの意向を示している。


月刊『アイ・エム・プレス』1999年8月号の記事